水の性質
水の性質(Properties of water)
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Contents
0. はじめに
ターボポンプで良く取り扱う流体は、水であると考えられます。代表的な性質の水について個々に記述していきましょう。
1. 純水(脱塩水:Demineralized Water)
純水とは、不純物が少なく化学的に純度の高い水をいいます。主に塩類や有機物などがほとんどすべて除去された状態を指します。精製方法に指定はなく、どんな方法でも、精製を行えば純水といえます。
例えば、以下のような方法が考えられます。
・複式蒸留
・イオン交換膜
・逆浸透膜
・電気透析
不純物や溶解ガスが取り除かれているため、化学的に活性化されています。純水は、適切な温度では、ガラスおよびオーステナイト系ステンレス鋼は完全に耐食性があります。 一方、鋳鉄と青銅は両方とも腐食され、水が汚染されます。 高温では、オーステナイト系ステンレス鋼は粒界腐食を起こします。
純水の主な物理的特性を以下に示します。
表1 純水の粘性係数 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
表2 純水の密度 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
表3 大気圧(0.1MPa)での純水の物理的特性 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
表4 純水の特性 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
ここで、表1 ~ 表3に示す、粘性係数度および蒸気 (飽和) 圧力は、ICPS-8 (第 8 回蒸気の特性に関する国際会議、1975 年) で承認された国際標準値に準拠しています。 密度について記載された値は、ICPS-6 (1964) と一致しています。
2. 淡水(真水:Fresh Water)
2.1 淡水とは
淡水は、河川、湖や、井戸などの地下水から得られる水で、塩分含有量が約0.05%以下の水と定義されます。淡水は、硬度(カルシウムやマグネシウムのミネラル分含有量)によって「硬水」と「軟水」に分けられます。石鹸との泡立ち具合で判断されることがあります。ミネラルが少ない「軟水」は口当たりが軽くまろやかで、ミネラルが多い「硬水」はしっかりとした飲み応えがあります。日本で採れる淡水はほとんどが軟水に分類される一方、ヨーロッパで採れる淡水はほとんどが硬水です。
急な傾斜(けいしゃ)の山が多い日本は、水の流れる速度が速く、水が岩石と触れる時間が少ない。さらに火山活動によって出来た地層が多く、地中にミネラルが少ないため、硬度の低い軟水になります。一方、ヨーロッパなどの大陸部では、山と海が遠く離れており、緩やかな地形を水がゆっくりと移動します。その分岩石と触れる時間が長く、成分を水が吸収することになります。また、魚の骨や貝殻などが含まれる石灰岩層(せっかいがんそう)が多いため、ミネラル分も豊富で硬度の高い硬水となります。また、溶存ガスが常に含まれており、特に酸素と二酸化炭素が重要です。
淡水は、さまざまな産業において、冷却水や加工水、灌漑用水として用いられますが、特に飲料用の原水として多くの用途があります。
ポンプ材料として問題になるのは、材料に対する水の腐食作用です。
淡水用のポンプ材料としては、
– 鋳鋼・鋼材
– ねずみ鋳鉄
– ブロンズ
などが、用いられます。
腐食の原因となる水の性質は次のとおりです。
– pH値
– 硬度と炭酸含有量
– さまざまな化学物質、主に塩の含有量
– 酸
これらとは別に、水の温度や次に示す物理的要因が、腐食や摩耗に影響を与えます。
– 流れの速度; 通常、パイプ内では数 m/s、遠心ポンプ内では 10 ~ 40 m/s
– NPSH 利用可能およびキャビテーション
– 固体の内容物、例: さまざまな発生源からの砂と汚泥
すべての素材が高速サービスに適しているわけではありません。 すべての材料が同等のキャビテーション耐性を備えているわけではありません。 淡水の絶対圧力が約 0.4 bara まで低下すると、溶存ガスが発生し始めます。 これがポンプ吸込みに発生するとキャビテーション症状や故障が発生する可能性があります。 少量の固形物は、浄水用に設計および選択されたポンプの摩耗率を高め、腐食を促進する可能性があります。
2.2 pH値と材料選択
自然水のpH値は通常4から8の範囲で、酸性度により異なるグループに分けられます。深層地下水は酸が少なく、表面水は酸性が強いことが多いです。pH値により水の腐食性が変わるため、ポンプや配管の材料選択に大きく影響を与えます。
淡水に分類されるものとしては、以下のようなものが考えられます。
・深い水源からの地下水:
高深度地下水には、酸はほとんど含まれていません。代わりに、腐食性の要因になるのは、水素イオン濃度です。鉄は、pH6 ~ 7で著しく腐食されます。
・酸性の地表水:
pH値は、腐食性に対する絶対的な尺度ではありません。
・飲料水:
飲料水は、河川水や低酸性の地下水または高酸性の地表水でもよいですが、化学的に処理され濾過された水です。
淡水を移送するポンプは、多くが鋳鉄で製作されているため、特に水の pH値に着目して、鋳鉄の使用に関するいくつかの一般的な側面を以下に示します。
・ねずみ鋳鉄は、pH 7 ~ 10 の範囲内では実際に問題なく使用できます。塩化物が存在する場合は、鋳鉄が不適切な可能性があります。
・ねずみ鋳鉄は、多くの場合、pH 5 ~ 7 の範囲内で使用できますが、pH 値が低くなると、これらの要因の影響が大きくなる可能性があります。 この pH範囲内では、耐腐食性に関しては鋳鉄の方が鋼よりも優れています。 ねずみ鋳鉄は高い炭素含有量((3 ~ 4 %)なので、適度な流速で黒鉛が腐食生成物と一緒に、いわゆる黒鉛化と呼ばれる防食膜を形成することによります。
鋳鉄が抵抗性を示さないpH値の場合は、青銅、鋼、またはステンレス鋼を使用する必要があります。アルミニウム青銅は淡水に特に適していますが、寿命を長くするにはニッケルアルミニウム青銅の方が好ましい場合もあります。
鋼は適切な条件下では、問題なく使用できます。 高速領域では、コーティングで対応可能です。11 – 13Cr鋼はボイラー供給用途によく使用されますが、水質管理が不十分な場合はオーステナイトステンレス鋼が使用されることもあります。
2.3 水の硬度
水の硬度は、日本やアメリカ合衆国では、カルシウムとマグネシウムをCaCO3の炭酸塩に換算して計算されます。
単位は(mg/l)または(ppm)で示されます。
硬度[mg/l]=(カルシウム量[mg/l]×2.5)+(マグネシウム量[mg/l]×4.1)
硬度の分類はいろいろありますが、ここではWHO(世界保健機構)の水質ガイドラインにおける硬水・軟水の分類を示します。
2.4 炭酸及び炭酸塩平衡
水が地下を通過する際に二酸化炭素を吸収して、炭酸(H2CO3)を形成します。これがミネラル分と結合して、溶解しにくい炭酸カルシウム(CaCO3)や炭酸マグネシウム(MgCO3)が、溶解しやすい重炭酸塩(Ca(HCO3)2、Mg(HCO3)2)に変換されます。
3. 汽水(Brackish Water)
汽水とは川の河口で淡水と海水が混ざり合った水で、塩分濃度は約1~2.5%、クロリド濃度は約4000ppmです。この水質は泥や砂などの固形物を含むことが多く、腐食性を持ち、またポンプの摩耗を加速する可能性があります。
4. 海水(Seawater)
海水は、その独特の化学的、物理的特性により、ポンプの選択や運用において特別な注意が必要です。海水の主成分は、塩化ナトリウム(NaCl)ですが、その他にも多くのミネラル分や有機物が含まれています。これらの成分は、ポンプや配管の材質に影響を与え、腐食や経年劣化のリスクを高めます。
4.1 一般的特徴
海水には、塩分含有量の約75%を占める塩化ナトリウム(NaCl)を含む。無機塩の混合物が含まれています。海洋の深層での塩分含有量は、場所によりわずかに異なりますが、深さ500mのところでの塩分濃度は約3.5%です。海面付近では、気候や河川の流入など、その他の要因により大きく影響を受けます。例えば、バルト海北部では塩分濃度はほぼ0%ですし、紅海では約4%です。
海面温度は、北極海や南極大陸周辺の約-2℃から、ペルシャ湾の約+37℃まで変化します。一方海底温度はそれほど差は無く、+2℃から+5℃の間にあります。海水の物理的性質は、化学的に純粋なほとんど差異がありません。
4.2 海水の特性と腐食
海水を取扱うポンプの材質の選定には、海水の品質が耐食性において非常に重要であることがわかっています。一般に、沿岸や河川の交通に従事する船舶は、外海を航行する船舶よりも腐食の影響を受けやすくなります。海岸沿いの産業や発電所に関しては、設置場所によって水質が大きく異なる場合があります。
舶用ポンプでは、塩分雰囲気にさらされる沿岸施設などでは、特に異種金属が使用されている場合には、電気腐食の影響を軽減するために外部構造に特別な注意を払う必要があります。
海水の性質の変化と、それらの変化が腐食速度に及ぼす影響は次のように要約できます。
・海水温度は、腐食速度に関して比較的重要です。一般に、温度が高くなると腐食のリスクが高まります。
・固体汚染物質は、材料上の保護膜を損傷し、腐食を進行させる要因です。もちろん、機械的摩耗の速度も増加する可能性があります。さまざまな種類の化学汚染物質も腐食速度の増加につながる可能性があります。
・実験では、酸素含有量が1 mg/L を超えると応力腐食割れが促進されることが示されています。前処理を考慮する場合、酸素の削減が最も重要です。
・藻類を抑制するために使用される次亜塩素酸ナトリウムの濃度が濃すぎると、深刻な孔食を引き起こす可能性があります。 要約すると、通常の酸素含有量を含む清潔で冷たい海水では腐食の問題が最も少ないことが確認できます。
4.3材料の選択
海水用ポンプは、材料の組合せに注意しなければなりません。海水は導電率が高く、卑な金属は腐食が激しくなります。この傾向は海水の流速により引き起こされる電解電位の変化により更に悪化します。
鋼は海水の移送設備の材料としては、あまり適していません。適切な使用では、ステンレス鋼製インペラを備えた鋳鉄鋳物は、ニッケル アルミニウム青銅製インペラよりも全体的に長持ちします。 Niレジストと延性Niレジストはいくつかの用途に使用されています。 延性のある Niレジストは鋳造が難しく、どちらも溶接修理が困難です。
銅合金は海水中での耐用年数が長く、一般に鋳造や機械加工が容易です。ニッケルアルミニウム青銅およびマグネシウムアルミニウム青銅は、アルミニウム青銅および砲金よりも優れています。 ニッケルアルミニウムインペラを備えた砲金のケーシングがよく用いられます。 アルミニウム青銅は、冶金と熱処理が適切であれば、応力腐食割れに耐性があります。 ニッケルアルミニウム青銅は、一部のステンレス鋼と比較して、キャビテーション損傷に対する優れた耐性を備えています。
アルミニウムおよびニッケルアルミニウム青銅は、浸食の問題を排除するために18 ~ 25 m/s に制限されています。アルミニウム青銅は、ステンレス鋼やチタンと問題なく組み合わせて使用できます。
ステンレス鋼は、海水の汲上げに最もよく使われる材質です。 テスト結果を確認するとき、および材料を指定するときは注意が必要です。 オーステナイト系ステンレス鋼の化学組成、つまり耐食性は材料の製造によって異なります。 SCS14は、鋼材のAISI 316とは異なります。
フェライト鋼は、海水中で局所的な腐食や孔食が発生します。モリブデンを含まないステンレス鋼は一般に品質が劣ります。 SUS304 は、一般に最低品質のオーステナイト系ステンレス鋼とみなされます。SUS304は、海水には使用されません。
一般的な材料の組合せでは、SUS316材のシャフトを備えたSCS16のケーシングが、最小限の組合わせです。SCS16には、10 ~ 15%のフェライトが含まれており、フェライト構造を持たない鋼材のSUS316Lよりもクロム含有量が高くなります。
SCS16は、耐孔食性および隙間腐食性に関しては、アロイ20 と同等に優れており、良好な応力腐食割れ耐性を備えており、鋳造性および溶接補修が容易です。 フェライト含有量により耐食性が向上し、溶接性が向上します。
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参考文献
Handbook of Pumps and Pumping Chapter 2 Properties of liquids Brian Nesbitt Elsevier Science & Technology Books 2006年
引用図表
表1 純水の粘性係数 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
表2 純水の密度 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
表3 大気圧(0.1MPa)での純水の物理的特性 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
表4 純水の特性 出典:Handbook of Pumps and Pumpingを翻訳
表5高度の分類
ORG:2024/02/04