5.4 粒界破壊(Intergranular fracture)

5.4 粒界破壊(Intergranular fracture)

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1. 延性破面

粒界での延性破壊は、粒界に沿って微小空洞が形成され、さらにこれらが合体して破壊に至ります。
図5.4.1に、一例を示します。結晶粒界の破面上およびへき開面上にディンプルが観察されます。このような破面は、き裂進展速度が比較的速い場合にみられます。疲労き裂進展領域の面積が小さく、静的な負荷応力により衝撃的に破壊した部分の破面に現れることが多いです。

図5.4.1 粒界破壊における延性破面

2. 脆性破面

粒界破壊で、最も頻繁に観察される破面です。き裂進展速度が最も速い破壊破面になります。図5.4.2に脆性破面の一例を示します。粒界に沿って分離しており、海岸に置かれた消波ブロックをランダムに積み重ねたように見えます。線で切断したような面を呈しており、各々の粒子面は平坦で無特徴な模様を示すことが多いです。キャンディを積み重ねたような面に見えますので、ロックキャンディパターン(rock cancy pattern)とよばれることがあります。

図5.4.2 粒界脆性破面

水素脆性による遅れ破壊破面や、黄銅やステンレス鋼に生じる応力腐食割れ、クリープ破壊破面、焼き戻し脆性破面、焼割れ破面、研磨割れ、浸炭焼入れ層内の疲労破面などに観察されます。幾つかの事例を見ていきましょう。

(1)焼き戻し脆性

室温前後で起こる粒界脆性破壊は何らかの金属学的異常を含むと考えられます。図5.4.3は、いろいろな温度で焼き戻しした構造用低合金鋼を、室温で衝撃試験により破壊した試験片の破面を示します。焼き戻し温度が200℃の場合は延性的な破面を示します。破壊エネルギーも大きいです。一方焼戻し温度が350℃と400℃の場合は、焼き戻し脆性による粒界破壊になります。

図5.4.3 焼き戻し温度を変えた試験片による衝撃試験結果

焼き戻し脆性による破面は、破面が粗く、粒内破壊であるへき開破面と比較して、金属的ではありません。焼き戻し脆性による破面のSEMによるミクロ的な観察破面の例を、図5.4.4に示します。破面は粒界割れが観察されます。一方図5.4.5に示す焼き戻し温度が比較的低い場合に破面を示しますが、粒界破壊と延性破壊の特徴であるディンプルパターンが混在しています。

図5.4.4 粒界脆性破面

図5.4.5 粒界破壊と延性破壊の混在破面

(2)水素脆性による遅れ破壊

水素脆性による遅れ破壊は、かつては橋梁などに使用された高力ボルトに使用される高強度鋼でしばしば観察されました。高強度鋼は、炭化物が粒界に多量に析出することにより、粒界強度が高められますが、これらの粒界炭化物が水素のトラップサイトとして働くために、水素脆化による、粒界割れが発生しやすくなると考えられています。水素脆性による遅れ破壊の破面の一例を示します(図5.4.6)。

図5.4.6 水素脆性による遅れ破壊破面(SCM440(H)ボルトめっき前の酸洗いによる水素トラップと推定)

3. 疲労破面

粒界破壊における疲労破面の特徴は、疲労によるき裂が粒界に沿った破面を示し、粒内破壊と同様に破面上に、ストライエーションあるいはストライエーションに類似した模様が観察されます。その一例を図5.4.7に示します。

図5.4.7 粒界破壊における疲労破面

 

 

参考文献
100事例でわかる 機械部品の疲労破壊・破断面の見方  藤木榮 日刊工業新聞社
フラクトグラフィとその応用   小寺沢良一   日刊工業新聞社
金属破断面写真集    小寺沢良一編    テクノアイ出版部
機械部材の破損解析   長岡金吾   工学図書

 

引用図表
[図5.4.1] 粒界破壊における延性破面        機械部品の疲労破壊・破断面の見方
[図5.4.2] 脆性破面      フラクトグラフィとその応用
[図5.4.3] 焼き戻し温度を変えた試験片による衝撃試験結果     機械部材の破損解析
[図5.4.4] 粒界脆性破面     機械部材の破損解析
[図5.4.5] 粒界破壊と延性破壊の混在破面     機械部材の破損解析
[図5.4.6] 水素脆性による遅れ破壊破面      金属破断面写真集pp775
[図5.4.7] 粒界破壊における疲労破面      金属破断面写真集 pp10

 

ORG:2017/7/9