動力システム

動力システム(Power systems)

 

 

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1. 動力システムとは

ここで定義する動力システムは、動力を伝達し制御するために使われるシステムをいいます。

動力システムの要素は図1 に示されるものです。

図1動力システムの要素

動力システムは、基本的には次の3つの要素で構成されています。

(1)回転運動の機械動力を発生するエネルギー源:
一般的に用いられる動力源は、電動機と内燃機関です。その他特殊な例として、蒸気タービン、ガスタービン、あるいは水力タービンなども用いられます。

(2)エネルギーの伝達要素、変換要素、及び制御要素:

(3)回転運動もしくは直線運動を行う機械動力を必要とする負荷

これらの要素からなる動力システムは、機械的なもの、電気的なもの、流体を用いるものなど、さまざまなアプリケーションがあります。図2に、一般的な動力システムの分類を示します。

ただし本項では、動力として、Inputo/Outputとも機械動力を対象として考えます。従って電気自動車のような蓄電池から電気エネルギーを取り出して機械動力(モータ)に変換するシステムは考慮外とします。

図2動力システムの分類

 

2. 色々な動力システム

以下、これらの動力システムについて順番に見ていきましょう。

2.1機械動力システム

機械動力システムは、機械要素を用いて機械動力を伝達および制御するものです。通常の内燃機関を搭載する自動車のドライブトレインが、機械動力システムの典型的な例です(図3 )。機械動力のエンジン(1)は、クラッチ(2)を介してギアボックス(3)に接続しています。ギアボックスの入力軸はエンジンと同じ速度で回転します。ギアボックスからの出力軸(4)は、選択したギア伝達比に応じて、いろいろな速度で回転します。この動力は、ユニバーサルジョイント(5)、ドライブシャフト(6)、ディファレンシャル(7)を介して車輪(8)に伝達されます。

図3機械動力システム

機械動力システムは、他の動力システムと比較して、構造、保守、操作が比較的簡単で、低コストであるという長所があります。 一方短所としては、機械動力システムのパワーウェイトレシオが小さい、動力の伝達距離がかなり限られることがあり、柔軟性と制御性については、他のシステムと比較すると貧弱です。

 

2.2電気動力システム

電気動力システムは、入力側と出力側の距離の影響が少なく長距離の伝達が可能で、入出力の配置などにも柔軟性があります。電気動力システムの動作原理を、図4 に示します。

電気動力システムのは、主として回転運動を出力します。適切なギアシステムやワイヤドラムを用いて回転運動を直線運動に変換することが可能です。ただし、メカニカルなブレーキシステムが無いと一の保持ができない欠点があります。

図4電気動力システム

 

2.3空気圧動力システム

空気圧システムは、動力伝達の作動媒体に圧縮空気を用いる動力システムです。内燃機関や電動機の発生する機械エネルギーを、コンプレッサによって圧力エネルギーに変換します。この変換により、動力の伝達と制御が容易になります。

圧縮空気は、水分を除去したり、潤滑油ミストを添加して調整します。圧縮空気は一般的には貯蔵タンクに貯められて、配管又はチューブによりアクチュエータに送られます。空気圧は、圧力制御弁、流量制御弁、方向制御弁などにより制御されます。最終的にはエアシリンダやモータなどのアクチュエータにより、必要とされる機械動力に変換されます。図5に空気圧による動力伝達プロセスを示します。

図5空気圧動力システム

 

2.4 動液圧動力システム

液圧動力システムは、作動液が持つエネルギーを増加させることにより、機械動力を伝達します。流体動力学と静水力学の2つに分類される液圧動力システムが用いられます。

動液圧動力システムは、主として液体の運動エネルギーを増加させることにより動力の伝達を行います。一般には、遠心ポンプ、タービン、及び追加の制御要素が含まれます。流体動力システムの用途は、回転運動に限られます。

液圧動力システムは、パワーウェイトレイシオが大きく、制御性に優れており、車両の機械式トランスミッション(クラッチ)や、建設機械などで負荷が衝撃的に増加する場合などの緩衝用途に用いられます。

動液圧動力システムには、主に流体継手とトルクコンバータの2種類があります。

流体継手は、本質的には流体を伝達媒体に使用するクラッチです(図6左)。入力軸(1)により駆動されるポンプ(2)と出力軸(4)と結合しているタービン(3)とで構成されています。

ポンプの羽根車が回転すると、作動油は高速でタービンに流入します。

タービンに流入した作動油は、タービンを回転させることにより、ポンプの運動エネルギーを受け、回転力に変換します。これにより、入力軸から出力軸への総力の伝達が行われます。佐渡油は流体継手内の閉回路を循環してポンプ側に戻ります。

入力トルクと出力トルクとは、損失を除き実質的に等しくなります。

トルクコンバータは、ポンプとタービンとの間にステータという追加要素が組み込まれています(図6 (右))。ステータはハウジングに取り付けられて固定されています。

トルクコンバータは、出力トルクを制御して、許容される範囲の伝達効率も維持しながら、伝達比を1以外に変化させることができます。

図6流体継手とトルクコンバータ

 

2.5静液圧動力システム

静液圧動力システムは、主として液体の圧力エネルギーを増加させることにより、動力を伝達します。

静液圧動力システムは、産業分野、建設機械、航空機、及び船舶制御など広く用いられています。

油圧工学入門では、この液圧動力システムについてコンテンツを作ります。一般的には油圧システム、静圧システムともいわれています。図7に静液圧動力システムの動作原理を示します。

図7静液圧動力システム

 

3. 各動力システムの比較

各種動力システムの簡単な比較を図8に示します。
また、各種動力システムのエネルギーの形態を図9に示します。

図8各種動力システムの比較

図9各種動力システムのエネルギー形態

 

 

 

参考文献
Fluid Power Engineering   M. Gala Rabie, Ph.D. (Egypt)  McGraw-Hill  2009

 

引用図表
図1動力システムの要素  引用:Fluid Power Engineering
図2動力システムの分類  引用:Fluid Power Engineering
図3機械動力システム  引用:Fluid Power Engineering
図4電気動力システム  引用:Fluid Power Engineering
図5空気圧動力システム  引用:Fluid Power Engineering
図6流体継手とトルクコンバータ  引用:Fluid Power Engineering
図7静液圧動力システム  引用:Fluid Power Engineering
図8各種動力システムの比較  引用:Fluid Power Engineering
図9各種動力システムのエネルギー形態  引用:Fluid Power Engineering

 

ORG:2023/01/16