3.2.1 油温と動粘度
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3.2.1 油温と動粘度(temperature and kinematic viscosity)
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どのような液体でも同じですが、作動油も温度が変化すると動粘度も変化します。作動油の欠点の一つとして、温度変化に対して)粘度の変化が著しいことが挙げられます。すなわち、動粘度は温度が上昇するにつれて、著しく降下します。
1.油温と動粘度との関係
一般的に、流体の温度による粘度(粘性係数)の変化は一般に次式で表されます。
ここで
\( T \):絶対温度\( ( K ) \)
\( \lambda \):流体によって定まる定数
\( \mu _{ 0 } \):温度\( T_{ 0 } \)での粘度
石油系の作動油に対しては、動粘度と温度の関係は次式のWalther equationで表されます。
ここで
\( \nu \):動粘度\( (mm^2/s) \)
\( T \):絶対温度\( ( K ) \)
\( A,B \):流体についての定数
によって表わすことができます。
この式に、2点の温度における動粘度を代入して、AおよびBの値を求めると、この式により任意の温度の動粘度を計算することができます。
ただし、温度-動粘度特性で動粘度が2重対数目盛で直線関係になるのは、おおよそ流動点より10℃以上高いポイントからが一般的で、低流動点のものでは+20℃以上で成立します。
鉱物油の場合、通常は40℃と100℃の時の動粘度が測定されるのでそれらの値より、A,Bが求められ、任意の温度における動粘度が求められます。
[例題]
ISO粘度グレードVG46、粘度指数109の鉱物油系作動油の場合、動粘度は40℃の時が46mm2/s、100℃の時が7.0mm2/sですので、A,Bを求めると
A=9.22853
B=-3.60883
となります。
例えば、60℃の時は20.9mm2/sになります。
図3.2.1.1 鉱物油系作動油温度-動粘度線図
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2.粘度指数(viscosity index: VI)
作動油は1項で述べたように、温度変化により粘度変化が著しいです。この粘度の変化の割合を数値で示すのに、粘度指数(viscosity index: VI) が用いられます。
粘度指数の値が大きいほど,温度による動粘度の変化が小さいことを意味しています。VIは経験的なものに基づいて発祥しました。粘度-温度特性の優れたペンシルヴァニア原油の基油をVI=100,粘度-温度特性の劣るガルフコースト原油の基油をVI=0と決め,測定された油がこれら2種類の間のどの位置にくるかを一定の数字で表わすものとしてこの指数が創案されました。
ここで、
\( VI \):粘度指数
\( L \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数0の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( H \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数100の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( U \):試料の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
を示します。
しかし、この式はポリイソブチレンなどの粘度指数向上剤が添加された作動油では、粘度指数が100をはるかに超えるものがあり、この式の代わりに別の計算式を用いる様になっています。
詳細はJIS K2283-2000に示されていますが、粘度指数の計算方法としては、式3.2.1.3を用いるA法(粘度指数が100以下の石油製品に適用)と、B法( 粘度指数が100を超える石油製品に適用 )とがあります。簡単に説明してみます。
計算の際のに使用する、L,Hの値については、100℃における動粘度が2~70mm2/sの場合は表で、100℃における動粘度が70mm2/sを超える場合は計算式で求めます。
それでは、説明を進めていきましょう。
A法:粘度指数が100以下の石油製品に適用
(1)粘度指数を算出するのに必要な数値(L,H)の求め方
a. 試料温度が100℃における動粘度が2~70mm2/sの場合は、JIS K2283の付表1により、L,Hを求めます。表に示されていない動粘度については補間法により求めます。
b. 試料温度が100℃のおける動粘度が70mm2/sを超える場合は、次式を用いてL,Hを求めます。
ここで、
\( L \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数0の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( H \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数100の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( Y \):試料の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
を示します。
(2)粘度指数の計算方法
粘度指数の計算式を再掲します。
ここで、
\( VI \):粘度指数
\( L \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数0の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( H \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数100の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( U \):試料の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
を示します。
JIS K2283に記載されている計算例を少しモディファイしたものを示します。
[例題]
試料の40℃の時の動粘度が46mm2/s、100℃の時が6.7mm2/sの場合の粘度指数を計算します。
JIS K2283の付表1から、100℃における動粘度6.7mm2/sに対応するLおよびHの値を求めると、
L=71.29、H=45.33 になりますので、40℃における動粘度46mm2/sを、式3.2.1.3に代入すると、97.419になりますが、四捨五入して整数にしますので、
VI=97
となります。
B法:粘度指数が100を超える石油製品に適用
(1)粘度指数を算出するのに必要な数値Hの求め方
a. 試料温度が100℃における動粘度が2~70mm2/sの場合は、JIS K2283の付表1により、Hを求めます。表に示されていない動粘度については補間法により求めます。
b. 試料温度が100℃のおける動粘度が70mm2/sを超える場合は、次式を用いてHを求めます。
ここで、
\( H \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数100の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( Y \):試料の100℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
を示します。
(2)粘度指数の計算方法
計算方法は次式によります。
ここで、
\( VI \):粘度指数
\( N \):YをHとUとの比に一致させるために必要なべき数
\( U \):試料の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( H \):100℃において試料と同一動粘度をもつ粘度指数100の石油製品の40℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
\( Y \):試料の100℃における動粘度\( ( mm^2/s ) \)
を示します。
JIS K2283に記載されている計算例を示します。
[例題]
試料の40℃の時の動粘度が823.6mm2/s、100℃の時が71.05mm2/sの場合の粘度指数を計算します。
100℃における動粘度71.05mm2/sを用いて、式3.2.1.6からHを求めると、H=1595 になります。
式3.2.1.7から、Nを求めると、
この値を式3.2.1.8に代入して、
粘度指数は、整数値で表しますので、160になります。
[参考]
[表3.2.1.2] 動粘度に対するL,Hの値
参考文献
油圧教本 増補改訂版 日刊工業新聞社
実用油圧ポケットブック 2008年版 日本フールドパワー工業会
引用図表
[表3.2.1.1] 鉱物油系作動油温度-動粘度線図 日本石油(現JXTG)作動油解説パンフレット
[表3.2.1.2] 動粘度に対するL,Hの値 JIS K2283-2000 付表1より抜粋
ORG: 2018/1/27