8.1 ジャーナル軸受の圧力分布
Contents
8.1 ジャーナル軸受の圧力分布(Pressure distribution of journal bearing)
スポンサーリンク
ジャーナル軸受とは
滑り軸受けの中で比較的よく使用される円筒形の滑り軸受をジャーナル軸受(journal bearing)と呼びます。
軸と軸受には隙間(クリアランス;clearance)があり、停止中は軸は軸受の下部で接しています(図8.1.1(a))が、軸が回転し始めると、潤滑剤が軸につれて回転し始め、軸の下部に巻き込まれます。潤滑剤がこの狭い隙間に巻き込まれることによるくさび作用によって、軸は上方に持ち上げられて完全な潤滑状態(流体潤滑状態)(図8.1.1(b))が得られます。
図8.1.1 ジャーナル軸受の停止中/運転中の挙動(a:停止中,b:運転中)
これは、水上を航行するモータボートの速度が増加すれば、ボートのへさきが持ち上がって、更に船体も浮き上がる状態に似ています(図8.1.2)。
図8.1.2 高速航行中のモータボート
本項では、ジャーナル軸受の圧力分布を、レイノルズの基礎方程式を用いて求めます。
1.軸受寸法の仮定
本項で検討する、ジャーナル軸受の断面形状を図8.1.3 に示します。軸受は無限に長いものとして、二次元問題として取扱います。
図8.1.3 ジャーナル軸受の断面
軸の直径をD (半径 r )とし、軸回転数をN (sec-1)とすると、軸の周速度はπDN となります。
また、軸にはラジアル荷重W が作用しており、軸の中心O1 は、軸受の中心O2 に対して、偏心量 e だけ偏心して回転するものとします。なお、軸と軸受とが同心になっているときの半径方向の隙間をc とします。
潤滑剤は、軸受が荷重を支えない部位から供給されるものとすると、最大隙間の位置(φ=0 とする)から最小隙間(φ=π )までの間にくさび油膜が形成されます。
ジャーナル軸受は、荷重W と発生圧力の総和とが釣り合った時に、図8.1.3 に示すように、荷重方向に対する偏心の角度φ0(偏心角)の位置で安定して回転します。
2.レイノルズの基礎方程式の適用
レイノルズの基礎方程式
をジャーナル軸受に適用するには、油膜厚さh をφ の関数で表わす必要があります。図8.1.3 より、h は近似的に
と表すことが出来ます。
更に、
とすると、このεは偏心率よばれ、軸受の性能に大きい影響を与える値です。偏心率を用いると、(式8.1.2)は、
このジャーナル軸受を直線に展開します(図8.1.4)。この状態で,)x 方向に圧力分布を求めます。ここで、 の関係を用いると、
であるから
図8.1.4 ジャーナル軸受の油膜厚さ
7.3項に示す
は次式のように書き換えられます。
これに、(式8.1.4)の関係を代入して、φ について積分すると、圧力分布p は次式のようになります。
C1 は積分定数です。
ゾンマーフェルト(A. Sommerfeld)は、(式8.1.7)の積分を行うために、
のような変数変換を行うと、圧力分布は次式のようになります。
本式に、ゾンマーフェルトの境界条件として、φ=0 及びφ=2π(θ=0 及び θ=2π に相当します)における圧力をpm とすると、積分定数は C1=p0 となります。
(式8.1.8)で、θ=0 とθ=2π は同じ位置であるので、p が等しいとすると、最大圧力発生位置であるφm での油膜厚さhm は、
になります。
さらに、θ をφ に戻すと、圧力分布p はφ の関数として表されます。
グラフ化すると、図8.1.5 に示す圧力分布が得られます。
圧力分布はφ=π の点に関して点対称になります。図で斜線を施した部分は負圧になります。
図8.1.5 ジャーナル軸受の圧力分布
また最小皮膜厚さhmin は、(式8.1.4)でφ=π の位置になるので
になります。
追記
本項について、申し訳ないですが、(式8.1.8)の導出ができませんでした。後日解明して追記するか、改めて書き直したいと考えています。
参考文献
トライボロジー入門 岡本純三他 幸書房
機械設計 西山卯二郎他 大阪工業調査会
引用図表
図8.1.1 ジャーナル軸受の停止中/運転中の挙動(a:停止中,b:運転中) 機械設計改
図8.1.2 高速航行中のモータボート
図8.1.3 ジャーナル軸受の断面 トライボロジー入門
図8.1.4 ジャーナル軸受の油膜厚さ トライボロジー入門
図8.1.5 ジャーナル軸受の圧力分布 トライボロジー入門
ORG:2019/7/22