2.2.5 隙間流れ
2.2.5 隙間流れ(Flow of narrow gap)
スポンサーリンク
油圧機器は、狭い隙間を介して複数の部品が滑動する部位が多くあります。例えば、ギアポンプのギアとサイドカバとの間や、スプール弁のスプールとボアの間、ピストンポンプのピストンとシリンダブロックボアとの間などがあります。隙間は非常に狭いので、流れはほとんどの場合層流になります。
隙間を通過して流れる流量は、ポンプやモータの体積効率に対して非常に大きな影響を及ぼします。また、弁のスプールの動きや、ピストンポンプのピストンの摺動による流体摩擦も隙間流れの状態で決まります。
本項では油圧機器でよく使われている、平行平板間の流れと環状隙間の2例について見ていきましょう。
1.平行平板間の流れ
図2.2.5.1に、2枚の平行な平板の挟まれた狭い隙間間の粘性流れ(層流状態)における、力の釣合いを示します。
図2.2.5.1 平板間流れにおける力の釣合い
図2.2.5.1 に示す微少部分に働く力の釣合いを考えます。
整理すると
となります。
また、油圧に使用する流体はニュートン流体と考えてよいので、次式が成立します。
(式2.2.5.3)を(式2.2.5.2)に代入して、平板の隙間方向について積分すると、次式が得られます。ここでは方向には変化しないと考えられるので、は に置き換えることが出来ます。
()から、を求めて、(式2.2.5.4)に代入すると、次式のようにまとめられます。
この式で表される流れはクエット(Quette)流れと呼ばれます。
(式2.2.5.5)の第2項は圧力勾配の影響を表します。クエット流れを図2.5.5.2 に示します。
図2.5.5.2 クエット流れ
次に、二面間隙間の単位幅を流れる流量は、(式2.2.5.5.)を方向に積分すれば求まります。
圧力勾配は、(式2.2.5.6)を変形すると求まります。
実際の油圧機器に適用しやすいように有限幅b で有限長 の平板で考えると、
と表されます。
2.環状隙間
2.1 同心の場合
図2.2.5.3 に同心環状隙間流れの状態図を示します。
図2.2.5.3 同軸円環隙間の流れ
実際の油圧機器で見られる同軸円環の流れは、になるので、円筒部を展開して図2.2.5.1のような相対運動する平板と同様の仮定が成立します。
従って、力の釣合いの式(式2.2.5.4)が成立します。
()から、を求めて、(式2.2.5.4)に代入すると、次式のようにまとめられます。
従って同軸円環隙間を通過する流量Qは、次式のようになります。
また、この間の圧力勾配dp/dxは、次式のようになります。
一般に、油圧機器で適用されるスプール弁とボアとの円環環状流れでは、過渡的な作動時を除くと、スプールの動きはないので、(式2.2.5.10)で第2項は省略でき、
が得られます。
ここで、は環状隙間の入口/出口での差圧、は出入口間の距離を表します。
2.2 偏心の場合
スプール弁外径と、ボアとがだけ偏心している場合を考えます(図2.2.5.4)。ほとんどのスプール弁では作動油出入り口の位置、重力などの影響により、何らかの偏心があると考える必要があります。
図2.2.5.4 偏心がある場合
偏心がある場合の、ととの関係は、(式2.2.5.12)に基づき、次式のように示されます。
3.計算例
3.1平行平板間の流れ
を用いて計算します。
とすると、
3.2 環状隙間の流れ
同心環状隙間の場合と偏心環状隙間の場合とのそれぞれについて計算します。また、隙間を構成する部品に速度差はないものとします。
同心環状隙間
偏心環状隙間
を用いて計算します。
とすると、
参考文献
油圧制御 竹中利夫・浦田映三 丸善
疑問に答える機械の油圧(上) ダイキン工業油機技術グループ 技術評論社
引用図表
図2.2.5.1 平板間流れにおける力の釣合い 油圧制御改
図2.5.5.2 クエット流れ 油圧制御
図2.2.5.3 同軸円環隙間の流れ ORG
図2.2.5.4 偏心がある場合 疑問に答える機械の油圧(上)
ORG:2019/8/16