6.1.2 グリース潤滑の特徴

6.1.2 グリース潤滑の特徴(Feature of grease lubrication)

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グリースによる潤滑の特徴を、主として潤滑油による潤滑と比較します。

1.グリース潤滑の長所

(1)飛散や滴下が少ない。
グリースは、半固形状なので、油潤滑の場合のように飛散したり滴下したりしないので、機械や製品を汚損する場合が少ない。

(2)給油機構が簡単である。
油潤滑の場合、油だめなどのスペースが必要となり、液体のためシールを完全に実施しなければなりません。一方、グリース潤滑の場合は、それ自体にシール性があるので軸受箱のシールが簡単になります。

(3)油潤滑と比較して、給油回数、手間が少ない。
油潤滑の場合と比較して、グリース潤滑の場合、給油回数も手間も減らせることが出来ます。例えば、シールドベアリングの場合、機械寿命まで無給油での運転が可能です。

(4)異物を防ぐシール効果がある。
油潤滑の場合、例えば転がり軸受の潤滑系にコンタミナントが混入した場合、撹拌/移動により潤滑面にコンタミナントが運ばれて、転動面を傷つけて、ベアリングの破損につながる場合がありますが、グリース潤滑の場合は、グリースが半固体で、ベアリングの表面を覆っているので、コンタミナントがグリースに付着して移動しにくくなります。このようにグリース潤滑には、シール効果が認められます。

(5)多少の水分の存在下でも使用が可能である。
ほとんどのグリースは、少々の水が混入しても、潤滑性を低下させること無く運転が可能です。この性質は、錆を発生しやすい鉄鋼材料では長所です。
但し、一般的に水が混入したグリースは、軟化する傾向がありますので、可能な限りシールを完全にして、水の侵入がないようにすべきです。

(6)使用可能温度範囲が広い。
グリースを適切に選定すれば、使用温度範囲を広くとることが出来ます。油潤滑の場合は冷却や場合によっては加熱により、油温が適正な範囲になるように付加装置を必要とする場合があります。

(7)長期間の保存が可能である。
長期間停止している機械や潤滑部でも、油膜が保持されているので、錆や腐食から保護する効果があります。油の場合長期間停止すると、油だまり部を除いて重力により材料表面に留まることが出来ません。

 

2.グリース潤滑の短所

(1)給脂、グリース交換、洗浄などの取扱いがやや困難である。
グリースの給脂は、グリースガンやグリースカップ、手詰などで行います。何れも油潤滑の場合の給油と比較すると工数がかかります。また、手差しでの給脂は、洗浄したり、乾燥したりする必要があり手間がかかります。

(2)ゴミや水などが混入した場合、除去が困難である。
油潤滑の場合は、給油系内に設置したフィルターによるろ過が可能ですが、グリースの場合は異物が混入した場合は、原則廃棄するしかありません。

(3)冷却効果に乏しく、撹拌抵抗による熱も一般に大きい。
油潤滑の場合は、油の流動性が良好で、潤滑部で発生した熱を持ち去る効果がありますが、グリース潤滑の場合は、グリースが流動性に乏しく、この効果を期待できません。
また、グリースは半固体ですので、潤滑部内で撹拌されて、内部抵抗による発熱を考慮する必要があります。

(4)超高速回転には向かない。
超高速回転の場合、一般に潤滑部は大きく発熱するが、グリ-ス潤滑の場合は放熱が難しいです。

 

3.グリース潤滑と油潤滑との比較

1.,2.項で、既に示したが、グリース潤滑と油潤滑との得失について、転がり軸受の潤滑の場合について比較表の形で示します。

表 転がり軸受におけるグリース潤滑と油潤滑との得失

 

 

 

参考文献
メインテナンス グリース潤滑技術百科  1981年10月
共同油脂(株)様HP  https://www.kyodoyushi.co.jp/knowledge/grease/about/

 

引用図表
表 転がり軸受におけるグリース潤滑と油潤滑との得失 メインテナンス’81/10,共同油脂HP

 

ORG:2019/3/28