工程能力指数_工程性能指数

工程能力指数( Cp,Cpk)と工程性能指数( Pp,Ppk

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1.はじめに

本コンテンツでは、IATF16949(自動車製造業における国際的な品質マネジメントシステム規格)に基づいて、工程能力指数と工程性能指数について記述します。本稿の改定前の工程能力指数についての記述は、本稿の工程性能指数の定義と等しくなります。ただし自動車会社でも、工程能力指数と工程性能指数を同じ定義で適用するところもあるようです。

2.工程能力とは 

ある工程が管理状態にある場合に、その工程が持つ品質達成能力の程度を”工程能力” といいます。
ここで、工程が管理状態にあるというのは、考える特性の測定結果が正規分布をしているとの仮定を満足する状態をいいます。工程能力は、製品の製造、特に量産品の製造の際に欠かせない概念です。

我々が、製品を製造する場合に、決められた精度で製作することが求められます。特に量産品では組立をする際に、組立てるために集めた部品のバラツキが大きければ、組立てられない場合や、ガタが大きすぎて性能が出ない場合など大きな問題が発生します。そこで製作された製品のバラツキを経済的に成り立つ範囲でですが、極限まで押さえて製作するために、その製作工程での製品の出来栄え評価を行うために考えられたのが、工程能力です。この工程能力を具体的な数値として表して工程能力を客観的に把握できるようにしたものが工程能力指数です。

通常、工程能力を考えるためには、工程が統計的に管理された状態であることが前提ですが、製品を製作する場合、設備の立上げ時や更新時、作業者が変わった場合など、工程に何らかの変化が生じると必ずしも統計的に管理された状態になりません。このように、統計的管理状態にあることが必ずしも証明されていない工程と、統計的管理状態にある工程とを分けて考えるのが、IATF16949に示されるコアツールの一つであるSPCです。

3.工程性能指数(Process Performance Index : Pp,Ppk)と工程能力指数(Process Capability Index : Cp,Cpk)

3.1 工程の安定性(Process stability)

工程の状態を指標の形で表すためには、その工程が統計的に安定している必要があります。測定データの群内のばらつきや群ごとの変動など工程が安定しているかどうかの判断は、\(\bar{x}-R\)管理図などを用いて行われます。工程が安定していないプロセスで工程の能力を測定してもその時点(群)での能力になり、変動が生じる可能性が大きいです。群内のばらつきや群ごとの変動のどちらも評価するためには、工程能力指数及び工程性能指数の両方について観測する必要があります。

3.2 工程性能指数と工程能力指数の定義

工程性能指数も工程能力指数も、工程能力を数値で表したものです。いずれも”考える特性を、その規格の上下限の幅を標準偏差(standard deviation)の6倍の値で除した値(両側公差の場合)”で定義されます。
これらの指数を示す前提は、工程が管理状態にある、すなわち特性の測定結果が正規分布していることが前提です。
ここで、”特性” というのは、機械系の部品では長さや重さなどを、例えば電気関係であれば抵抗値などを指します。
また、製品をつくる際に、それぞれの特性に対して、これくらいの範囲に収まるように作ろうとします。この範囲を工業的には”規格”あるいは”公差”とよびます。これは設計者が数値を決めたり、標準(JIS規格やISO規格)によって決まったりしています。

工程性能指数と工程能力指数とでは、標準偏差の定義が異なります。工程性能指数は対象となる特性が正規分布はしているが群内のばらつきや群間の変動が不明な状態も考慮した数学的に定義された標準偏差を用います。一方、工程能力指数では、群間の変動があまり無い状態、つまり工程が安定している状態での郡内のばらつきに注目したシューハートの管理図に示される標準偏差を用います。

工程性能指数と工程能力指数の計算式を、それぞれ下記に示します。上に述べたように工程性能指数は、工程が必ずしも統計的管理状態にあると確認されていないとして、観測されたデータすべてに対する変動を求めるため標準偏差 \(\sigma\) から推定されます。一方、工程能力指数は、工程が統計的管理状態にあると確認された場合に、管理図から \(\bar{R}/d_{2}\) または \(\bar{s}/c_{4}\) を用いて推定されます。
(自動車関係以外の一般的な工程能力の算出には、工程性能指数の定義が工程能力指数として使われることが多いです。)

[工程性能指数]

\(P_{p}=\large{\frac{(USL-LSL)}{6\sigma_{p}}}\)   (式01)

\(P_{pk}=\min{\large{( \frac{(USL-\bar{\bar{x}})}{3\sigma_{p}} , \frac{(\bar{\bar{x}}-LSL)}{3\sigma_{p}})}}\)  (式02)

\(\sigma_{p}=\large{\sqrt{\frac{\Sigma(x_{i}-\bar{\bar{x}})^2}{N-1}}}\) (式03)

[工程能力指数]

\(C_{p}=\large{\frac{(USL-LSL)}{6\sigma_{c}}}\)   (式04)

\(C_{pk}=\min{\large{( \frac{(USL-\bar{\bar{x}})}{3\sigma_{c}} , \frac{(\bar{\bar{x}}-LSL)}{3\sigma_{c}})}}\) (式05)

\(\sigma_{c}=\large{\frac{\bar{R}}{d_{2}}}\) (式06)

 

3.3 工程性能指数と工程能力指数の計算例

表1に、毎日定時刻に5回測定したデータを30日分示します。表1(a)の工程1と表1(b)の工程2とは個々のデータは同じですが、並べ替えています。工程1はばらつきは大きいですが変動は比較的小さい場合、工程2はばらつきは小さいが変動が大きい場合を想定しています。

これらの値に基づいて、工程性能指数、工程能力指数について計算した結果は、表2に示します。ここで規格は、USL=130、LSL=70 としています。

基本的に、工程能力はPp、Cpではなくて、Ppk、Cpkで検討されます。これは規格に対する平均値の偏りを含めた工程の評価は、Ppk、Cpkでないと正確な値にはならないからです。

Ppkは、群内飲むだけではなく群と群とのばらつきも考慮するのに比べて、Cpkは群内のばらつきにのみ注目する形になります。工程1(表1(a))の場合は、変動(群間のばらつき)が比較的小さいので、PpkとCpkとはほぼ同じ値となります。一方工程2(表1(b))の場合は、(郡内の)ばらつきは比較的小さいですが、変動は工程1(a)と比較すると大きいので、CpkのほうがPpkに比べて大きい値をとり、Cpkで評価すると工程能力を過大に見積もる可能性があります。

data of process 1

図1 (a) 工程1

data of process 2

図1 (b) 工程2

Pp and Cp

図2 工程性能指数と工程能力指数

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4.工程性能指数と工程能力指数の導出

3.2項で述べたように、工程性能指数と工程能力指数とは、式の形は同じで標準偏差の計算式についてのみ異なります。工程性能指数では統計上の標準偏差s(σp)を用います。工程能力指数は、シューハート管理図から郡内のばらつきを係数で除した値を標準偏差σcとして用います。本コンテンツでは、IATF16949に基づき記述しているので、 工程性能指数により工程能力の定義等を示します。

4.1 工程性能指数/工程能力指数の定義

“工程性能指数/工程能力指数”は、工程能力を数値で表したもので、”考える特性を、その規格の上下限の幅を標準偏差の6倍で除した値(両側公差の場合)” で定義されます。工程能力指数も標準偏差の定義が異なるだけで定義としては同じです。工程性能指数は群内のばらつきも群間のばらつきも考慮して標準偏差を求め、工程能力指数は群間のばらつきが無い安定した状態を前提としています。
次に、標準偏差を使用することは、その特性値が正規分布しているとの前提になります。

以下の説明は工程性能数により行いますが、工程能力指数でも考え方は同じです。
工程性能指数は、標準偏差は母集団から取った標本から統計的に求めた値になります。すなわち、

\(s=\sigma_{p}=\large{\sqrt{\frac{\Sigma(x_{i}-\bar{\bar{x}})^2}{N-1}}}\)    (式06)

これにより、工程性能指数は、規格が上下幅を持っている場合は、Ppと表わします。いま規格の上限値をUSL、下限値をLSLとすると、

\(P_{p}=\large{\frac{(USL-LSL)}{6\sigma_{p}}}\)  (式07) 

となります。

4.2 工程性能指数(Pp)の意味

ある製品を製作する場合、考える対象となる特性のばらつきが、平均値\(\bar{\bar{x}}\)、標準偏差\(s(\sigma_{p})\) の正規分布に従う場合に、規格幅が 6σp になる場合を考えます。
このときのCp値は1(=6σp/6σp)になります。
規格中心と平均値とが同じ場合に、下図の様になります。


正規分布確率密度曲線においてx軸とで囲まれる面積がその範囲の確率になりますので、この図で6σpの範囲から 外れた両端の面積が、規格外となる確率となります。
片側3σpより外れた部分の面積は、おおよそ0.0135になります。上限側、下限側のどちらも同じ面積ですので、工程能力指数Ppが1の場合は6σpから外れる確率は2倍の、約0.27%になります。俗に”千三つ”といわれる状態です。

4.3 工程性能指数はどのように使えばよいか

Pp値の値を使う上で、考慮しておかなければならないのが、その定義から前提条件が”規格の中心は平均値と同じとする”ところです。実際には、規格の中心と平均値とが、同じでない場合がほとんどです。
では、Pp値は何の評価に使用するかといえば、その工程の実力が規格幅に対してどの程度のものかを知る目安になります。
例えば、Pp値が1の工程は、平均値が規格中心にあるという理想の状態でも、0.27%は規格外にあるということになります。
規格に対する平均値の偏りを含めた工程の評価が後述するPpkです。

4.4 片側規格に対する工程能力(Ppu,Ppl

規格には、4.2項に示す上限規格と下限規格とがある両側規格と、~以上、~以下といったような片側規格があります。
片側規格の場合は、下記のように定義されます。
  
\(P_{pu}=\large{\frac{(USL-\bar{\bar{x}})}{3\sigma_{p}}}\)  (上側規格) (式08)

 
\(P_{pl}=\large{\frac{(\bar{\bar{x}}-LSL)}{3\sigma_{p}}}\)  (下側規格)  (式09)

 

5. 平均の偏りを考慮した工程性能指数(Ppk

5.1 Ppkの定義

平均値の偏りを考慮して、現在の工程を評価する値として、Ppkがあります。
定義は、下記の2種類あります。
定義1

\(P_{pk}=(1-K)C_{p}\)  (式10)

ここで

\(K=\large{\frac{|(USL+LSL)/2-\bar{\bar{x}}|}{(USL-LSL)/2}}\)  (式11)

定義2

\(P_{pk}=\min{\large{( \frac{(USL-\bar{\bar{x}})}{3\sigma_{p}} , \frac{(\bar{\bar{x}}-LSL)}{3\sigma_{p}})}}\)  (式12)

これらの定義は、同一の値を取ります。

5.2 Ppkの意味

Ppkの意味について考えてみましょう。
具体的な例として、ある特性が標本平均が\(\bar{\bar{x}}\) 、標本標準偏差\(\sigma_{p}\) の分布を取るとき、規格の下限公差が\(\bar{\bar{x}}-3\sigma_{p}\) 、上限公差が\(\bar{\bar{x}}+4\sigma_{p}\) の場合を考えます。グラフは下記のようになります。

Ppkを計算します。
まず、5.1項の定義1により計算します。

\(K=\large{\frac{|((\bar{\bar{x}}+4\sigma_{p})+(\bar{\bar{x}}-3\sigma_{p}))/2-\bar{\bar{x}}|}{((\bar{\bar{x}}+4\sigma_{p})-(\bar{\bar{x}}-3\sigma_{p}))/2}}\)
\(=\large{\frac{|(\bar{\bar{x}}+\sigma_{p}/2-\bar{\bar{x}}|}{(7\sigma_{p}/2)}}\)
\(=1/7\)

\(P_{p}=\large{\frac{(\bar{\bar{x}}+4\sigma_{p})-(\bar{\bar{x}}-3\sigma_{p})}{6\sigma_{p}}}\)
\(=7/6\)

\(P_{pk}=(1-1/7)\cdot(7/6)\)
\(=(6/7)\cdot(7/6)\)
\(=1\)

定義2より

\(P_{pk}=\min{\large{( \frac{((\bar{\bar{x}}+4\sigma_{p})-\bar{\bar{x}})}{3\sigma_{p}} , \frac{(\bar{\bar{x}}-(\bar{\bar{x}}-3\sigma_{p}))}{3\sigma_{p}})}}\)
\(=\min{( 4/3, 1 )}\)
\(=1\)

この結果より、規格公差により近い方のPpkにより数値が決まることがわかります。

次に、グラフから実際の規格から外れる確率を求めると、下限側 \((\bar{\bar{x}}-3\sigma_{p})\) では、約0.00135になります。一方、上限側 \((\bar{\bar{x}}+4\sigma_{p})\) では、約3.17×10-5となって、全体ではおおよそ0.00138(約0.14%)になります。
仮に、上限規格が \((\bar{\bar{x}}+3\sigma_{p})\) の場合は上限側の規格外発生の確率は約0.00135、上限規格が \((\bar{\bar{x}}+6\sigma_{p})\) の場合9.866×10-10 となりますので、Ppkの値が1の場合でも、規格外発生の確率は下限規格が \((\bar{\bar{x}}-3\sigma_{p})\) とすると、上限規格が \((\bar{\bar{x}}+3\sigma_{p})\) の場合で約0.00270( = 0.00135×2)から、上限規格が \((\bar{\bar{x}}+6\sigma_{p})\) の場合で0.00135…になります。従って、最も最悪に見積もった場合は、Cpと同じ規格外発生の確率になります。

5.3 片側規格の場合のPpk

片側規格の場合のPpkの値は、定義1では、Kが求められないので求められません。定義2では、無い側は無視することにより片側だけを用いて求めます。通常は、定義2により求めます。従って、Ppと同じ値になります。

\(P_{pk}=\large{\frac{(USL-\bar{\bar{x}})}{3\sigma_{p}}  or  \frac{(\bar{\bar{x}}-LSL)}{3\sigma_{p}}}\)

6. 工程性能指数と工程能力指数の使い分け

本コンテンツで示したように、自動車関係のIATFTS16949では、その工程能力を表す指数として「工程能力指数」(Cpk)と「工程性能指数」(Ppk)が利用されます。Cpkとは、安定状態(共通原因のみ)にある製造工程の製品が製品規格を満たす能力を表し、一方Ppkとは、特殊原因も含む全てのばらつきを加味し、読み取った全管理値を用いて数値計算によって標準偏差を求めたもので、製造工程が安定しているかどうかわからない場合、例えば新規生産、工程変更等の場合に利用されます。したがって、品質要求としてはPpk > Cpk としている企業が多いです。例えば、要求値としてPpk > 1.67、Cpk > 1.33 とされることがあります。

ただ、自動車メーカによって、とらえ方が色々あるようで、PpkをCpkと同義で使用されているところもあり注意が必要です。

また、IATF16949に適合が求められる自動車関係製品・部品については両方の指数を意識して考慮する必要(標準偏差の取り扱いについて)がありますが、現在では計算が容易になっており、統計的な標準偏差s(σp)を用いたものを、工程能力指数として問題ないと考えます。

 

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Rewrite: 2020/02/11
Correct: 2020/02/14