2.1 研削加工の概要
2.1 研削加工の概要(Outline of grinding process)
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研削加工とは、砥粒を結合剤で固めた研削砥石(超砥粒ホイール)を工具として用いた除去加工です。切削加工の場合、切削作用をするのは工具切れ刃ですが、研削加工の場合は砥粒の切れ刃がそれに相当します(図2.1.1)。
図2.1.1 切削加工と研削加工との切れ刃の役割の違い
1.研削砥石の3要素5/6因子
研削砥石は、酸化アルミニウム(Al2O3)や、炭化ケイ素(SiC)、窒化ホウ素(cBN)、ダイヤモンド(C)などの硬質粒子である砥粒を、気孔と呼ばれる空隙により組織を調整しながら、セラミックや金属などの結合剤で固めたものです。これらの砥粒、気孔、結合剤は研削砥石の3要素といわれます。ちなみに、砥石の性能を決めるものとして、砥粒の種類と粒度、結合剤の種類と粒度、気孔の組織を研削砥石の5因子が考えられます。更に砥石の大きさ・形状を加えて、研削砥石の6因子ということがあります(図2.1.2)。
図2.1.2 研削砥石の3要素・5/6因子
2.研削加工の特徴
研削砥石は、高速で回転させて用いますので、動的釣り合いを考慮して形状は主として、円盤状もしくは円柱状になります。そのため砥石車(grinding wheel)ともいいます。研削作業は、といしの外周面または側面で行われます。砥石の表面に露出している多数の砥粒切れ刃が高速で移動して、非常に微細な切削を行います。工作物に工具の切れ刃が作用する領域は、切削加工の場合は、面積が1mm2程度の矩形に近い領域であるのに対して、研削加工の場合は、研削工具が工作物に作用するのは、幅数mm x 深さ数μm程度の極めて細長い領域で、工作物を薄く削り取る加工形態です。
以下に、研削加工の特徴をまとめます。
(1)切れ刃が極めて硬い。
最近は切削工具にも窒化ホウ素やダイヤモンドなどの硬質材料も使用されますが、一般的な切削と比較すると、切削では削れない、硬くて脆い材料の工作物にも適用できます。
(2)切り屑が極めて小さく、仕上面粗さが良好
通常、切り屑の大きさは、幅及び厚さが 1 ~ 50μm”、長さが1 ~ 300 μm 程度で、切削による切り屑と比較すると極めて小さくなります。また、仕上面粗さはRa 0.025 (Rmax 0.1s)程度まで得られます。切削加工の後の仕上げ加工によく用いられます。
切り屑の例を、図2.1.3に示します。
図2.1.3 研削加工の切り屑例(50μm研削スラッジ)
(3)切れ刃の形状がランダム
切削の場合と異なり、すくい角はランダムで、負の大きな値を持つものも多くあります。また、切削作用はすくい面だけでなく、稜による切削も含めた三次元切削がされています。
(4)切削速度が極めて大きい
砥石研削の場合、切れ刃の切削速度は、2 000 ~ 3 000 m/min程度あり、切削加工の10 ~ 50 倍の速度です。その理由は、工作物と工具との緩衝領域が小さく、切削抵抗が小さいため、研削仕事率に余裕があるためです。
(5)多くの場合、切れ刃の自生作用がある
切れ刃が摩耗すると、砥粒の切削抵抗が増します。それにより砥粒がへき開して割れた面に鋭利な切れ刃が及び現れることが繰返されます。研削条件が適正であれば、ドレッシング(dressing)を行わなくても、長時間の研削ができます。
3.研削作業の分類
研削砥石と工作物との相対運動の違いにより、研削作業を分類します。
(1)平面研削
a) テーブル送り横送り平面研削(table traverse cross-feed surface grinding);
砥石外周面が工作物に接触しながら工作物が砥石軸に垂直な方向に移動(テーブル長手送り)し、なおかつ砥石方向の移動(テーブル送り)も行われます。これは、作物上を平面的に相対移動したのちに、砥石の切込みが行われ、相対移動が繰返します。
b) 平面プランジ研削(surface plunge-cut grinding);
テーブル横送りがなく、テーブル長手送りと砥石切込みのみによる研削です。砥石外周の輪郭が転写された断面形状を持つ上場平面が得られます。輪郭が直線なら平面になります。
(2)円筒研削
a) 長手送り円筒研削(traverse cylindrical grinding);
回転する工作物の外周に回転軸と平行な砥石軸をもつ砥石が接触しながら軸方向に移動(長手送り)する研削方法です。単に円筒研削(cylindrical grinding)ともいわれます。通常は砥石が軸方向に往復したのちに砥石の切込みが行われます。
b) 円筒プランジ研削(cylindrical plunge-cut grinding);
長手送り円筒研削に対して、長手送りがなく工作物の回転と砥石切込みのみによる研削方法です。砥石切込みは,工作物の回転に合わせて連続的に行われます。砥石外周の輪郭が転写された輪郭の回転体が得られます(輪郭が直線なら円筒面)。
(3)総形研削(form grinding,profile grinding)
平面プランジ研削と円筒プランジ研削において、砥石輪郭を工作物の形状にした研削方法です。
図2.1.4 総形研削の概念
(4)内面研削(internal grinding)
中空円筒工作物の内面を加工する研削方法です。
参考文献
絵とき研削加工の基礎のきそ 海野邦昭 日刊工業新聞社
研削加工の基礎知識2 海野邦昭 (株)イプロス
データ活用ハンドブック 工作編 技術評論社
(株)ノリタケカンパニーリミテドHP https://www.noritake.co.jp/supports/detail/16/
四国工業(株)様HP http://www.shikoku-ind.co.jp/faq/
引用図表
図2.1.1 切削加工と研削加工との切れ刃の役割の違い Metal Machining、ノリタケカンパニー カタログ
図2.1.2 研削砥石の3要素5/6因子 研削加工の基礎知識2他より改
図2.1.3 研削加工の切り屑例 四国工業(株)様HP
図2.1.4 総形研削の概念 Manufacturing Engineering and technology
ORG:2019/4/11
付記:2019/4/11
本件に関連して、実業でも最近、研削加工についての知識をブラッシュアップする必要が生じ、文献等を見直したところ、海野先生の著作が最も理解しやすい内容であったことを記しておきます。
絵とき研削加工の基礎のきそ 海野邦昭 日刊工業新聞社