3.2.1 溶融亜鉛めっき

3.2.1 溶融亜鉛めっき(Hot-dip galvanized)

 

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1. 溶融亜鉛めっきの規格

溶融亜鉛めっきについては以下の2つの規格がJISで決められています。

・JIS H8641-2007:溶融亜鉛めっき
・JIS H0401-2013:融亜鉛めっき試験方法

 

 

2. 溶融亜鉛メッキの工程

2.1 標準工程

管、管接手、アングル類、厚板、ボルト・ナットなどの比較的小物類については、いわゆる「どぶづけ法」といわれる溶融亜鉛めっき法の工程を、図3.2.1 に示します。これは亜鉛浴からの引上げ速度により合金層の上に付着する亜鉛(Zn)量を調整し(早いほど亜鉛(Zn)層は厚くなる)、たれ切りを行いできるだけ均一なめっきにします。

めっき槽は、低炭素鋼で製作され、通常は側面から加熱します。めっき槽の底に鉛(Pb)が置かれます。これは、鉄と亜鉛との金属間化合物であるドロスのクッションとしてめっ き槽を保護する役割があります。

溶融亜鉛めっきの作業条件を、表3.2.2 に示します。以下に作業工程を示します。

図3.2.1 溶融亜鉛めっき工程(どぶづけ法)   参考:溶融亜鉛めっきガイドブック

 

図3.2.2 溶融亜鉛めっきの作業条件   参考:溶融亜鉛めっきガイドブック

 

A: 前処理工程

(1)脱脂
めっき前の品物表面に、錆や加工時の油、マーキング塗装などが残存していると不めっきの原因になります。一般的にはアルカリ(水酸化ナトリウム;NaoH)水溶液による脱脂が行われています。脱脂後の水洗は、脱脂液の除去と脱脂状態の検査を兼ねて行います。水がはじいて濡れない箇所があれば、脱脂が不完全ですので再脱脂を行います。

 

(2)酸洗
めっき皮膜を形成する合金層は、鉄と亜鉛との合金反応により生成されます。この反応を活発に進行させるためには、品物の表面の錆やスケールを完全に除去しなければなりません。その除去方法としては、塩酸または硫酸を用いた酸洗法が実施されます。
ただ、酸洗は鋼材に水素ぜい性を起こす危険性がありますので、高力ボルトなどでは、脱脂・酸洗の代替としてブラスト処理を行います。

 

B: めっき工程

(1)フラックス処理

亜鉛めっきは、鉄と溶融亜鉛とが反応してできるものです。接触面にスマット(塩基製鉄塩)、赤錆、酸化亜鉛などの不純物が介在していると、合金反応が妨害され不めっきになることがあります。
フラックスの役割は、これらの不純物の生成を防ぎ、さらには不純物を溶解して焼失させ、合金反応を円滑に進め、完全なめっき皮膜の生成を助ける役割があります。
現在、乾式法が一般的に用いられています。これは塩化亜鉛と塩化アンモニウムの混合物の水溶液に品物を浸漬・塗布して乾燥させてから、めっき槽に入れます

 

(2)めっき浴

1)めっき浴の組成

めっき浴組成を、表3.2.3 に示します。

表3.2.3 溶融亜鉛めっき組成例   溶融亜鉛めっきガイドブック

2)浸漬方法

めっき浴への浸漬は、品物を10°程度の傾斜を設けて、速やかに浸漬します。
一般に、浸漬時間が長くなれば合金層の厚さは厚くなる傾向にあります。
浸漬時間の設定は、最大板厚で目標とする付着量が得られるように決められます。これは、板厚が厚い部分は、熱伝導が遅く、亜鉛めっき層(合金層)の形成に時間がかかるためです。従って、他の肉厚が薄い部分は目標付着量より多めに付着する傾向があります。

(3)引上げ

めっきが完了した部材を引上げる際は、浴表面の亜鉛酸化物(アッシュ)を十分除去(灰かき作業)して、清浄な浴面から引き揚げます。引上げ速度が速いほど亜鉛(Zn)層は厚くなります。
引上げ時の部材は、下面に生じる直線的なたれを無くすため、長手方向のみならず横方向にも、引上げ中あるいは引上げ完了後も、ある程度角度をつけておく必要があります。
また、めっき浴からの引上げ時に、たれ切りをよくするため塩化アンモニウムを散布します。

(4)冷却

めっき浴から引上げ完了後、速やかに冷却水槽に、規定の角度で冷却水中に完全に水没させます。

 

C:後処理工程

(1)仕上げ

仕上げ作業は、サンダーややすりなどを用いて行います。

 

(2)検査

めっきの外観検査および、JIS H0401 の基づいためっき付着量、密着性試験を行います。

 

2.2 亜鉛めっき鋼板の製造工程

製鉄メーカでの、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について図3.2.4 に示します。

図3.2.4 コイルの陽右亜鉛めっき工程   神戸製鋼所カタログ

 

3. 亜鉛めっきの特徴

3.1 溶融亜鉛めっき皮膜の組織

図3.2.5 に溶融亜鉛めっき断面の顕微鏡写真を示します。

図3.2.5 溶融亜鉛めっき断面   参考:溶融亜鉛めっき上の塗装

 

最上面から順に見ていきましょう。

(1)η(イータ)層

η層は、稠密六方晶系に属しており、亜鉛浴と同一成分で鉄含有量は0.03%程度です。この層は品物を亜鉛浴から引き上げる際に、製品表面に付着したものです。軟らかくて展延性に富んでいます。変形加工を受けても破れることはありません。
η層は純亜鉛ですので初期表面は光沢があります。また、製品肉厚の関係で決勝模様が出ることがあります。

 

(2)ζ(ツェータ)層

ζ層は、単斜晶系に属しており、皮膜層中で最も顕著な結晶を持ち、柱状組織です。この結晶は他の層と比較すると対称性が低く、お互いの結合力が強くなく、この間に亀裂を生じることがあります。組成はFeZn13 と考えられ、鉄の含有量は6%程度です。
この層まで腐食が進むと、斑点状に赤褐色を呈することがあります。しかし合金層は残っており耐食性はまだ保有されています。

 

(3)δ1(デルタワン)層

δ1層は、通常めっき皮膜の最深部に認められる層です。緻密で複雑な六方晶系の構造を持ち、柵状層とも呼ばれ、じん性・延性に富んでいます。上部のζ層と互いに混晶している部分もあります。組成はFeZn7と考えられ、亜鉛に固溶した鉄の含有量は7~11%です。硬さはHv200以上あり、やすりを当てると鉄に近い感触があります。

 

(4)Γ(キャピタルガンマ)層

Γ層は、鉄素地に接した層で非常に薄く顕微鏡でも明確に観察されないことがあります。その結晶構造は立方晶系で、組成はFe3Zn10 と考えられています。

 

また、電気亜鉛めっき断面を比較として図3.2.6 に示します。純亜鉛(Zn)の層が認められます。

図3.2.6 電気亜鉛めっき断面   実用めっきマニュアル

 

3.3 亜鉛めっき皮膜の耐食性

亜鉛めっき皮膜は、環境や使用条件の影響を受けますが、2種類の作用により高い耐食性を発揮します。

(1)保護皮膜作用

めっき皮膜表面の亜鉛が、錆びることによりZnOやZn(Oh)2などの緻密な生成物を形成し、表面が覆われていくことで強固な保護皮膜になります。

図3.2.7 亜鉛と鉄との防食作用の比較   NSガルバ(株)溶融亜鉛めっきカタログ

 

(2)犠牲的防食作用

電気化学的な犠牲防食作用により、鉄素地が露出しても周囲の亜鉛が先に腐食することで、鉄素地の腐食の進行を抑制する作用があります。

図3.2.8 傷が生じたときの亜鉛皮膜と塗膜との防食状態の比較   NSガルバ(株)溶融亜鉛めっきカタログ

 

 

3.4 亜鉛めっき皮膜の環境別耐食性

(1)大気中での耐食性

大気中の耐用年数は、使用環境別溶融亜鉛めっき腐食速度の表(表3.2.9)の値を用いた次式により、おおよその耐用年数が予測されます。

 

耐用年数=亜鉛付着量(g/m2)/腐食速度(g/m2・年)×0.9

 

表3.2.9 使用環境別溶融亜鉛メッキの腐食速度と耐用年数   参考:溶融亜鉛めっきガイドブック

 

(2)腐食性の環境、高温に晒される環境

酸性雰囲気、アルカリ性雰囲気、火山ガスや腐食性ガスに晒される場所、高温に晒される環境(煙突等)は溶融亜鉛めっきの耐食性には適合しません。

 

(3)局部腐食

地面埋没部付近や日常的に水の飛沫に晒される場所、融雪剤が散布される場所等の局部的に厳しい腐食環境にある場合は溶融亜鉛めっきのみの耐食性では不十分な場合があります。

 

(4)水中、海水中の耐食性

pH6~12の範囲で、50℃未満の環境であるならば、水中でも保護皮膜が形成される為、優れた耐食性

を示します。しかし、水と空気の境界は局部的に厳しい腐食環境になる為、注意が必要です。

 

(5)pH、温度の影響

亜鉛は pH3 以下および pH13 以上においては腐食速度が大きく増大します。また、水中の温度 50~90℃の範囲においては保護皮膜が安定しない為、腐食速度が増加します。

 

(6)土壌中の耐食性

土壌中で腐食速度を支配する要因は通気性、含水率、溶存物質の種類と量、電気伝導度、pH、迷走電流の有無などがあります。要因が多く、またその他の環境にも影響を受ける為、土壌中の耐食性には大きなバラツキがあります。

 

(7)微生物による腐食

堆肥等微生物の発酵や腐敗による腐食性ガスに常に晒される環境にありますと、腐食が促進される場合があります。

飼育している生物への餌等により栄養価が高い状態になると、水中には大量の微生物が発生します。pH が有効な耐食性を示す範囲内にあっても、環境によっては微生物の活動により局部的な腐食が進行する場合があります。

 

(8)異種金属接触による腐食

 異なる金属が接触していると、異種金属腐食が発生する可能性があります。例えば溶融亜鉛めっき製品にステンレスの部材が接触していると、亜鉛めっき製品側に局部腐食が発生する事があるので注意が必要です。

 

 

 

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参考文献
表面処理 新版材料編   日本金属学会  1961年
実用めっきマニュアル   オーム社  S46年
溶融亜鉛めっき上の塗装   (一社)日本溶融亜鉛鍍金協会  2006年
溶融亜鉛めっきガイドブック   北海道内田鍛工株式会社技術資料  2019年guidebook.pdf
溶融亜鉛めっきの耐食性   亜鉛めっき鋼構造物研究会
溶融亜鉛めっき加工要領書   日東亜鉛株式会社  H26年

 

引用図表
図3.2.1 溶融亜鉛めっき工程(どぶづけ法)   参考:溶融亜鉛めっきガイドブック
図3.2.2 溶融亜鉛めっきの作業条件   参考:溶融亜鉛めっきガイドブック
表3.2.3 溶融亜鉛めっき組成例   溶融亜鉛めっきガイドブック
図3.2.4 コイルの陽右亜鉛めっき工程   神戸製鋼所カタログ
図3.2.5 溶融亜鉛めっき断面   参考:溶融亜鉛めっき上の塗装
図3.2.6 電気亜鉛めっき断面   実用めっきマニュアル
図3.2.7 亜鉛と鉄との防食作用の比較   NSガルバ(株)溶融亜鉛めっきカタログ
図3.2.8 傷が生じたときの亜鉛皮膜と塗膜との防食状態の比較   NSガルバ(株)溶融亜鉛めっきカタログ
表3.2.9 使用環境別溶融亜鉛メッキの腐食速度と耐用年数   参考:溶融亜鉛めっきガイドブック

 

ORG:2021/09/30