4.4.4 方向制御弁

4.4.4 方向制御弁(directional control valve)


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1.方向制御弁とは

方向制御弁とは、管路内の作動流体を通過させたり、閉止したりする開閉作用や、逆流を阻止したりする作用を行う弁で、アクチュエータの始動、停止、及び運動方向を制御することを目的として、作動流体の流れの方向を制御するために使用する弁です。

 

2. 方向制御弁の分類

2.1 型式、操作方法による分類

方向制御弁を、外観上から分類すると、構造により分類する方法と、操作方法による分類が考えられます。

(1)構造による分類

構造上からは、シート弁とポート弁に分類されます(図4.4.4.1)。シート弁は逆止弁として、ポート弁は流路の切換弁として用いられます。

図4.4.4.1方向制御弁の構造による分類   油空圧回路設計ハンドブック

 

(2)操作方法による分類

弁の操作方法には、手動操作、カムやローラなどの機械による機械操作、パイロット油圧力によるパイロット操作、電磁力によって操作する電磁操作、電磁力によって操作されるパイロット部の圧力により主スプールを操作する電磁パイロット操作、スプリング操作など、単独または組み合わせて用いられます(図4.4.4.2)。

図4.4.4.2方向制御弁の操作方法による分類   油空圧回路設計ハンドブック

 

2.2機能による分類

一つの流路の開閉のみを行う弁、または複数の流路を開閉・切換する機能を有する弁に大きく分類されます(図4.4.4.3)。

図4.4.4.3方向制御弁の機能による分類   油空圧回路設計ハンドブック

一般に、方向制御弁に接続する外部ポートの数により、外部ポートが2つであれば2ポート弁(2 way valve)、外部ポートが3つであれば3ポート弁(3 way valve)のように、著す方法があります。

また、方向制御弁が流路の接続の形を何種類に切換できるかにより、2位置切換弁や3位置切換弁などと呼びます。

これらの組合せで、方向制御弁は一般的な呼び方として、2ポート2位置切換弁や、4ポート3位置切換弁というように呼びます。さらに、弁の操作機能を付加して、4ポート3位置電磁切換弁のような言い方もされます。

 

3. 主な方向制御弁の種類

3.1チェック弁(check valve)

逆止弁は、作動流体を、一方向には自由に流し、反対方向には流れ内容に阻止する弁です。普通はチェック弁(逆止め弁)と呼びます。チェック弁には流路の方向が変化しないインラインチェック弁と、90°向きを変えるアングルチェック弁とがあります(図4.4.4.4)

上流側がどれくらいの圧力のときに弁を開けて作動流体を流すかにより、ばね硬さが異なる ばね が何種類か用意されています(表4.4.4.5に、ダイキン工業のチェック弁のばねの種類を示します。)。

図4.4.4.4 インラインチェック弁とアングルチェック弁 ダイキン工業社外研修テキスト

図4.4.4.5クラッキング圧力表   ダイキン工業カタログ

クラッキング圧力の選定は、一般的には流量抵抗が小さくなるように低いクラッキング圧力が採用されますが、弁の着座遅れによる逆流が問題になる場合や電磁パイロット切換弁の最低パイロット圧力確保のために用いる場合はクラッキング圧力が高目なものを選定します。例えば、逆流防止用にチェック弁として使用する場合は、クラッキング圧力は0.05MPa程度を、背圧弁(抵抗弁)として使用する場合は0.45MPa程度のものを選択します。

また注意点として、定格流量に比較して小流量を流す場合、チャタリングを起こすことがあります。チャタリングは、流量が少ないほど、クラッキング圧力が高いほど、また作動油中の空気含有量が多いほど発生しやすいで傾向があります。

チェック弁は、単独で使用されることも多いですが、シーケンス弁や減圧弁、流量制御弁などに組込まれることも多いです。

 

3.2パイロット操作チェック弁(pilot operated check valve)

チェック弁は逆流を阻止するために用いるものですが、必要に応じて外部から逆流を可能にするものがパイロット操作チェック弁です。

パイロット操作チェック弁の概念図を図4.4.4.6に示します。作動油が一次側から二次側へ流れるときは、通常のチェック弁と同じであり、逆流するときはポペットで油の流れを阻止しますが、パイロット圧力をパイロットスプールの下側に供給することにより、ポペット弁はシート部から押上げられて、作動油の通路が開放されます。

また、パイロット操作チェック弁は切換弁と同様に管路の開閉に使用されますが、閉止時の漏れがゼロですので、主にシリンダ荷重を長時間ロックするために用いられます(図4.4.4.7)。

図4.4.4.6パイロット操作チェック弁(内部ドレン形) Thai-German Institute AU-HYD-10  教材

図4.4.4.7 自重落下防止回路にパイロット操作逆止め弁を使用した例  油圧ハンドブックp290

 

3.3切換弁(selector)

切換弁は、アクチュエータの運動方向を変えたり、停止させるために作動油の流れ方向を切り替える弁です。作動機構によりロータリ形とスプール形に大別されます。どちらも摺動するために隙間を有しており、わずかながらですが漏れが発生することに注意しなければならないアプリケーションもあります。

(1)ロータリ切換弁

ロータリ切換弁は、円筒の中に切換スプールが挿入されており、切換スプールの回転によって、作動油の出入り口を切り換える方式です(図4.4.4.8)。切換スプールに形成された溝または穴の位置を回転させることによって、異なった流れ方向が得られます。

高圧になると、スプールが一方に押さえつけられ、抵抗が増して円滑な切換が困難になりますので、低圧用途が多いですが、ポートを軸対称の位置に設けることにより、圧力を平衡させて、14MPa程度まで使用できるバルブもあります(図4.4.4.9:本バルブは7MPa迄使用可能)。

図4.4.4.8ロータリ切換弁の構造   油圧ハンドブック2012年版

図4.4.4.9 ロータリ切換弁の例(ダイキン工業)ダイキン工業カタログ

 

(2)スプール弁

スプール弁は、内部に段を持つ円筒状の穴(スリーブ)が開いた弁本体に、スリーブの内径と摺動するランドと呼ばれる段を持ったスプールが、軸方向に直線的に移動して、スリーブに開けれた流れの通路となるポートを開閉して、流れの方向を切り換える弁です(図4.4.4.10)。

スプール弁は。スプールに作用する側圧が円周上で平衡しているので、高圧・大容量になってもスプールの切換え力が小さくて済むので、この形式の切換弁が多く使われています。

図4.4.4.10 スプール弁   油圧ハンドブック 2012年版

スプール弁の場合、それぞれの要素について以下のような組合せが考えられます。

(a)ポート数

切換弁の配管接続の口数をいいます。スプール弁の場合、ポート数は、P(圧力)、T(タンク)、A(流路)、B(流路)の4ポートが多く用いられます。

(b)流路接続の形

流路の接続の形としては、アクチュエータの前進・後進の場合のみの2位置、アクチュエータの前進・後進に加えて、中間停止位置がある場合の3位置が多く用いられます(図4.4.4.11)。

図4.4.4.11 2位置弁と3位置弁  ダイキン工業社外研修テキスト

(c)スプール型式

特に3位置弁の場合に、中立位置における各ポート間の連絡状態を示すものとして、表4.4.4.12に示す4種類が多く用いられます。

図4.4.4.12スプール型式  ダイキン工業社外研修テキスト

(d)リターン方式(操作したスプールの復帰方法)

スプリングセンタ(3位置弁に適用)。スプリングオフセット(2位置弁に適用)、及びノースプリング(2位置弁に適用)の3種類があります(図4.4.4.13)。

図4.4.4.13リターン方式  ダイキン工業社外研修テキスト

(e)スプールの操作方式

スプール弁に適用される主な操作方式を、表4.4.4.14 に示します。

表4.4.4.14スプール操作方式  ダイキン工業社外研修テキスト

切換弁はその要素を次の順序で呼称されるのが普通です。

[ポート数]+[位置の数]+[スプールの形式]+[リターン方式]+[操作方式]

例えば、「4ポート・3位置・オールポートブロック・スプリングセンタ・電磁操作弁」となります。

 

(3)電磁操作弁(ソレノイド弁:solenoid valve)

切換弁の片側または両側にソレノイドを設けて、交互に通電させて励磁させて、コアを吸引してそれにより押されたプッシュピンが、切換スプールを押すことにより流の方向を切り換えます(図4.4.4.15)。

図4.4.4.15ソレノイド(ウェットアマチュア形)  ダイキン工業社外研修テキスト

 

電磁操作弁は、電気信号により切換操作をするので自動運転、遠隔操作、及び非常停止などが容易にできます。さらに、切換時間も短いので、非常に多く使用されています。ただ、切換にはソレノイドの吸引力を利用するので、大容量のものは製作が難しいです。

 

(4)電磁パイロット切換弁(pilot-operated directional control valve)

電磁操作弁で取り扱うことができる流量は、電磁力、切換時のショック、耐久性などの制限があり、大流量制御や切換時のショックを緩和する目的で、電磁パイロット切換弁が使用されます。スプール型式の表し方は、電磁切換弁と同様ですが、パイロット弁として用いられる電磁切換弁は、一般的にはプレッシャーポートブロック(ABT)接続になります。電磁パイロット切換弁の例を、図4.4.4.16に示します。

 

 

図4.4.4.16 電磁パイロット切換弁の例   油圧読本

 

 

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参考文献
疑問に答える機械の油圧(上)  ダイキン工業雪技術グループ  技術評論社
実用油圧ポケットブック_2012年版 (一社)日本フルードパワー工業会
油圧教本 増補改訂版  塩崎義弘他  日刊工業新聞社
油空圧回路設計ハンドブック   森田栄一  工業調査会  1977年

 

引用図表
図4.4.4.1方向制御弁の構造による分類   油空圧回路設計ハンドブック
図4.4.4.2方向制御弁の操作方法による分類   油空圧回路設計ハンドブック
図4.4.4.3方向制御弁の機能による分類   油空圧回路設計ハンドブック
図4.4.4.4 インラインチェック弁とアングルチェック弁 ダイキン工業社外研修テキスト
図4.4.4.5クラッキング圧力表   ダイキン工業カタログ
図4.4.4.6パイロット操作チェック弁(内部ドレン形) Thai-German Institute AU-HYD-10  教材
図4.4.4.7 自重落下防止回路にパイロット操作逆止め弁を使用した例  油圧ハンドブックp290
図4.4.4.8ロータリ切換弁の構造   油圧ハンドブック2012年版
図4.4.4.9 ロータリ切換弁の例(ダイキン工業)ダイキン工業カタログ
図4.4.4.10 スプール弁   油圧ハンドブック 2012年版
図4.4.4.11 2位置弁と3位置弁  ダイキン工業社外研修テキスト
図4.4.4.12スプール型式  ダイキン工業社外研修テキスト
図4.4.4.13リターン方式  ダイキン工業社外研修テキスト
表4.4.4.14スプール操作方式  ダイキン工業社外研修テキスト
図4.4.4.15ソレノイド(ウェットアマチュア形)  ダイキン工業社外研修テキスト
図4.4.4.16 電磁パイロット切換弁の例   油圧読本

 

ORG: 2023/02/24