2.6 アモントン・クーロンの法則の限界
2.6 アモントン・クーロンの法則の限界(Limit of Amonton-Coulomb’s law)
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2.4.1項でアモントン・クーロンの法則の破れについて簡単に触れましたが、もう少し網羅的に考えていきたいと思います。
1.荷重・速度が極端な場合
乾燥摩擦や境界摩擦の状態では、アモントン・クーロンの法則は荷重や速度の広い範囲で成立する経験則です。ただ、荷重や速度が非常に小さいもしくは非常に大きい場合には成立しなくなってきます・
(1)荷重
低荷重の場合、二表面の摺動は主として酸化膜同士の摩擦になりますので、摩擦係数は低いですが、高荷重の場合、摺動している面の酸化膜が破れて下地の金属同士が摺動するので摩擦係数は高くなります。
また、別の研究では、極端な軽荷重や高荷重の場合のクーロンの法則からのかい離を報告しています。
軽荷重では、摩擦係数が荷重の1/3乗で増加するとしたArchardの測定が有名です。
一方、極端な高荷重の場合には、実接触面積が見かけの接触面積近づき、また接触面の塑性流動が生じるため摩擦係数が減少する場合もあると観察されています。
(2)速度
静止摩擦~動摩擦へは、連続的に移行します(図2.6.1)。静止状態から速度が増加するにつれて、摩擦係数は徐々に低下して一定の値になります。
図2.6.1 低速度領域における乾燥摩擦に対する速度の影響
静摩擦係数は動摩擦係数より大きい理由として色々考察されています。一例として、接触時間が長くなると相対する面が次第に接触して真実接触面積が増加するためと考えられます。
また、非常に高速で相対運動する場合、表面温度が上昇して表面の酸化膜が破壊されたり軟化することにより摩擦係数が変化します。
2.摺動面の状態
アモントン・クーロンの法則は、乾燥摩擦・固定摩擦の状態で成立します。摺動する二面の間に油膜が介在する流体潤滑の場合、流体膜により摩擦特性が決められるので摩擦係数は著しく小さくなり、またアモントン・クーロンの法則は成立しません。
参考文献
トライボロジー入門 岡本純三他 幸書房
材料の破壊,摩耗,劣化の基礎的考え方 奥田聡 粉体工学研究会誌 Vol.12No.1 1975年
引用図表
図2.6.1 低速度領域における乾燥摩擦に対する速度の影響 トライボロジー入門
ORG:2020/1/30