2.29 銅

2.29 銅(Copper)

 

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1. 銅とは

銅は、非鉄金属では産業的に最も使用されている金属の一つです。
銅は、元素記号Cu、原子番号29の化学元素です。
その特徴を以下に説明します。
1. 柔らかくて、展性(malleable)と延性(ductile)のどちらにも優れています。
2. 色は赤銅色と表現される赤っぽい色をしています。
3. 密度は8.94g/cm3
4. 融点は、1083℃
5. 引張強さは、150MPa~400MPaで条件によって異なります。
6. 電気特性に優れています。電気伝導率:59.6×106 S/m
この性質により、電動機などの電気機械や電機の用途で、電線に多く使用されています。また、電鋳型や電気めっきなどにも使用されています。
7. 比較的、耐食性が良好です。銅管や継手に使用されます。
8. 熱伝導率が良好で、熱交換器のチューブなどに使用されます。熱伝導率:386 W・m−1・K−1
9. 農業分野で、銅は抗菌作用があり、作物を害⾍や病気から守るために、殺菌剤や殺菌剤などのさまざまな農業⽤途に使⽤されています。
10. 抗菌用途で、銅を注入した繊維は、靴下などの製品に使用されており、細菌やウィルスの増殖を防ぐのに役立ちます。
11. 他の非鉄金属(錫,亜鉛,ニッケル,アルミニウムなど)との組合せで性質の優れた合金を作り出します。

 

2. 銅の製造方法

銅は、自然銅(Native Copper, Cu)や 赤銅鉱(Cuprite, Cu2O)としても産出しますが、豊當なのは硫化鉱で、鉄を含む黄銅鉱(Chalcopyrite, CuFeS2)や、輝銅鉱(Chalcocite, Cu2S)、銅藍(Covelite, CuS)で、特に黄銅鉱を主要鉱石とした銅精錬プロセスが主流になっています。
銅精錬の技術は多様ですが、世界中で生産される銅のおおよそ90%は硫化銅鉱の乾式精錬により、生産されています。概要は、黄銅鉱を主要鉱石として、鉄を酸化鉄としてスラグに、硫黄はSO2として気相に排除して、金属状態の銅を生成します。この際SO2は硫酸に転化して閑居保全をはかります。

まず、銅鉱石中の銅の含有率はわずかで、品位を高めるために母岩から有用鉱石を分離するために、浮遊選鉱により得た銅精鉱を乾燥させます。得られた銅精鉱は、一般的にCu;25 ~ 30%、Fe;30%、S;30%の場合が多く、これらの他、少量のZn,Ni,Co,As,Sb,Bi,Se,Au,Agなどを含有しています。

[焙煎工程]

次に、多段焙焼炉で焙煎し、含有されている過剰な硫黄や、ヒ素、アンチモンなどを燃焼させます。この工程では、銅全部と大部分の鉄と結合する硫黄を鉱石中にとどめ、過剰な硫黄は二硫化硫黄(SO2)として大気中に排出します。

[自溶炉工程]

次に焙焼工程で得た焼鉱を、自溶炉を用い石炭あるいは重油で1,370 ~ 1,500℃ に加熱溶融して不純物を鉱滓(こうさい)として銅濃度を高められます。この工程で、銅は硫化第一銅に、鉄は硫化第一鉄になり、両者は溶融し銅品が約65%含む「かわ(マット;matte)」になります。次に、「かわ」をシリ力、 アルミナなど一緒に、転炉に挿入します。

[転炉工程]

転炉工程では、硫化第一鉄は転炉に吹込まれた酸素が豊富な空気で酸化され、二酸化硫黄を放出しシリカ、アルミナなどと鉱滓(スラグ)を生成し、銅品位が99%の純粋な硫化第一銅は炉底に残ります。

[精製炉工程]

転炉から粗銅(硫化第一銅)を取り出して精製炉に移動させ、さらに精錬を継続します。さらに高濃度の酸素を含む空気により、硫化第一銅を分解して硫黄を二酸化硫黄として放出して、粗銅(銅品位99.3%)に変換します。この溶融銅を取り出して鋳銅機に取り出し、粗銅アノードを鋳造で製作します。

[電気精製工程]

Cu;45g/l、H2SO4;190g/l程度の電解液中で、電流密度;200 ~ 250A/m2、電圧;0.2 ~ 0.35V、液温度;60℃程度の条件で、電解液中に粗銅アノードを吊るし電解を行うと、粗銅アノードから溶出した銅は、純銅銅板のカソード上に銅品位が99.99%以上の電気銅として析出します。
Au、Ag、Seなどが陽極スライムとして電解槽の底面に沈殿するので、回収します。
製造された電気銅は、精銅反射炉で溶融酸化した後ポーリングを行い、0.03%程度の酸素を含むタフピッチ銅として、棹銅(さおどう)に鋳造されるのが一般的でしたが、近年は溶湯から連続鋳造圧延により8mm位の径の荒引線に巻き取る技術が普及してきました。

また、近年硫化銅鉱の湿式精錬法、還元精錬法や、直接連続精錬法などが研究されています。

図1 自溶炉による銅精錬フロー 出典:銅電解精製における現場操業改善に関する研究 下川 公博 他

 

3. 銅の用途

銅は、人類が最初に関わった金属で、⼈類とのかかわりが深く、重要な⾦属として扱われてきました。
銅は、⾦属製品や硬貨の材料として、多くの⽂明で使⽤された。現代でも様々な場で使⽤されており、鉄に次いで重要な⾦属材料といえます。銅の主要な⽤途としては、電線(全生産量の60%)、配管や、産業機械部品が挙げられます。
銅の⼤部分は電線のように、⾦属銅として利⽤されますが、より⾼硬度が求められる⽤途に対して、いろいろな元素を添加して、例えば真鍮(黄銅)や⻘銅のような合⾦が古くから利用されています。このように、合⾦とされる銅は全体の約5 %程度です。また、銅の供給量のうちの極少量は、栄養補助⾷品や農業における殺菌剤のための銅化合物の⽣産に⽤いられます。
純銅の機械加⼯も可能ですが、通常複雑な部品を作るために、良好な被削性を得るには合⾦を⽤いる必要があります。また、銅はイオン化傾向の⼩さい⾦属ですが、耐腐⾷性を増すため⾦メッキやエナメル⽪膜をされることもあります。

 

3.1 電気関係

銅は、工業分野で幅広い用途に広く用いられ、特に電気器具の配線、変圧器、電磁石のようなデバイス、銅線などの材料として用いられます。これは銅が銀に次いで電気抵抗が少なく電気伝導性に優れ、常温における伝導率が銀の94 %と遜色がない一方で、銀より価値が格段に低いためです。
また優れた電気伝導性により、希少金属の価格高騰や伝導性の改善のために、集積回路やプリント基板において金や銀、アルミニウム配線の代替としても銅が用いられます。
銅は比較的高い熱伝導率を持つため熱放散能力に優れており、かつ加工性にも優れているためヒートシンクや熱交換器のような廃熱・放熱部分にも銅が用いられます。

代表的な電気製品として、電動機を取り上げます。銅は、他の金属材料と比較して優れた電気伝導性を有しているため、電動機の電気エネルギー効率を向上させます。電動機および電動機の駆動系による電気消費量は、世界の全電気使用量のおおよそ50%、工業用途に限ると、おおよそ70%を占めており、電動機のエネルギー効率が重要な課題です。コイル内で銅の質量と断面積を増大させることで発動機の電気エネルギー効率は向上します。

3.2 建築用途

銅は、防水性、防食性、および外観の美しさために古代から多くの建物で屋根葺材として用いられます。これらの建物の屋根に見られる緑色は、長期の化学反応によるものです。
銅は、最初大気中の酸素により酸化され酸化銅(II)に変化した後、第一銅および第二銅の硫化物を経て最終的に緑青(ろくしょう)と呼ばれる塩基性炭酸銅となり、この緑青は、酸化腐食に対する高い耐久性を有しています。この用途における銅は、リンによって脱酸されたリン脱酸銅 (Cu-DHP)として提供されます。
ただ、銅は他の屋根材と比較して高価なため、現代の日本では高級住宅や寺社建築などの屋根材に限られます。現在では酸性雨の影響もあり、かならずしも半永久的に適用される耐腐食性に優れた建材というわけではありません。

避雷針は、主な建築物が破壊される代わりに電流を地面へ逃がすための方法として、銅が用いられます。また銅は、優れたろう付けおよびはんだ付け性能を有しており、溶接することができます。

3.3 生物付着防止や殺菌作用

銅は静生物性(微生物が成長、増殖するのを抑制する性質。バイオスタティック;biostatic)を有しているため、銅の表面上では菌類や細菌やウイルスなどの微生物は生育することができません。
例えば、海洋環境で銅包板は、フジツボなどの固着性の水生生物から船底を保護するための、静生物性物質として長く用いられてきた。初期には純銅が用いられていたが、その後マンツメタル(Munts metal)とよばれる微量のFEとZn;40%を含む銅合金に代替されました。

3.4 武器・兵器

近現代に到っても薬莢(黄銅)、銃弾の被覆、雷管のケーシング、砲弾の弾帯、成形炸薬弾のライナーなど、弾薬で重要です。鋳鉄よりも鋳造品質が安定していることから、大砲は近世期まで主に青銅製でした。
機雷除去の任務を行う掃海艇は鋼鉄の帯びる磁気に反応する機雷を起爆させないよう船体は木造やFRP、エンジンは銅合金製です。

3.5 その他

(1)銅の炎色反応:

銅は花火の着色料としても用いられます。これは銅の化合物が炎色反応で青緑色を示すことを利用したもので、青色を得るのに用いられます。

(2)調理器具:

熱伝導と加工のしやすさから、板金状の銅を金鎚で叩いて変形させ、加熱調理用器具(鍋やフライパンなど)に応用することもできます。正確に加工された工業品は、高級調理器具として普及しています。ただし、電磁調理器では、使用は可能ですが鉄調理器具と比較すると加熱効率が劣ります。

(3)抗菌繊維:

抗菌性の紡織線維を作るために銅が用いられます。銅は細い導線を容易に作成できるため、繊維に織り込んで絨毯やマットなどに使用されます。また、このような絨毯は銅の高い導電性により静電気の発生を抑制する効果も得られます。同様に銅イオンの持つ殺菌作用を利用した用途として、抗菌仕様の靴下や靴の中敷などにも利用されます。

(4)めっきの下地処理:

電気メッキで、ニッケルめっきなどを施工する際に、下地処理として銅が用いられます。

(5)装飾品:

銅鉱石のうち孔雀石などはその外観の美しさから宝石として利用されます。

 

 

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参考文献
銅 Wikioedia  2024/09/20確認
Copper: Technology and Competitiveness September 1988年
https://mineralsed.ca/site/assets/files/3449/smelting_slideshow.pdf
(国内銅)精錬技術の現状と今後 パシフィック・カッパー 佐藤敬一 2009年 :平成21年度(第7回)金属資源関連成果発表会 資源経済シンポジウム
銅電解精製における現場操業改善に関する研究  下川 公博

 

引用図表
図1 自溶炉による銅精錬フロー 出典:銅電解精製における現場操業改善に関する研究 下川 公博 他

Rev:2024/09/21
ORG: 2016/6/24