9.1 すべり運動と転がり運動

9.1 すべり運動と転がり運動(sliding movement and rolling movement)
スポンサーリンク
1.すべり運動と転がり運動
斜面に置かれた物体は、斜面と物体との間のすべり摩擦の大小により、すべり運動するか頃外運動するかが決まります。
図9.1.1 すべり運動と転がり運動
例えば、図9.1.1(a),(b) に示す、直方体が斜面に置かれた状態を考えます。(a)のように置かれた場合は通常は直方体はすべり運動で斜面を落下します。(b)のように置かれた場合は通常はすべらずに倒れた後、すべり運動により斜面を落下します。
しかし、(b)の場合でも、直方体と斜面との間のすべり摩擦が小さければ、倒れずにそのままの姿勢で斜面を滑り落ちる場合もあります。
もう少し、詳しく考えてみましょう。図9.1.1(c),(d),(e)に例を示します。(c)のような正方形、(d)のような多角形の物体では、倒れて転がり運動をするか、倒れずに滑り運動をするかは、斜面の傾きやすべり摩擦の程度により変わります。
一方、(e)のような円筒形でも、物体と斜面とのすべり摩擦が小さければ、転がり運動ではなく、すべり運動する場合も考えられます。
これらからわかるように、「転がる」という現象は、物体が「倒れる」ことが連続的に発生していることになります。ここで「倒れる」という動作は、すべりに対する抵抗、つまりすべり摩擦が存在していることになります。
次項で、すべり運動をしたり転がり運動をしたりする条件について検討します。
2.すべり運動と転がり運動とを決める条件
図9.1.2 に示すように、重さPの物体が平面に置かれた状態を考えます。
物体には。着力点\( B \)に力\( F \)は付加されています。また、物体の重心位置を\( A \)として、力\( P \) による摩擦力\( F_{ s } \)は、点\( C \)に集中して作用すると考えます。また、\( CA=a \)、\( CB=b \)とします。
図9.1.2 物体に働く力と運動との関係
この状態で、点\( C \)まわりのモーメントの大きさを考えます。
力\( F \)による右回りのモーメントは、
\( M_{ B } = Fb \sin \theta_{ 2 } \)
重さ\( P \)による左回りのモーメントは、
\( M_{ A } = Fa \sin \theta_{ 1 } \)
\( M_{ A } \)と\( M_{ B } \)との大小関係により、この物体が点\( C \)のまわりに開店するか静止するかが決まります。また、力\( F \)とすべり摩擦力\( F_{ s } \)との大小関係により、物体がすべるか静止しているかが決まります。すなわち、次に示す4種類のパターンがあります。
(1)\( F \lt F_{ s } \)(すべらない)、\( M_{ A } \gt M_{ B } \)(転がらない)
物体は静止したままです。
(2)\( F \gt F_{ s } \)(すべる)、\( M_{ A } \gt M_{ B } \)(転がらない)
物体はすべり運動します。
(3)\( F \lt F_{ s } \)(すべらない)、\( M_{ A } \lt M_{ B } \)(転がる)
物体は転がり運動をします。
(4)\( F \gt F_{ s } \)(すべる)、\( M_{ A } \lt M_{ B } \)(転がる)
物体は、最初は慣性のためにすべり運動します。次第に転がり運動が増加して、最後には転がり運動だけになります。それらの中間領域では、すべり運動を伴う転がり運動をします(転がりすべり)。(図9.1.3)
図9.1.3 すべり→転がりの条件 トライボロジー入門
まとめ
・「転がる」という現象は、物体が「倒れる」ことが連続的に発生している状態です。
「倒れる」という動作は、すべり摩擦が存在していることを示します。
・すべり運動家転がり運動家を決めるのは、
/ 外部より付加される力と物体の重さにより発生する摩擦力の大小
/ 外部より付加される力による回転モーメントと物体の重さにより発生する摩擦力によるモーメントの大小
これらの組み合わせにより、4種類の場合に分類されます。
この会社、あっているかな。と思ったら、
転職で、サイトに掲載されていない【非公開求人】を活用する方法とは?
参考文献
トライボロジー入門 岡本純三他 幸書房
引用図表
図9.1.1 すべり運動と転がり運動 トライボロジー入門に追加
図9.1.2 物体に働く力と運動との関係 トライボロジー入門
図9.1.3 すべり→転がりの条件 トライボロジー入門
ORG:2021/08/05
注記(2021/08/05):
本コンテンツは、次のコンテンツへのつなぎで記述しました。式の意味は分かるのですが、すべて明快に理解したとは言えません(申し訳ありません。)。
後日、海外のトライボロジー関連の文献を探索して、もう少し理解が深まったら書き直します。ご容赦ください。