工程能力指数(Process Capability Index : Cp,Cpk)

■工程能力指数(Process Capability Index : Cp,Cpk)

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工程性能指数についてもう少し詳しく書いたコンテンツをまとめました。ぜひご覧ください。
 → 工程性能指数と工程能力指数  要改訂(2022/01/02)

工程能力は、製品の製造、特に量産品の製造の際に欠かせない概念です。

我々が、製品を製造する場合に、決められた精度で製作することが求められます。特に量産品では組立をする際に、組立てるために集めた部品のバラツキが大きければ、組立てられない場合や、ガタが大きすぎて性能が出ない場合など大きな問題が発生します。そこで製作された製品のバラツキを経済的に成り立つ範囲でですが、極限まで押さえて製作するために、その製作工程での製品の出来栄え評価を行うために考えられたのが、工程能力です。この工程能力を具体的な数値として表して工程能力を客観的に把握できるようにしたものが工程能力指数です。

工程能力指数には、公差の種類によって2種類の指数が有りますが、考え方は全く同じです。

1. 定義

1.1 工程能力の定義

ある工程が管理状態にある場合に、その工程が持つ品質達成能力の程度を”工程能力” といいます。
ここで、工程が管理状態にあるというのは、考える特性の測定結果が正規分布をしているとの仮定を満足する状態をいいます。

1.2工程能力指数の定義

“工程能力指数”は、工程能力を数値で表したもので、”考える特性を、その規格の上下限の幅を6σで除した値(両側公差の場合)” で定義されます。
工程能力指数を示す前提は、工程が管理状態にある、すなわち特性の測定結果が正規分布していることが前提です。
ここで、”特性” というのは品質特性のことで、例えば機械系の部品では長さや質量などを、電気関係であれば抵抗値などを指します。
また、製品をつくる際に、それぞれの特性に対して、これくらいの範囲に収まるように作ろうとします。この範囲を工業的には”規格”あるいは”公差”とよびます。これは設計者が図面に記述する数値を決めたり、標準(JIS規格やISO規格)で決まったりしています。
次に、σというのは統計学をで出てくる標準偏差(standard deviation)を意味します。標準偏差を使用することは、その特性値が正規分布しているとの前提になります。この標準偏差は母集団から取った標本(不偏標準偏差:\( s \))で考えます。すなわち、

\( s = \displaystyle \sqrt \frac{ n \Sigma x^2 – ( \Sigma x )^2 }{ n(n-1) } \)

これにより、工程能力指数は、規格が上下幅を持っている場合は、Cpと表わします。いま規格の上限値をUSL、下限値をLSLとすると、

\( C_{ p } = \displaystyle\frac{ USL – LSL }{ 6s } \)

となります。

 

2. 工程能力指数

2.1 工程能力指数(Cp)の意味

1.2 工程能力指数の定義の項で示したように、工程能力指数の計算の対象となる特性は、正規分布に従っていることが前提になります。
ある製品を製作する場合、考える対象となる特性のばらつきが、平均値\( \bar{ X } \)、標準偏差\( s \)の正規分布に従う場合に、規格幅が \( 6s \) になる場合を考えます。
このときのCp値は1(\( = 6s/6s \))になります。
規格中心と平均値とが同じ場合に、下図の様になります。

正規分布確率密度曲線においてx軸とで囲まれる面積がその範囲の確率になりますので、この図で\( 6s \)の範囲から 外れた両端の面積が、規格外となる確率となります。
片側\( 3s \)より外れた部分の面積は、おおよそ0.00135になります。上限側、下限側のどちらも同じ面積ですので、工程能力指数Cpが1の場合は\( 6s \)から外れる確率は2倍の、約0.27%になります。俗に”千三つ”といわれる状態です。

2.2 工程能力指数はどのように使えばよいか

Cp値の値を使う上で、考慮しておかなければならないのが、その定義から前提条件が”規格の中心は平均値と同じとする”ところです。実際には、規格の中心と平均値とが、同じでない場合がほとんどです。
では、Cp値は何の評価に使用するかといえば、その工程の実力が規格幅に対してどの程度のものかを知る目安になります。
例えば、Cp値が1の工程は、平均値が規格中心にあるという理想の状態でも、0.27%は規格外にあるということになります。
規格に対する平均値の偏りを含めた工程の評価が後述するCpkです。

2.3 片側規格に対する工程能力(Cp

規格には、1.2項に示す上限規格と下限規格とがある両側規格と、~以上、~以下といったような片側規格があります。
片側規格の場合は、下記のように定義されます。

\( C_{ pU } = \displaystyle\frac{ USL – \bar{ X } }{ 3s } \)    (上側規格)

\( C_{ pU } = \displaystyle\frac{ \bar{ X } – LSL }{ 3s } \)    (下側規格)

 

3. 平均の偏りを考慮した工程能力指数(Cpk

3.1 Cpkの定義

平均値の偏りを考慮して、現在の工程を評価する値として、Cpkがあります。
定義は、下記の2種類あります。
定義1

\( C_{ pk } = ( 1 – K ) C_{ p } \)

ここで

\( K = \displaystyle\frac{ | ( USL + LSL ) / 2 – \bar{ X }| }{ ( USL – LSL ) / 2 } \)

定義2

\( C_{ pk } = \min \displaystyle( \frac{ USL – \bar{ X } }{ 3s } , \frac{ \bar{X } – LSL }{ 3s }) \)

 

これらの定義は、実際は同一の値を取ります。

 

3.2 Cpkの意味

Cpkの意味について考えてみましょう。
具体的な例として、ある特性が標本平均が\( \bar{ X } \)、標本標準偏差が\( s \)の分布を取るとき、規格の下限公差が\( \bar{ X } – 2.5s \)、上限公差が\( \bar{ X } + 3.5s \)の場合を考えます。グラフは下記のようになります。

 

Cpkを計算します。

まず、3.1項の定義1により計算します。

\( K = \displaystyle\frac{ | ( ( \bar{ X } + 3.5s ) + ( \bar{ X } – 2.5s ) ) / 2 – \bar{ X }| }{ ( ( \bar{ X } + 3.5s ) – ( \bar{ X } – 2.5s ) ) / 2  } \) 

 \( = \displaystyle\frac{ | ( \bar{ X } + s/2 ) – \bar{ X } | }{ 6s/2 } \)

 \( = 1/6 \)

\( C_{ p } \) の値は

\( C_{ p } =\displaystyle\frac{ ( \bar{ X } + 3.5s ) – ( \bar{ X } – 2.5s ) ) }{ 6s } \)

 \( = \displaystyle\frac{ 6s }{ 6s } \)

 \( = 1 \)

\( C_{ pk } = ( 1 – 1/6 ) \times 1 \)

\( = \displaystyle\frac{ 5 }{ 6 } \times 1 \)

\( = \displaystyle\frac{ 5 }{ 6 } \)

 

定義2より

\( C_{ pk } = \min \displaystyle( \frac{ ( \bar{ X } + 3.5s ) – \bar{ X } }{ 3s } , \frac{ \bar{X } – ( \bar{ X } – 2.5s ) }{ 3s }) \)

\( = \min( 3.5/3 , 2.5/3 ) \)

\( = \displaystyle\frac{ 2.5 }{ 3 }  \)

\( = \displaystyle\frac{ 5 }{ 6 }  \)

 

次に、グラフから実際の規格から外れる確率を求めると、
下限側\( ( \bar{ X } – 2.5s ) \)では、約0.0062097になります。一方、上限側\( ( \bar{ X } + 3.5s ) \)では、約\( 2.3263 \times 10^{-4} \)となって、全体ではおおよそ0.0064423(約0.64%)になります。

 

3.3 片側規格のCpk

Cpkの値は、定義1では、\( K \)が求められないので求められません。定義2では、無い側は無視することにより片側だけを用いて求めます。通常は、定義2により求めます。従って、Cpと同じ値になります。

\( C_{ pk } = \displaystyle\frac{ USL – \bar{ X } }{ 3s }   or  \displaystyle\frac{ \bar{ X } – LSL }{ 3s } \)

 

4. 工程能力の計算にあたっての注意点

工程能力の計算は、サンプルが正規分布をしている前提で行われます。寸法公差の場合はほとんど問題が無いと考えられますが、幾何公差の場合、サンプルの下限は0になりますので、正規分布とみなすことは難しいと考えらえます。

管理人は、現時点でこれをどのようにすべきかを、具体的に説明することができません。もう少し、御時間を頂けます様お願い致します。
現時点で考えていることは、幾何公差のサンプルデータは対数正規分布になると仮定することが出来るのではと考えています。

 

5. 工程性能指数(PpPpk

自動車関係のISOのセクター規格であるISO/TS16949では、その工程能力を表す指数として「工程能力指数」(Cpk)と「工程性能指数」(Ppk)が利用されます。Cpkとは、安定状態(共通原因のみ)にある製造工程の製品が製品規格を満たす能力を表し、一方Ppkとは、特殊原因も含む全てのばらつきを加味し、読み取った全管理値を用いて数値計算によって標準偏差を求めたもので、製造工程が安定しているかどうかわからない場合に利用されます。
ただ、自動車メーカによって、とらえ方が色々あるようで、PpkをCpkと同義で使用されているところもあり注意が必要です。これについては別項目で取り上げる予定です。

工程性能指数についてもう少し詳しく書いたコンテンツはこちらです。ぜひご覧ください。
 → 工程性能指数と工程能力指数

QC検定向けのコンテンツですが、御参考になれば…

 

 

 

 

Modify:2122/01/02;計算例修正、注意事項追記
Correct:2021/12/26 :不偏標準偏差記号修正他
Correct:2017/3/5