4.4.2 圧力制御弁

4.4.2 圧力制御弁(pressure control valve)

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Contents

1.圧力制御弁とは

油圧回路で使用される圧力制御弁は、油圧回路の様々な部分で要求される圧力レベルを維持する働きがあります。

圧力制御弁は、以下のいずれかの方法で要求される圧力を維持します。

(1)高圧流体を低圧領域に迂回させることにより、高圧領域の圧力を制限させる。
(2)他の領域への流れを制限する。

流体を迂回する弁には、安全弁や、リリーフ弁、カウンターバランス弁、シーケンス弁、アンロード弁があります。ほかの領域への流れを制限する弁には減圧弁があります。

圧力制御弁は、ノーマルクローズとノーマルオープンとの2方弁(two-way valves)と定義することも出来ます

リリーフ弁や、シーケンス弁、アンロード弁、カウンターバランス弁は、ノーマルクローズの2方弁で、機能を実行している間のみ部分開もしくは全開になります。減圧弁は二次領域への作動油の流れを部分的に制限したり、全面的に閉止するノーマルオープンの弁です。

どちらの形式でも運転中は、必要な圧力の制御を供給するために、弁は自動的にオリフィス作用を行います。外部パイロット弁の場合、オリフィスが常に形成されるとは限りません。この形式の例としてアンロード弁があります。これは自動ではなく、外部の圧力源からの信号に依存します。

リリーフ弁及び、減圧弁、カウンターバランス弁、シーケンス弁は、弁内部から信号を得られるので操作は完全に自動化できます。

 

2.圧力制御弁の種別

圧力制御弁は一般的に次の8種類があります。

(1)安全弁(safety valve)

安全弁は、油圧回路内に設置され、配管や機器を過大圧力から保護します。流体圧力が設定開放圧力に近づくと、流体を二次側領域に排出する弁です。通常、ポペット形の2ポート弁が用いられますが、直動形リリーフ弁は安全弁として使用できます。通常の油圧回路では回路の上限圧力をリリーフ弁で制限します。そのため、油圧回路で安全弁と明示される制御要素はあまり出てこないように思います。

(2)リリーフ弁(relief  valve)

油圧回路内の圧力が、弁の設定値に到達すると、弁が開き作動油の一部もしくは全量を戻り側に逃がして、回路圧力を一定にしたり、最高圧力を制限して油圧装置を保護する役割があります。

リリーフ弁は、構造上直動形とパイロット作動形の大別できます。

(3)カウンターバランス弁(counterbalance valve)

カウンターバランス弁は、一方向の流れに対しては設定された排圧を与え、逆方向の流れに対しては自由流れになる弁です。縦型シリンダが自重で降下したり、制御速度以上の速さで降下したりするのを防げます。

(4)シーケンス弁(sequence valve)

シーケンス弁は、複数の分岐回路がある場合に、回路圧力によりそれぞれのアクチュエータ(シリンダ、モータなど)に作動順序を与える自動制御弁です。

(5)アンロード弁(unloading valve)

アンロード弁は、回路内の圧力が定められた値に到達すると、ポンプの全流量を直接タンクに戻して、ポンプを無負荷にして動力を節約することが可能な自動制御弁です。

(6)減圧弁(pressure reducing valve)

減圧弁は、流量や一次側圧力とは無関係に、二次側圧力を設定値まで減圧できる圧力制御弁です。

(7)油圧ヒューズ(hydraulic fuse)

油圧ヒューズはあらかじめ設定された圧力で破裂するディスク(ラプチャーディスク)が組み込まれた装置。破裂することにより回路の最高圧力を限定します。過大な圧力上昇に対して機器を保護する他の圧力制御弁のどれよりも急激な圧力変化に対する答性に優れ、信頼性が高いため、使用頻度が少ない場合に有効です。

また、応答性は若干犠牲になりますが、メンテナンス性を考慮して、チェック弁機構を用いた油圧ヒューズもあります。

(8)圧力スイッチ(pressure switch)

圧力スイッチは、流体圧力を電気信号に変換して、ON/OFF動作を行う切換スイッチです。ポンプの起動・停止や弁の開閉を流体圧力により行う場合に用いられます。

 

3.主要な圧力制御弁

3.1 安全弁(safety valve)

最も安価な安全弁の例として、スプリング直動形ポペット弁を示します(図4.4.2.1)。

この種の弁は、一次側圧力が弁体の受圧面積部に作用して、ある圧力になるとスプリング荷重を超えるので弁体が移動して、高圧油が二次側に流出して回路圧が上昇するのを防ぎます。

図(a)は、設定値をねじにより調整できる構造です。図(b)は最も簡便な形式で設定値の調整はできませんが目的は達せられます。

スプリング直動形は、作動遅れが少ないのでサージ圧を防止する目的に適していますが、流れの全量を通過させると全圧力の25%程度圧力損失が生じるので、その分だけ回路圧力が上昇します。

スプリングを用いるため、大型のものや高圧(max.7MPa程度)のものの製作は難しいです。また、重錘式もありますが取付位置の制約や大型になりやすいことからあまり用いられません。 というより、一般に用いられる油圧回路では、リリーフ弁で目的を達成しています。

図4.4.2.1(a) スプリング直動形安全弁(調整可能)

図4.4.2.1(b) スプリング直動形安全弁(調整不可)

 

3.2 リリーフ弁(relief valve)

リリーフ弁は、油圧回路内の圧力を一定に保持するために使用されます。回路内の圧力が、リリーフ弁の設定値に到達すると、回路内の作動油の一部もしくは全量を、戻り側に逃がします。また、油圧回路内の圧力が過大にならないようにするために作動油を二次側に逃がす安全弁としても使用されます。

構造的には、ばねによる弁体の押付け量以上に、油圧による押上げ力が増大したときに主弁が開く直動形リリーフ弁と、設定値以上の圧力上昇により、まずパイロット部のポペット弁が開き、このとき発生するパイロット流量が、オリフィスを通過するときに生じるバランスピストン前後の圧力差により主弁を開くパイロット作動形(バランスピストン形ともよばれる)リリーフ弁とがあります。

直動形リリーフ弁は、異常高圧発生時に油圧回路破壊されるのを防止するための安全弁として多く用いられます。パイロット作動形リリーフ弁は油圧回路の圧力調整のために多く用いられています。

 

(1)直動形リリーフ弁

直動形リリーフ弁は、部品点数が少ないですが、受圧面積が大きいためばね荷重が大きくなるので、弁体はパイロット作動形より大きくなります。

パイロット作動形と比較すると、静特性(オーバライド特性)は劣りますが、応答性は優れています。

図4.4.2.2 直動形リリーフ弁の例

 

(2)パイロット作動形リリーフ弁

図4.4.2.3 にパイロット作動形リリーフ弁(バランスピストン形)の例を示します。主スプール弁が入った本体とパイロット弁による設定圧調整装置とから成り立っています。

Pポートから入った高圧油が、パイロット弁の設定圧力に到達すると、高圧油の一部が

オリフィス→主弁のスプリング室→パイロット弁→タンクポートの順に弁内の流れを生じます。それまでバランスしていた主スプールの上下面に、オリフィスによる圧力降下分だけ圧力差が生じ、主弁が開き主流は圧力側よりタンク側へ流出し始めてリリーフ作用が行われます。

一般に、パイロット作動形リリーフ弁は、圧力制御部と容量制御部とが分かれており、容量は主弁の大きさを変えるだけで、圧力制御部にはほとんど無関係にサイズを決めることができます。

また、圧力制御部は主弁のばねとは無関係に、小さなポペット弁をシートに押付けるのに必要なばね力だけでよいので、高圧域までの調整が容易です。

従って、容量が同じであれば、直動形リリーフ弁と比較して小型化が可能で、かつ高圧域の調整についてもハンドル操作が容易です。

図4.4.2.3 パイロット作動形リリーフ弁

図4.4.2.4 パイロット作動形リリーフ弁のリモート調整弁

 

以下の項では、直動形リリーフ弁とパイロット作動形リリーフ弁の比較を行いましょう。

 

(3)リリーフ弁のオーバライド特性

オーバライド特性とは、リリーフ流量の変化に対する設定圧力の変化の度合を表します。

図4.4.2.5 はリリーフ弁の開き始め(クラッキング)から、弁が全開になるまでのリリーフ流量に対する圧力の変化を、同じ容量の直動形リリーフ弁とパイロット作動形リリーフ弁について示しています。本図からわかるように、設定圧力に極力近い圧力までリリーフ弁からの前漏れが小さいほど、オーバライド特性が優れています。

点線で示す回路圧力のとき、パイロット作動形ではパイロット弁からのクラッキング流量だけしか漏れていないのに対して、直動形では半分近い流量がリリーフ弁から漏れ出していることを示しています。それだけ、利用可能な流量が少なく効率が悪いことになります。

リリーフ弁からの漏れ量は、すべて損失流量になります。この損失分は熱エネルギーに変換されて、油温上昇の原因になりますので、その意味からもオーバライド特性は重要です。

オーバライド特性は、全量圧力とクラッキング圧力、もしくはレシート圧力(弁の閉終時の圧力)との差、あるいは比で表されます。パイロット作動形の場合は主弁のクラッキング(もしくはレシート)圧力との差(あるいは比)で表されます。

一般に、直動形リリーフ弁の場合は50~60%であるのに対して、パイロット作動形リリーフ弁では90~95%とほぼ2倍近い差があります。従ってリリーフ弁としての使用はパイロット作動方の方が多く使用されます。

図4.4.2.5 リリーフ弁のオーバライド特性

 

(4)リリーフ弁の応答性

応答性とは、回路圧力が設定圧量に到達してから、弁が作動するまでの時間的遅れ、すなわち、圧力の立ち上がりから設定圧力に安定するまでの時間をいいます。

応答性は、弁の構造、使用条件に影響されますが、一般的には直動形リリーフ弁の方が短い特性があります。直動形リリーフ弁の応答性はパイロット作動形リリーフ弁がおおよそ0.1~0.2sec なのに対して、それよりおおよそ0.05~0.08sec早くなるといわれています。

直動形リリーフ弁が安全弁としてよく用いられる理由は、構造が簡単なだけではなく、応答性が良いという特性があるためです。

 

(5)パイロット作動形リリーフ弁のベントポート利用

パイロット作動形リリーフ弁はベントポートが設けられています。使用しない場合はプラグで閉止しますが、ベントポートに配管して油圧回路の制御に用いることができます。以下代表的な制御について簡単に解説します。

 

1)遠隔制御

図4.4.2.6 のように、ベントポートにリモートコントロール弁を接続すれば、メインリリーフ弁の圧力調整をリモートコントロール弁により行うことができます。

例えば、リリーフ弁の設定圧力を頻繁に変更する必要があったり、しかもメインリリーフ弁の設置個所の問題により、圧力調整を遠隔操作で行いたい場合に、非常に便利です。

管理人の私的な経験ですが、油圧ポンプの開発用のテストリグで、まさにこれに示す条件でこの回路を使用していたのを思い出します。

この場合、メインリリーフ弁のパイロット弁の役割をリモートコントロール弁が行いますので、メインリリーフ弁のパイロット弁の設定はリモートコントロール弁の最高調整圧力以上に設定しておく必要があります。

図4.4.2.6 ベントポートの利用:遠隔制御

 

2)ベントアンロード作動

必要な時以外は、油圧ポンプを無負荷運転させて動力の節減と油温上昇を防止するために用いられます。通常、図4.4.2.7に示す回路が用いられます。

ベント回路の電磁操作弁BをON/OFF操作することによりベントの開閉を行います。

図の状態は、電磁操作弁Bが開放されておりベントラインはタンクに抜けているため、メインリリーフ弁は全開したアンロードの状態にあります。従ってポンプは無負荷運転しています。

いま、電磁操作弁Bを励磁して、ベントラインをブロックすると、メインリリーフ弁は設定圧力でのリリーフ作動(ポンプオンロード)状態になります。

ただし、ベントアンロード作動は、アンロード状態からの復帰に時間的な遅れを生じます。これはベント回路を含む配管系の影響を受けるためです。これを改善するために、主弁の押付けばねを強くして復帰時間を早くしたハイベントタイプが一般的に使用されます。ちなみに標準タイプをローベントといいます。

図4.4.2.8 はベントタイプの違いによる動特性の差を示します。ハイベントタイプはローベントタイプと比較して、おおよそ1/2程度復帰時間が早くなりますが、アンロード時の圧力損失、すなわちベント抵抗がばねが強い分だけローベントタイプより高くなります。

図4.4.2.7 ベントポートの利用:ベントアンロード作動

図4.4.2.8 ベント切換え時の過渡特性

現在ではインバータ駆動により同じような効果が得られます。

 

3)多圧制御

図4.4.2.9 に回路を示します。

ベント回路の切換弁操作により、中立位置では(2)の設定圧力に、(a)の位置では(1)の設定圧力に、(b)の位置では(2)のリリーフ弁がアンロード作動することになります。

図4.4.2.9 ベントポートの利用:多圧制御

 

3.3 カウンターバランス弁(counterbalance valve)

シーケンス弁やアンロード弁、カウンターバランス弁は同一の構造を取り、上蓋、本体、下蓋の組合せ方により4つの形式に分類されます。分類の仕方は、パイロットとドレンとがそれぞれ内部ソース,外部ソースから圧力源を得る4つの形に分類されます(表4.4.2.10)。

表4.4.2.10 シーケンス弁、アンロード弁、カウンターバランス弁の分類

 

カウンターバランス弁は、アクチュエータ(縦形油圧シリンダなど)に背圧を与えることにより、負圧による自走を防止して、供給される作動油量に対応したアクチュエータの制御速度を維持するのを目的とする弁です。背圧保持弁とも呼ばれます。

構造や作動については、シーケンス弁やアンロード弁と同じですが、ドレンは内部に、パイロットは内部または外部に取り、必ず逆止め弁を内蔵して逆流が自由に流れるようになっています。

例として、内部パイロット、内部ドレン形カウンターバランス弁(1形)を、図4.4.2.11に示します。

図4.4.2.11 カウンターバランス弁(1形)

 

(1)負荷の状態と制御方法

カウンターバランス弁で制御される負荷の状態は、基本的に次の3種類に分類されます。それぞれの負荷状態に適する弁形式と制御方法が必要になります。

① 一定負荷
② 変動負荷
③ 交番負荷(作動中に負荷が正→負、負→正に切り替わる。)

1)一定負荷の場合

内部パイロット形の1形が適します。図4.4.2.12 に基本的な使用回路の例を示します。

内部パイロット形なので、吊下げ負荷を受けるシリンダは、弁自身の設定圧力により背圧をい受けるので、その速度が制御されます。自己制御のため制御圧力の安定性に優れます。

プレスやブローチ盤に広く用いられます。

図4.4.2.12 油圧プレスへのカウンターバランス弁(1形)使用例

 

2)変動負荷

負荷の状態から検討すると外部パイロット形の4形をを用いると考えられます。アクチュエータの供給側の圧力を一定にして、負圧にならないように供給側からパイロットを導きます(図4.4.2.13)。また、4形カウンターバランス弁を使用した油圧プレスの回路図を図4.4.2.14に示します。

外部パイロットによる作動のため、効率、油温安定に点では1形より有利です。一方、負荷荷重の変動が大きい場合や、シリンダ速度が速い場合は弁が不安定動作をして、振動やアクチュエータのノッキング現象が起こりやすい短所があります。

従って、安定性を優先する立場から、この場合でも1形が使用されるのが一般的です。

図4.4.2.13 カウンターバランス弁(4形)

図4.4.2.14 油圧プレスへのカウンターバランス弁(4形)使用例

 

3)交番負荷

負荷状態が正→負、負→正へと交番する場合の油圧回路の例を、図4.4.2.15 に示します。

図4.4.2.15 交番負荷へのカウンターバランス弁使用例

一般に、このような油圧回路では、カウンターバランス弁は1形と4形とを組み合わせた形で使用されます。この弁の構造を、図4.4.2.16に示します。

図4.4.2.16 カウンターバランス弁(ダブルパイロット形)

 

(2)カウンターバランス弁を使用する際の注意

カウンターバランス弁を使用する際の基本的な注意事項を示します。

1)ハイドロクッションタイプの場合、弁体はスプール形のため内部漏れを生じます。そのためアクチュエータを長時間、位置保持をすることはできません。この対策として、シート形式の弁を使用するか、図4.4.2.17 に示すようにパイロットチェック弁を使用するのが一般的です。

図4.4.2.17 落下防止回路の例

2)圧力オーバライド特性の値が大きいので、低圧時に規定の効果速度が得られない場合があります。供給圧力との差に注意する必要があります。

3)2)この対策として、パイロット作動形カウンターバランス弁を使用することがありますが、この場合は外部パイロットですので、ポンプ吐出流量の一部がドレン量として消費されます。ポンプの吐出流量に余裕が無いと加工速度不足の不具合が起こるので注意が必要です。

4)外部パイロット方式の場合、効率や熱発生の防止の点では優れていますが、切換え時に振動を発生する場合がありますので、対策としてパイロットラインに絞り弁を挿入する方法が一般的です(図4.4.2.15)。

 

3.4 シーケンス弁(sequence valve)

2つ以上の分岐回路がある場合に、回路の圧力により、それぞれのアクチュエータ(シリンダ、モータなど)に作動順序を与える自動制御弁です。一般的には、図4.4.2.18に示す直動形構造が使用されています。

図4.4.2.18(a) シーケンス弁(2形)

図4.4.2.18(b) 逆止弁付シーケンス弁(2形)

 

シーケンス弁は、内部パイロットの2形と外部パイロットの3形との2種類の形式があります。何れの形式とも二次側に圧力が負荷されるので、外部ドレン方式となります。

一次側圧力が設定圧力になるまでは、ばねの力でスプールにより二次側が閉じた状態を保持します。油圧力が上昇して設定圧力に達するとスプールが上昇して一次側の全圧力が二次側に付与されます。

 

(1)シーケンス弁の作動と使い方

シーケンス弁の代表的な構造である、2形シーケンス弁の構造を図4.4.2.18(a) に示します。構造は、ばね負荷形のスプール形直動弁で、主弁株のピストンにパイロット圧をかけて、ばね力に対抗して主弁を作動させます。また、作動時に、主弁下部とピストンとで油室を形成して油圧ダンパの役割をします。これによりチャタリングなどを防止するので、これをハイドロクッション形といいます。

一次側圧力が上昇して設定圧(クラッキング圧)になると。主弁が作動して一次側と二次側とのポートが導通して、圧油は二次側へ流れます。

逆止弁が付いているタイプ(図4.4.2.18(b))では、二次側から一次側への戻りが自由にできます。

 

1)2形の場合

図4.4.2.18(b)に示す逆止弁付シーケンス弁の使用例を図4.4.2.19 に示します。シリンダAが先に前進し、加工物に当たると一次圧が上昇してシーケンス弁の設定圧以上になります。シーケンス弁の設定圧以上になると作動して二次側の通路と導通してシリンダBが前進します。

アクチュエータの作動後は、一次側、二次側ともリリーフ弁の設定圧力まで上昇して、A,B両方のシリンダの押付け力が決められます。

このように、このシーケンス弁はBシリンダの作動はじめの圧力を指令として油路の切換えを行う働きをします。

図4.4.2.19 逆止弁付シーケンス弁(2形)回路の例

 

2)3型の場合

図4.4.2.20(a),(b) は、外部パイロット方式の3形の構造を示します。これは、作動パイロット圧力を外部から取り入れる方式です。

図4.4.2.20(a) シーケンス弁(3形)

図4.4.2.20(b) 逆止弁付シーケンス弁(3形)

 

3形は、一次側の圧力に無関係に外部パイロット圧によって作動するようになっていますので、内部パイロット圧で不都合な場合に用いられます。

例えば、図4.4.2.19 に示す油圧回路で、Aシリンダの速度を調整するために流量調整弁を使用する場合、流量調整弁の作動上一次側圧力がリリーフ圧力まで上昇するため、Aシリンダの前進作動中にシーケンス弁が作動してしまい、Bシリンダも同時に動き出すことになります。

その対策として、図4.4.2.21のように流量調整弁から出た作動油を外部パイロットとして、シーケンス弁に導くと、Aリンダの作動が完了した後にパイロット圧が上昇します。

図4.4.2.21 逆止弁付シーケンス弁(3形)回路の例

 

(2)シーケンス弁使用上の注意

シーケンス弁を使用する際の基本的な注意事項を示します。

1)直動形を用いることが多いが、直動形はオーバライド特性が悪いので、設定圧力とリリーフ設定圧力との差を十分に見込んでおく必要があります。差が少ないと、順次作動が不完全となったり、アクチュエータの速度不測の原因となります。

2)あまり使用されないが、オーバライド特性が良いバランスタイプのシーケンス弁もありますが、これはパイロット流量としての損失流量が大きく、ポンプ容量に注意する必要があります。

 

3.5 アンロード弁(unloading valve)

アンロード弁は、油圧回路内の圧力が決められた値に到達すると、ポンプの全流量を直接タンクに戻して、ポンプを無負荷にして動力を節約できる自動制御弁です。

その構造は、シーケンス弁と同じで内部ドレン、外部パイロットで組み立てられています(4形)。作動原理や特性はシーケンス弁と同じですが、シーケンス弁と異なるとは二次側が必ずタンクに接続されることです。

構造を図4.4.2.22 に示します。

図4.4.2.22 アンロード弁

 

(1)アンロード弁の作動

アンロード弁は、作動圧としてのパイロット圧を外部から導入しているので、一次圧力に無関係に主弁が作動します、ていあ。

代表的な使用例を図4.4.2.23 に示します。本回路は高圧小流量ポンプと低圧大流量ポンプとのコンビネーションポンプを使用した回路です。低圧時は両方のポンプが合流してアクチュエータを加速します。アクチュエータの作動が完了して高圧になると、パイロット圧によってアンロード弁が働いて、低圧側ポンプを無負荷運転させます。この回路は、鍛圧プレスや工作機械の早送り、切削送り機構に広く使用されます。

図4.4.2.23 アンロード弁回路例

 

(2)アンロード弁の使用上の注意

アンドロイド弁はオーバライド特性が大きいので、アンロード設定圧を適切に設定しないと、アクチュエータ加速が不足する恐れがあります。その対策としては以下のようなものがあります。

① 弁設定圧をやや上昇させる。
② バランスタイプを使用する。
③ ポンプ流量に適合した弁サイズのアンロード弁を選択する。

②の場合は、シーケンス弁と同様で、リリーフ圧力とアンロードべ弁設定圧との差に比例してパイロット流量が増加します。高圧小流量ポンプの吐出量に余裕を見ておく必要があります。

 

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3.6 減圧弁(pressure reducing valve)

油圧回路の最高圧力は、リリーフ弁の設定圧力によって規定されますが、回路の一部でそれよりも低い圧力を必要とする場合に使用するのが減圧弁です。

例えば、2つの油圧シリンダの作動で、同時操作はしたいが片方のシリンダ出力を弱くする回路を、図4.4.2.24 に示します。

図4.4.2.24に基づいて動作状態を考えましょう。いま、切換弁を操作すると、Bシリンダは主回路のリリーフ弁の圧力で制御されますが、AしりんだとBシリンダとの間に減圧弁が挿入されていますので、Aシリンダに接続するラインは、減圧弁で減圧されたラインになり、Aシリンダの出力はBシリンダのリリーフ圧より低い減圧弁の設定圧力で制御されています。

図4.4.2.24 減圧弁の働き

 

入口側の圧力が変化しても、入口出口の両圧力差が等しい定差形(差圧一定形)減圧弁と、入口側の圧力変化によらず出口側圧力が常に設定値に等しい二次圧一定形とがあります。

二次圧一定形には構造上、直動形とパイロット作動形(バランスピストン形)の2種類があります。一般には二次圧一定形のバランスピストン形減圧弁が広く使用されています(図4.4.2.25)。

図4.4.2.25 二次圧一定形バランスピストン形減圧弁

 

(1)定差形減圧弁

一次側圧力と二次側圧力との圧力差が一定の設定値に保たれ、一次側圧力が変化すれば、二次側圧力もその設定差を保持するように変化します。

原理的には、流量調整弁の圧力補償機構に用いられています。減圧弁としては、図4.4.2.26 に示す構造になります。

図4.4.2.26 定差形減圧弁

 

この形式は二次圧一定の汎用減圧弁と異なり、ノーマルクローズ形の直動形リリーフ弁の応用になります。作動原理は、二次圧がばね室に通じているため、設定したばね荷重に相当する圧力が、一次圧力と二次圧力との差圧として得られます。この形式は構造上大容量化が難しく、差圧の調整範囲もせいぜい3MPa程度までです。また、設定差圧以上の一次圧力が無ければ二次側へは作動油は流れませんが、ドレンは不要になります。

減圧弁としては使用範囲が限定されるので、使用は限られます。

 

(2)二次圧一定形減圧弁

一般に、減圧弁としては二次圧一定形が用いられます。この形式は、設定された二次圧以上の一次圧力の変動に対して、二次圧力は変化せず、常に設定された一定圧力を保持します。図4.4.2.27 は。作動状態を示します。制御圧としてのパイロット圧は、弁の出口側、つまり二次圧力から導かれています。

図4.4.2.27 作動状態の二次圧一定形減圧弁

 

図4.4.2.24 に示す負荷が無い状態では、パイロット弁は作動しないため、主弁左右は油圧平衡状態にあり、ばね(a)の作用で流路(a)は開いており、一次側の圧油はほとんど抵抗なく二次側に流れます。

この状態から、図4.4.2.23に示す回路で、Aシリンダのストローク端で二次側に負荷が生じると、図4.4.2.25に示す油路(b)及びチョークを通って油室(c)の二次圧力が上昇します。この圧力がパイロット圧の設定圧力以上になると、ポペット弁が開いて(クラッキング)、油室(c)の圧油がドレンポートからタンクへ開放されます。

パイロット弁がクラッキングすると、主弁の左右の圧力差により、主弁はばね(a)の力に対向する右向きの推力を得て、流路(a)を閉じるように作動します。

従って、図4.4.2.27 の場合は、主弁が作動した状態で、設定圧以上に二次側圧力が上がらないように、流路(a)を閉止する方向で働いて二次圧力を一定に保持します。ただし、流路(a)は完全には遮断されず、パイロット弁の作動に必要なパイロット流量と、二次ラインの漏れによる消費を補充するために、わずかの隙間を保ちながら一次側と導通しています。

 

(3)減圧弁の特性と使用上の注意

1)リリーフ圧力との差異はどの程度必要か
メーカカタログに記載の圧力調整範囲の最低調整圧力が、減圧弁の作動に必要な最低限のリリーフ圧との差とみなすことができますので、これ以上の圧力差が必要になります。通常は1MPa程度以上の差が必要です。

2)サージ圧を防止する方法
一般に、バランスタイプの減圧弁で、平均20%程度のサージ圧が発生します、ただし、メーカによっては、サージ圧防止機構がある特殊系を採用するか、あるいは回路的な対策でもある程度防止可能です。

3)ドレン背圧はできるだけ避ける
減圧弁のドレンは、約1l/min程度です。これは損失流量になりますので、減圧弁を数多く使用すると、ドレン配管に背圧が掛かる場合があります。ドレン配管は極力背圧が発生しないように径を大きくする必要があります。他の戻り配管との合流などにより過大な背圧が発生すると、低圧設定が出来なくなるばかりでなく、減圧作動時や負荷開放による降圧時の応答性が極端に悪くなる場合があり、注意が必要です。

 

3.7 油圧ヒューズ(hydraulic fuse)

電気のヒューズに見られるように、回路圧力が設定圧力を超えると、隔膜(ラプチャーディスク;lapture disc)が流体圧力によって破壊することにより、タンクに短絡して油圧機器を保護する役割を果たすものです。図4.4.2.28に温度ヒューズの一例を示します。これは隔膜の材料に強さによって設定圧力が定まります。隔膜をいろいろ揃えて置くことにより、調整が可能です。

温度ヒューズは、過大な圧力上昇により機器を保護する他の圧力制御弁のどの形式よりも、急激な圧力変化に対して、良好な応答を示し信頼性が高いので、使用頻度が少ない場合に有効です。

ここで、個人的な経験を述べます。管理人は、35歳で油圧機器メーカに転職して、油圧機器の開発は潤滑用機器のような特殊品しか経験しませんでしたが、生産技術系の職務に従事した期間が長くいろいろな回路を製作したり見てきましたが、ラプチャーディスクタイプの油圧ヒューズを使用した経験はありません。通常のリリーフ弁で十分対応できたと記憶しています。

図4.4.2.28 温度ヒューズ

 

3.8 圧力スイッチ(pressure switch)

圧力スイッチは、流体圧力の信号を電気信号に変換する切換スイッチです。ポンプを起動させたり、停止、弁の開閉を行う目的などに用いられます。

変換方法には、

① 小型ピストンとばねとの平衡を利用
② ブルドン管を用いる
③ ベローズを用いる
④ ロードセルを用いる

などがよく使われています。

図4.4.2.29はベローズを用いた圧力スイッチの例です。メカニカルなので環境が悪い場所でも設置しやすく、それなりに需要がありますが、最近はロードセルを用いた電子式圧力スイッチの方が主流になってきています。

何れの形式でも、油圧回路の振動やサージ圧、管路内の残留空気などにより悪影響を受けやすいので、取扱には十分な注意が必要です。

図4.4.2.29 圧力スイッチ(ベローズタイプ)

 

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参考文献
疑問に答える機械の油圧(上)  ダイキン工業雪技術グループ  技術評論社
Industrial Hydraulic  3rd ed  J.J. Pippenger et al.   McGraw-Hill
実用油圧ポケットブック_2012年版 (一社)日本フルードパワー工業会
油圧教本 増補改訂版  塩崎義弘他  日刊工業新聞社
油圧工学   辻茂   日刊工業新聞社

 

引用図表
図4.4.2.1(a) スプリング直動形安全弁(調整可能)    Indutrial Hydraulic
図4.4.2.1(b) スプリング直動形安全弁(調整不可)    Indutrial Hydraulic
図4.4.2.2 直動形リリーフ弁の例    実用油圧ポケットブック 2012年版
図4.4.2.3 パイロット作動形リリーフ弁    Industrial Hydraulic
図4.4.2.4 パイロット作動形リリーフ弁のリモート調整弁    Industrial Hydraulic
図4.4.2.5 リリーフ弁のオーバライド特性    疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.6 ベントポートの利用:遠隔制御   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.7 ベントポートの利用:ベントアンロード作動   疑問に答える機械の油圧
図4.4.2.8 ベント切換え時の過渡特性   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.9 ベントポートの利用:多圧制御   疑問に答える機械の油圧 上
表4.4.2.10 シーケンス弁、アンロード弁、カウンターバランス弁の分類  ORG
図4.4.2.11 カウンターバランス弁(1形)   油圧教本
図4.4.2.12 油圧プレスへのカウンターバランス弁(1形)使用例  疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.13 カウンターバランス弁(4形)   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.14 油圧プレスへのカウンターバランス弁(4形)使用例  疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.15 交番負荷へのカウンターバランス弁使用例  疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.16 カウンターバランス弁(ダブルパイロット形)   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.17 落下防止回路の例   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.18(a) シーケンス弁(2形)   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.18(b) 逆止弁付シーケンス弁(2形)   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.19 逆止弁付シーケンス弁(2形)回路の例   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.20(a) シーケンス弁(3形)   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.20(b) 逆止弁付シーケンス弁(3形)   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.21 逆止弁付シーケンス弁(3形)回路の例   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.22 アンロード弁   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.23 アンロード弁回路例   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.24 減圧弁の働き   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.25 二次圧一定形バランスピストン形減圧弁   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.26 定差形減圧弁   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.27 作動状態の二次圧一定形減圧弁   疑問に答える機械の油圧 上
図4.4.2.28 温度ヒューズ    油圧工学
図4.4.2.29 圧力スイッチ(ベローズタイプ)   SMCカタログ

 

 

ORG: 2021/03/02