5.4 潤滑油の劣化

5.4 潤滑油の劣化(Degradation of lubricating oil)

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潤滑油は、機械の血液にたとえられます。機械を円滑に動かす上でなくてはならないものです。潤滑油の役目は機械の内部を血液のようにめぐって、摺動面の摩擦や摩耗を低減し、発熱部から熱を奪って冷却する役割をします。さらに、摺動部などで発生した摩耗粉などの汚染物質(コンタミナント)を排出する働きもしています。

 

1. 潤滑油の劣化要因

 

潤滑油は、使用環境に置くと、時間ととともに酸化や重合などの化学反応を起こして変質、劣化します。化学反応ですので、温度が高いほど加速度的に反応が進みます。ここで劣化とは、潤滑油が初期の状態の時に有している機能が、減少・消失していく状態をいいます。

 

例えば、粘度が低下すると摺動面で油膜の形成が不十分になり、固体接触の危険性が増して摩耗が増大します。

 

図5.4.1に、潤滑油の劣化に影響を与える要因を示します。劣化については、大きく2つの形態があります。

図5.4.1潤滑油の劣化に影響を与える要因

一つ目は、潤滑油自身の化学的変化によるものです。潤滑油、特に鉱物油の主要な成分の炭化水素の酸化による劣化です。炭化水素の酸化による劣化は、フリーラジカル連鎖反応になります。フリーラジカル連鎖反応は、いったん反応が始まると、非酸化物RHと酸素O2とが存在する間は連鎖反応が進みます。この反応は、重縮合を繰り返すことによりカルボン酸やエステルを主な成分とする高分子量物質変化します。このようにして生成した酸化物が、潤滑油中に蓄積することにより、粘度や全酸価、不溶解分増加など鉱物油の性状が変化します。例えば、全酸価はその値が大きくなるほど、潤滑油中に酸性物質が多く生成されていることを示し、酸性物質による潤滑油の劣化程度が判断できます。 酸化による変質は潤滑油に不溶の高分子化した酸化生成物を生成します。この酸化生成物は、粘着性が強く、バルブを固着させたり、熱交換器の管路内面に付着して熱伝導率の低下などの不具合を生じます。 

もう一つは、コンタミナント(水分や、塵埃、摩耗粉など)の混入による外的要因です。水分の混入は、潤滑油を乳化させたり、摺動部や配管の発錆の原因となります。また、潤滑油の酸化を促進させ、潤滑不良の原因となります。塵埃や摩耗粉は、一般に硬質ですので、アブレシッブ粒子として、摺動面の摩耗を引き起こします。またこの摩耗により新たなアブレッシブ粒子を生成して、摩耗を加速させます。

この他にも、いろいろな要因が影響して、潤滑油の劣化を促進します。

 

2. 潤滑油劣化の判定

潤滑油は、さまざまな使用条件で使用されるので、正しくは使用環境と潤滑油の継時変化とを観察しながら使用者が最適な劣化判定基準を持つ必要があります。

ここでは、一般的な劣化の目安をその要因ごとに記述します。

(1)動粘度

使用中に10%以上の変化があった場合、粘度の異なる油の混入や、劣化の可能性があります。原因を追究して、不明であれば更油を前提に検討すべきです。

(2)汚染度

微粒夾雑物は、摩耗を増加させ、バルブの閉塞や固着を招きます。機械に種別によってはメーカの指示があります。例えば油圧機械はクリアランスが小さい個所が多いので汚染度には敏感です。汚染度の測定は、カウント法や重量法がISOやJISに規格化されています。一般的に示されている管理数値を超えるようであれば更油が必要です。

(3)水分

潤滑油中の水分は、錆の発生をまねき、潤滑性能や機器の寿命低下を招きます。常時稼働している機械では、0.1%までは許容されますが、停止期間の長い機械は0.05%以下で管理しなければなりません。

(4)全酸価

潤滑油の劣化も目安によく使われます。全酸価があるレベル以上になると劣化が急激に進行します。使用油の全酸価は、著しい劣化が起きる前にあるレベル以下で管理しなければなりません。ただし、添加剤の種類や量による新油の全酸価値は、油種ごとに基準が異なります。

 

 

 

 

参考文献
トライボロジー入門    岡本純三 他   幸書房
潤滑油の劣化診断・検査技術   本田知己   精密工学会誌 Vol.75 No.3 2009
油圧作動油や⼯業⽤汎⽤潤滑油の劣化判定基準 – (有)愛媛⼯潤HP
潤滑油・作動油の汚染劣化診断と対策 | ジュンツウネット21  https://www.juntsu.co.jp/tribology-doc/lubcontami-analysis.php

 

引用図表
図5.4.1潤滑油の劣化に影響を与える要因  潤滑油の劣化診断・検査技術より

 

ORG:2018/7/15