ウェーバー・フェヒナー(Weber-Fechner)の法則

ウェーバー・フェヒナーの法則(Weber-Fechner law)

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1.  はじめに

ウェーバー・フェヒナーの法則は、感覚と刺激の関係を定量的に表す精神物理学の基本法則の一つです。この法則は、人間の感覚量は、対数的に刺激量に比例するということを示しています。本稿では、法則の成り立ちと一般的な内容の説明の後、聴覚に適用した場合の事例を示します。

 

 

2. ウェーバー・フェヒナーの法則

2.1 成り立ち

ウェーバー・フェヒナーの法則(Weber-Fechner law)とは、刺激の強さと感覚の⼤きさの関係を説明したものです。ウェーバー・フェヒナーの法則は、⼼理物理学(精神物理学)の分野で関連する2つの仮説で、それぞれウェーバーの法則とフェヒナーの法則として知られています。どちらの法則も⼈間の知覚に関するもので、より具体的には物理的な刺激の実際の変化と知覚される変化との関係を表しています。この法則は、ウェーバーが実験的に見出した物理的刺激の強さに関する法則をもとに、弟子であるフェフィナーが、物理的刺激に対する感覚量の概念を考えて定式化しました。これをフェフィナーの法則または、ウェーバーの法則から導かれたので、ウェーバー・フェフィナーの法則と呼びます。この法則は、視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚などすべての感覚に与える中程度の刺激に関して当てはまります。

 

2.2 ウェビナーの法則

ドイツの生理学者・解剖学者である、エルンスト・ウェーバー(Ernst Heinrich Weber:1795 -1878)が1834年に重さの感覚について以下のような実験を行いました。

・手のひらに100gの分銅を載せます。さらに1gの分銅を一つずつ載せていき、110gになったときの重さの感じ方の変化を憶えておきます。
・次に、最初に1000gの分銅を手のひらに載せておき、同じように1gの分銅を一つずつ載せて、合計10gを追加して1010gになったときの重さの感じ方の変化は、100gから110gに変化したときの重さの感じ方の変化は感じず、さらに90g載せて、1100gになったときに、100gから110gへの変化と同じような重さの感じ方の変化を感じたとの結果を得ました。

 

これより、ウェーバーは、「刺激の弁別閾(difference threshold:丁度可知再;気づくことができる最少の刺激差)は、規準となる基礎刺激の強度に比例する。」ことを見出しました。

はじめに加えられた基礎刺激量の強度を\( R \)とし、これに対応する識別閾値を\( \Delta R \)とすると、\( R \)の値にかかわらず、

\( \displaystyle\frac{ \Delta R }{ R } = constant \)

が成立します。この一定の比の値をウェーバー比といいます。

ウェーバーの法則は、絶対検出閾値付近およびそれ以下の低強度では成立しません。また多くの場合、高強度でも成立しません。

 

2.3 フェフィナーの法則(ウェーバー・フェフィナーの法則)

ウェーバーの弟子で心理学者・物理学者である、グスタフ・テオドール・フェフィナー(Gustav Theodor Fechner:1801 -1887)は、ウェーバーの法則から、「人間の感覚量は刺激量の対数に比例する」と主張し、以下に示す対数法則を導き出しました(1860年)。

\( P = k \ln \left( \displaystyle\frac{ I }{ I_{ 0 } } \right) \)

ここで、
\( P \):感覚量:人が感じる感覚の強さ
\( k \):定数
\( I \):刺激量:感覚器官に作用する物理的なエネルギー
\( I_{ 0 } \):感覚量が0になる刺激量

図1 ウェーバー・フェフィナーの法則   ORIGINAL

 

3. 聴覚への刺激

一般的には、“人間の感覚量は刺激量の対数に比例する”であらわされます。
聴覚について考えると以下のようになります。

人間の聴覚は、五感(視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚)と呼ばれる感覚の内の一つです。聴覚は耳から鼓膜、耳小骨、蝸牛を通して脳の神経に伝達する音を感じる能力です。

図2 耳の構造   出典:Wikimedia(画像要素追加)

 

人間が耳から感じる音の大きさは、感覚量としてあらわされます。私たちが「大きい音」、「小さい音」として表現するのは、主観的な感覚上の音の大小をいいます。

それに対して、耳に到達する音の圧力は、刺激の物理量としてあらわされます。
この刺激の物理量と、先に述べた感覚量とは正比例の関係ではなく、ウェーバー・フェフィナーの法則が成立します。

例えば、静かな電車内でおば様たちが大きい声で話されているのを聞くとうるさく感じてイライラしますが、車がビュンビュン走っている道路のそばで、大声でしゃべっていてもあまり気になりませんよね。

もう少し、本サイトにふさわしい書き方をすると、
スピーカーの出力が、1Wから2Wへ”1W”大きくなったときと、10Wから11Wに同じく”1W”大きくなったときとを比較すると、1Wから2Wへ大きくなったときは、人間の耳には音が大きくなったと感じることができます。一方、10Wから11Wに同じく”1W”大きくなったときは、音の変化を感じることは難しいのです。
つまり、1Wから2Wへの変化は「2倍」ですが、10Wから11Wへの変化は「1.1倍」になり、刺激量が大きくなるにつ入れて、感覚的には鈍感になるということを示しています。
このように音はこの法則に基づいて感覚量を定めることができます。

 

ウェーバー・フェヒナーの法則は、人間の五感全般に当てはまります。
例えばですが、おならは最初は臭いけど、続けて出ていたら、だんだん感覚的に鈍くなってきますよね(ちょっと違うか?)。

 

 

参考文献
https://en.wikipedia.org/wiki/Weber%E2%80%93Fechner_law   Wikipedia 2024/02/14閲覧

引用図表
図1 ウェーバー・フェフィナーの法則   ORIGINAL
図2 耳の構造   出典:Wikimedia(画像要素追加)

 

REV:2024/02/14
REV.:2019/07/02
ORG.:2015/12/12