残留応力が金属材料に及ぼす影響

残留応力が金属材料に及ぼす影響( Effect of residual stress on metallic materials )

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1. 残留応力とは

金属材料に外力を付加すると、それに対抗して材料内部に内力が発生します。材料の弾性変形の範囲ですと、外力を取り除くと元に戻りますが、弾性変形を超える外力が負荷された場合は、内力が残ります。これを残留応力といいます。
例として、薄い鋼板を手で曲げる場合を考えます。曲げる力が弱く、曲げても鋼板が元に戻る場合は、弾性変形内ですので、残留応力は発生しません。負荷を除去しても変形が残る場合は、残留応力が発生します。

 

 

2. 残留応力の事例

圧縮残留応力の発生事例として、高周波焼入れなどの表面熱処理が挙げられます。高周波焼入れではワーク表面が急激に加熱されることによりマルテンサイト変態に伴う体積膨張による変態応力と熱変形による熱応力とが発生し、表面を広げようとする力が発生します。この状態から急冷すると、マルテンサイト変態して硬化し、膨張したた表面が、加熱急冷の影響を受けていない心部とが引き合います。その結果、心部には引張残留応力が発生するのに対して、表面は心部の引張残留応力に相応した圧縮残留応力が発生します(図1)。

図1 圧縮残留応力の事例:高周波焼入れ

 

引張残留応力の発生事例としては、溶接があります。溶接の溶融部は冷却過程で収縮します。その結果溶接境界部では収縮に対抗して引張応力が残留します(図2)。この残留引張応力は変形の原因となりますので除去することが望ましいです。重要な溶接構造物では、応力やひずみの除去のため焼なまし(応力除去焼なまし)を行います。

図2 引張残留応力の事例:溶接

 

 

3. 残留応力の影響

金属表面に、微小なき裂が存在する場合を考えます(図3)。
表面に引張応力が残留している場合は、繰返し応力が負荷されるとき裂を進展する引張側の応力に付加されて、き裂の拡大が促進されて、部材の破損が早期に起こりやすくなります。
一方、表面に圧縮応力が残留している場合は、繰返し応力が負荷されてもき裂を進展させる引張側の応力と相殺されて、き裂の進展が抑制されることにより、破損に至らないか、あるいは破損に至るまでの寿命が延びます。

このように、残留、応力は金属材料の寿命と密接に関係します。特に、繰返し負荷によりき裂が徐々に進展する金属疲労ではその影響が顕著です。

図3 き裂がある部材に対する残留応力の影響

 

 

4. 残留応力の積極的活用事例

上項で述べたように、鋼製品表面に圧縮残留応力を発生させることは金属疲労への対策として有効です。
積極的に表面に残留圧縮応力を発生させる方法として、ばねの表面処理としてショットピーニングが適用されます。ショットピーニングの少しだけ詳しい解説を、本サイトに別項目で記述しています。参考にしていただければと考えます。

 

当サイト内リンク先: ショットピーニング

 

 

 

参考資料
あいち産業科学技術総合センターニュース No.127 2014年 10月号
「残留応力の重要性について」
常滑窯業技術センター 開発技術室 片岡康弘氏

 

引用図表
図1 圧縮残留応力の事例:高周波焼入れ   参考:あいち産業科学技術総合センターニュース
図2 引張残留応力の事例:溶接   参考:あいち産業科学技術総合センターニュース
図3 き裂がある部材に対する残留応力の影響   参考:あいち産業科学技術総合センターニュース

 

ORG: 2020/05/31