2.7 摩擦の速度特性とスティック・スリップ

2.7 摩擦の速度特性とスティック・スリップ

 

スポンサーリンク

 

1, スティックスリップ現象とは

スティックスリップ(stick slip)現象とは、接触する二物体が滑り運動をするとき、連続的な滑らかな滑りにならず、滑りと固着とが交互に起きる間欠運動をいいます。摩擦系に弾性ばね要素を含むと,接線力の増加に伴うばねの変位の増加により弾性エネルギーを蓄積して、限界に達するとエネルギーの解放としてみかけの滑り速度より大きな滑りが生じます。やがて弾性エネルギーが減少して、二物体の相対速度が0になると固着します。これが繰返して起こります。日本語ではビビリともいいます。

 

 

2. スティックスリップ現象のモデル

スティックスリップ現象は、接触する二つの物体の固体摩擦において、図2.7.1 に示すように、摩擦部分を支持する系にばね要素が存在する場合に、運動する物体の動きが、図2.7.2 に示すような、のこぎり刃状の波形を持つ振動を発生する場合があり、そのような状態になることをスティックスリップ現象といいます。

図2.7.1 スティックスリップ現象のモデル

図2.7.2スティックスリップ現象発生時の摩擦振動

 

いま,図2.7.1 において下の物体が速度vs で右方向に動いているとして、その上に質量m の物体がおかれているとき、その物体の変位をx、これを支えるばね要素のばね定数をk とします。

この系について、応力が蓄積されるスティックの挙動と、応力が解放されて再び応力が蓄積され始めるまでのスリップの挙動に分けて考えます。この方法は、Bowden and Leben(1939)の定式化に基づいています。

(1)スティック挙動

    (2.7.1)

ここで、

vs:移動速度

k:ばね要素のばね定数

 

スティック挙動の限界せん断抵抗(静止摩擦力)は

    (2.7.2)

ここで

μs:静摩擦係数

N:摺動面異作用する垂直力;N=W=mg

W:上側の物体の重さ

m:上側の物体の質量

g:重力加速度

 

(2)スリップ挙動

    (2.7.3)

ここで

μk:動摩擦係数

 

式(2.7.3)に解は、次式で与えられます。

      (2.7.4) 

式(2.7.4)は、初期条件としてt=tsx=xs、\( \dot{ x } = v_{ s } \) から、積分定数を求めることができて、以下に示すようになります。

         (2.7.5)    

ここで

\( \Omega = \sqrt{ k/m } \)Ω=√k/m

\( x_{ s } = W/k \) xs=W/k

また、t=ts において、\( \dot{ x } = v_{ s } \) であるので、

  (2.7.6) 

ここで

xs=vs・ts

滑りが継続している時間は次式で表されるので、

      (2.7.7)

   (2.7.8)     

もし、\( v_{ s } = \approx 0 \)  ならば、

    (2.7.9)

ずれ変位量xrは、

     (2.7.10)

 

更にすべりによる力の変化は、

      (2.7.11)

で表されます。

 

スティックースリップ現象では、速度が大きくなると付着の時間が短くなる結果、静止摩擦力Fsは低下します。その結果、点 b の高さは次第に低下していきます。そのためずれの変位量はxrは小さくなります。

スティックースリップ現象は、金属では起こりやすいが、PTFE(テフロン) などの樹脂では起こりにくいです。

 

 

3. スティックスリップの事例と対策

(1)油圧シリンダ

 

 

未完  2022/06/05

 

良かったら、こちらも読んでください。

 

 

 

 

参考文献

トライボロジー入門  岡本純三他  幸書房

スティック・スリップ現象に関する実験的および解析的研究と地震学・地震工学的考察  東海大学紀要海洋学部「海―自然と文化」第7巻第3号(2009)

 

引用図表

図2.7.1 スティックスリップ現象のモデル   スティック・スリップ現象に関する実験的および解析的研究と地震学・地震工学的考察

図2.7.2スティックスリップ現象発生時の摩擦振動   参考:スティック・スリップ現象に関する実験的および解析的研究と地震学・地震工学的考察

 

 

ORG:2022/06/05