ブルドン管式圧力計

ブルドン管式圧力計(Bourdon-tube type pressure gauge)

 

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1. ブルドン管式圧力計の基本原理

ブルドン管式圧力計は、圧力を測定するための機械式の計測器で、アンロイド形圧力計に分類されます。弾性素子としてブルドン管と呼ばれる弾性金属管を使用します。この圧力計は、1849年にフランスのエンジニア、ウジェーヌ・ブルドン(Eugène Bourdon)によって発明されました(図1)。ブルドン管は、管内部に圧力が加わると変形する性質を持ち、その曲がり具合を計測して圧力を測定します。ブルドン管の形状は通常、C形やスパイラル形、ヘリカル形、ねじれ形があり、これにより広い範囲の圧力を正確に測定できます。
ブルドン管式圧力計の構造を示します(図2)。

 

図1 ウジェーヌ・ブルドン  出典:Wikimedia Creative common license

図2 ブルドン管式圧力計の構造  出典:JIS B7505-2:2020 アネロイド型圧力計-第2部:取引又は証明用

ブルドン管式圧力計は、その単純な設計と高い信頼性から、工業用プロセスや機械装置の圧力監視に広く使用されています。特に、高圧環境や過酷な条件下でも安定して動作するため、石油化学プラント、発電所、およびその他の産業分野で重宝されています。この圧力計の基本動作原理は、ブルドン管内部の圧力変化によって発生する機械的変形を、指針の回転運動に変換することです。これにより、圧力が視覚的に表示され、容易に読み取ることができます。

 

2. ブルドン管の構造と材質

ブルドン管は、その高い弾性と耐久性を持つ金属材料で製造されます。一般的には、黄銅、ステンレス鋼、高圧用にはモリブデン鋼が使用されます。これらの材料は、圧力に対して優れた反応性を持ち、長期間にわたって正確な圧力測定を可能にします。ブルドン管の形状はC形、スパイラル形、ヘリカル形、及びねじれ形などがあり、測定範囲や用途に応じて選択されます(図3)。

図3ブルドン管の形状  出典:国立科学博物館技術の系統的調査報告「圧力計技術の発展の系統化調査」

ブルドン管の内部は中空で、測定対象の圧力が加わると、その形状が変化します。この変形は、ブルドン管の一端が固定されているため、自由端が動くことで生じます。自由端の動きは、連結されたリンク機構を介して指針に伝達され、圧力計のダイヤル上で圧力が示されます。これにより、圧力の変化を正確に読み取ることが可能です。

ブルドン管の材質選定は、測定対象の圧力範囲や使用環境に大きく依存します。例えば、腐食性の高い媒体を測定する場合には、ステンレス鋼やモリブデン鋼などが選択されます。また、高温環境下での使用には、耐熱性のある材質が必要です。これにより、ブルドン管は幅広い産業用途に対応できる柔軟性を持っています。
現在使用されているブルドン管材質の例を示します(表4)

表4ブルドン管の材質例  出典:国立科学博物館技術の系統的調査報告「圧力計技術の発展の系統化調査」

 

3. ブルドン管式圧力計の動作メカニズム

3.1ブルドン管式圧力計の動作

ブルドン管式圧力計の動作メカニズムは、シンプルでありながら非常に効果的です。
繰り返しますが、ブルドン管は、アネロイド形弾性素子の一種で、円管を扁平につぶしてコイル状に成形したものです。ブルドン管の一端は閉止され、他端(圧力の導入口)から圧力が付加されると、閉止端(自由炭、”管先”といいます)は、わずかに変位します(圧力計の大きさや圧力などで異なります)。発生した変位は、管先に接続されたロッドを介して内部拡大機構(一般に、”内機”といいます)に伝達され、内機のリンク機構、セクタ(扇形歯車)、ピニオン(小歯車)によって、管先の動きが直線運動から回転運動に拡大・変換されます(図5)。ピニオン軸に固定された指針は、圧力に比例して回転します。この指針の指示を目盛板で読み取ります。通常は、ブルドン管の外側は大気圧ですので、ブルドン管はゲージ圧を検出する弾性素子です。まれに差圧計測に使用されることもあります。

図5 内機の構造  出典:改正ブルドン管圧力計規格JISB7505-1967解説

 

3.2 内機の構造と特性

前項に既述したように、ブルドン管の変位を拡大・伝達して指針を動かす機構である内部拡大機構を、一般には”内機”といいます。
内機はブルドン管とともに、圧力計の性能を決定する重要な機能部品です。内機はロッドによりブルドン管の管先と接続され、管先の変位が調整子、セクタ、ピニオン歯車により拡大回転される。ピニオン軸には指針が固着されており、指針は圧力に比例して270° 回転して、目盛板の圧力指示値を目視で読み取ります。
内機に求められる一般的特性は、次の通りです。
 ① 軽く円滑な作動をすること
 ② ”変位−指針の回転” の伝達誤差が小さいこと
 ③ 圧力範囲に対する直線性が良いこと
 ④ ひげゼンマイの弾性特性が優れていること
 ⑤ ひげゼンマイの絡みや、取付け部の破損がないこと
 ⑥ 耐振性があること
 ⑦ 耐摩耗性があること
 ⑧ 耐熱性があること
 ⑨ 耐食性があること

これらの特性を考慮したさまざまな内機が開発されましたが、すべての条件を満たす内機は存在しません。

内機には、
 ① 内機の摩耗や指針の振れ防止対策として、油入り圧力計やヘリコイド内機(精度は若干下がります)
 ② 防振内機:ピニオン軸に羽根を付けて粘性液に浸したもの
 ③ 直動形圧力計:内機を使わないもの
などが開発されています。こうした対策を施した内機は圧力計に組み込まれますが、内機だけでは不十分な場合もあります。
圧力計内部に、粘性流体であるグリセリン入り圧力計は、脈動圧力対策、内機摩耗対策として、大変有効です。
また、その他「アクセサリ」と呼ばれる機器や器具を使用します。これらのアクセサリを使用することで、圧力脈動の防止や、高熱流体との熱絶縁が可能となります。

 

3.3アクセサリ

アクセサリは、圧力計にとって有害な脈動圧力、振動、温度などが、直接圧力計に付加しないように考案された緩衝器具で、いろいろな種類があります。精密機械である圧力計は、アクセサリを適正に使用することで、機能や性能を損なうことなく、圧力計を使用することができます。
アクセサリは、一般的には「圧力計」と「圧力計を装着する機器・装置や配管」との間に、ねじで結合して使用されます。一方、グリセリン入り圧力計のように、圧力計そのものに対策を講じた特殊圧力計も開発されています。どちらを使用するかは、コストなども含め、検討しなければなりません。

 

4. ブルドン管式圧力計の校正方法

ブルドン管式圧力計の校正は、その正確性を維持するために定期的に行う必要があります。校正の目的は、圧力計が正確な圧力値を示すことを確認し、必要に応じて調整を行うことです。
校正方法には高精度圧力計を使用する方法や、重錘形圧力天びんが用いられます。

これは管理人の経験ですが、私が取扱う圧力計は、鉱物油の圧力を測定しましたので、もっぱら重錘形圧力天びんを用いていました。

校正は、使用環境や使用頻度に応じて定期的に行うことが必要です。特に、高精度が要求される場合や過酷な使用環境で使用される場合には、頻繁な校正が必要です。定期的な校正と、校正記録を保持することで、圧力計の性能を長期間にわたって維持することができます。また、校正の際には、温度や湿度などの環境条件にも注意を払い、正確な校正を行うことが重要です。

 

5. ブルドン管式圧力計の応用例と使用範囲

ブルドン管式圧力計は、その信頼性と耐久性から、さまざまな産業分野で広く使用されています。例えば、石油化学工業、発電所、製薬工場、食品加工工場など、圧力の正確な測定が求められる場所で使用されています。また、高圧ガスの供給システムや液体輸送システムでも重要な役割を果たしています。

石油化学工業では、反応容器やパイプラインの圧力監視にブルドン管式圧力計が使用されます。これにより、安全な運転と効率的なプロセス管理が可能となります。発電所では、ボイラーや蒸気タービンの圧力測定に使用され、発電効率の最適化に貢献します。製薬工場や食品加工工場では、衛生的な設計と高精度な測定が求められるため、ステンレス鋼製のブルドン管式圧力計が多く使用されます。また、航空宇宙分野や自動車産業でも使用されています。
ただし、デジタル圧力計やスマート圧力トランスミッタなどの新しい技術が登場しており、これらの機器はブルドン管式圧力計と併用されることが多くなっています。これらのデジタル機器は、より高い精度やデータの遠隔監視、記録機能などのプラントの自動運転の維持・改善に有効に用いられます。一方、ブルドン管式圧力計は現在の状態を目視で観測できるので、プラントなどの状態監視や緊急時の対応などに役立ちます。現代の化学プラントでは、ブルドン管式圧力計とデジタル圧力計が併存し、それぞれの特性を生かして使用されています。

 

 

参考文献
圧力計技術の発展の系統化調査  国立科学博物館技術の系統化調査報告 第15集  2010年

引用図表
図1 ウジェーヌ・ブルドン  出典:Wikimedia Creative common license
図2 ブルドン管式圧力計の構造  出典:JIS B7505-2:2020 アネロイド型圧力計-第2部:取引又は証明用
図3ブルドン管の形状  出典:国立科学博物館技術の系統的調査報告「圧力計技術の発展の系統化調査」
表4ブルドン管の材質例  出典:国立科学博物館技術の系統的調査報告「圧力計技術の発展の系統化調査」
図5 内機の構造  出典:改正ブルドン管圧力計規格JISB7505-1967解説

ORG:2024/07/14