2.15 鋼における微量元素の影響

2.15 鋼における微量元素の影響(Effect of Impurities on Steel)

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鉄鋼材料は。普通鋼と特殊鋼、及び鋳造品に分けられます。JIS規格では、普通鋼が3000番台、特殊鋼材は4000番台、鋳造品は5000番台が割り当てられています。

普通鋼は、鉄に炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄の5つの元素について成分として、規定されています。炭素は鋼の性質を大きく左右する元素で他の項で詳細に影響を記述しています。本項では、その他の4元素の鋼の性質に及ぼす影響について記述します。

 

1.ケイ素(Si)

ケイ素はキルド鋼(killed steel)には0.2~0.4%含まれ、リムド鋼では0.1%以下含まれます。キルド鋼にケイ素が多く含まれる理由は、脱酸材としてフェロシリコン(FeSi)を用いるためです。ケイ素は一部はケイ酸(SiO2)として介在し、残りはフェライトに固溶していますが、機械的性質に影響を及ぼすことは限定的です。しかし、低炭素鋼では透磁率を低下して、鍛接性及び冷間加工性は悪くなるので、0.2%以下であることが望ましいです。

2.マンガン(Mn)

マンガンは、リムド鋼の脱酸材としてFeMnの形で用いられます。通常は1.6%以下含有していますが、硫黄と結合してMnSとして存在する場合は、硫黄による赤熱脆性を防止する効果があります。しかし、フェライトに固溶して冷間加工性を害することから、深絞りに使用される低炭素鋼では0.5%以下であることが望ましいです。また、電磁気材料に使用される場合もマンガンの含有量は低いほうが望ましいです。

3.リン(P)

リンは、純酸素転炉あるいは電気炉で溶製された鋼材では、その含有量は0.05%以下です。フェライトに固溶して存在しますが、偏析して冷間脆性を起こして衝撃値が低下します。一方、切削性を改善する効果があります。硫黄との組み合わせで快削鋼として使われることはありますが、リン単独では快削鋼として規定されていません。

4.硫黄(S)

硫黄は、通常の鋼では0.05%以下と規定されています。FeSとして介在する場合FeOを伴って赤熱脆性の原因となります。マンガンが十分共存すればMnSとして存在して高温でもろさを示すことはありません。また、MnSは切削性を改善します。JIS G4804に硫黄快削鋼として規定されています。

 

図2.15.1 キルド鋼とリムド鋼

 

まとめ

・普通鋼は、性質を変化させるものとして5つの微量元素が規定されています。5つの微量元素とは、炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄です。
・5つの微量元素の内、炭素、ケイ素、マンガンは鋼としての性質を改善します。リン、硫黄は、どちらかというと悪い影響を与えます。
・鋼の性質に、一番大きな影響を与えるのは炭素です。
・本コンテンツでは、炭素を除く4つの元素が鋼に与える影響を簡単に記述しています。

 

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参考文献
A Textbook of Machine Design  R.S. Khurmi et al.   EURASIA PUBLISHING HOUSE (PVT.) LTD. 2005
機械工学便覧 第6版 β02-02章
JIS鉄鋼材料入門  大和久重雄   大河出版

 

引用図表
図2.15.1 キルド鋼とリムド鋼   JIS鉄鋼材料入門

 

MOD:2021/05/24
ORG:2019/11/23