2.37 非金属材料

2.37 非金属材料(non-metallic material)

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非金属材料は、低密度や、低コスト、柔軟性、熱や電気に対する絶縁性などの特性を生かした工業分野で使用されています。いろいろな非金属材料がありますが、以下に示す材料が幅広く使用されています。

1.プラスチック
2.エラストマー(ゴム)
3.セラミックス
4.木材(woods)

順に見ていきましょう。

1.プラスチック(plastics)

プラスチックとは、合成ないし半合成(セルロース系)された高分子(polymer)を主成分として、可塑剤や、強化材、着色剤、安定剤などの充てん材を必要に応じて配合して、成形して得られた固体材料をいいます。高分子材料(polymeric materials)に分類されます。

合成樹脂(synthetic resin)と呼ばれることもありますが、その場合は、液体樹脂も含めることが多いので、成形品はプラスチックと呼ばれます。

プラスチックを分類すると、構成する高分子の性質から熱可塑性プラスチック(thermoplastics)と、熱硬化性プラスチック(thermosetting plastics)とに大別されます。

熱可塑性プラスチックは、温度が上がると軟化溶融して流動性を示し、冷えると固化します(可逆的変化といいます)。
熱硬化性プラスチックは、液状ないし粉末状の主材が、加熱ないし硬化剤(架橋剤)との反応によって、三次元網状構造を形成するもので、一旦固化すると温度を上昇させても軟化することは無く、不可逆的変化を呈します。

熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックのそれぞれについて、表2.37.1に成形品として使用される主要なプラスチックを物性とともに示します。

表2.37.1 エンジニアリングプラスチックの特性

表2.37.1 エンジニアリングプラスチックの特性

その他の分類として一つ目は、プラスチックは、結晶性(crystalline)と非晶性(amorphous)に分類されます。
結晶性プラスチックの例としては、ポリエチレンとポリプロピレンがあります。高分子における結晶構造は、高分子鎖が厚み方向に向いて並び、表面に達すると折り畳まれてまた内部に入っていくという、折り畳み構造になっています(図2.37.2)。

図2.37.2_結晶性プラスチックの結晶構造

図2.37.2_結晶性プラスチックの結晶構造(折りたたみ構造)

結晶性プラスチックの結晶が、金属やセラミックスの結晶と異なる点は、完全には結晶になっているのではなく、必ず非晶部を伴うことです。全体積に占める結晶部の割合を結晶化度といいます。この値はプラスチックの種類や合成方法によって大きく異なります。ポリエチレンの場合で 45~90%です。ポリエチレンのように分子構造が規則的なものは結晶化しやすく、大きな側鎖をもつものは結晶化しにくい性質があります。
非晶性プラスチックとは分子が全く不規則に並んだもので、ポリスチレンやポリメチルメタアクリレートなどが代表的なものです。熱硬化性樹脂はすべて非晶性プラスチックです。

プラスチックのもう一つの分類法は、実用上から分けるやり方です。はん用プラスチックエンジニアリングプラスチック(engineering plastics)、特殊な高級プラスチックなどに分類されます。
はん用プラスチックとは、ポリエチレンや塩化ビニル樹脂など、材料価格が低く、成形しやすく、一般用途に多量に使用されるものを指します。プラスチックの全生産量の約 9割を占めています。
エンジニアリングプラスチックとは、室温での寸法安定性と大部分の機械的性質を、100℃以上でも保持する熱可塑性プラスチックをいいます。強靱で剛性が大きく負荷を受ける用途に、使用可能なプラスチックえ、ポリアセタールや、ナイロン(ポリアミド)、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT 樹脂)、PPO樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET、テトロン樹脂)、PPS 樹脂、フェノールアラルキル、芳香族ポリエステル(エコノール)、ポリフェニレンエーテルなどが該当します。

特殊な高級プラスチックとしては、フッ素樹脂や、シリコーン樹脂、ポリイミドなどに代表される、高コストながら耐熱性などの特性が卓越している材料が該当します。

2.エラストマー(ゴム)

ゴム材料は、柔軟で破断伸びが大きく圧縮永久ひずみが小さいことが特徴です。繰返し大きな変形を受けても破断せず、応力を取り除けば元の形状に回復することが要求される製品部位に用いられます。色々な材料の物性を表2.37.3に示します。金属、その他の一般材料のヤング率とは著しく異なり、ポアソン比が約 0.5、引張強さは 1~10MPaの極めて小さい値を示します。

図2.37.3 各種材料のヤング率、引張強さ、ポアソン比

加硫ゴム(vulcanized rubber)は、融点が低く室温で液状である長鎖状の高分子を、ところどころで架橋し、三次元網状構造とすることにより、大きい変形に耐えうる柔軟性と流動を抑える形状保持性をもたせたものです。

ゴム弾性理論によれば、加硫ゴムの架橋密度と弾性率の関係は式(2.37.1)で与えられ、ゴムの架橋密度が高いほど高弾性になります。

E=3νkT     (2.37.1)

ここで、Eは引張弾性率、νは架橋密度、kはボルツマン定数、Tは絶対温度になります。

一般の固体の弾性は、分子間隔の変化に対する内部エネルギーによるものであるのに対し、ゴムの弾性は分子の熱運動によるエントロピー弾性であり、温度の上昇に伴い増加する特徴があります。
通常のゴム材料では、補強剤や樹脂等が添加されており、エンロトピー弾性以外の補強効果が加わっているため、必ずしも温度上昇に伴い弾性率の増加が見られるとは限りません。しかし、輪ゴムのようにほとんど天然ゴムからなる製品では、式2.37.1で示される、弾性率が絶対温度に比例する現象が観察されます。

一般工業用製品として使用されるゴムは、原料ゴムのままで使用されることはなく、使用目的に応じた物性と得るために、加硫剤や粉体補強剤等の配合剤を加えたものを、加圧加熱して化学的に架橋された加硫ゴムとして使用されます。

ゴムの使用目的に応じて、表2.37.4に示す配合剤が使用されます。

図2.37.4 ゴムへの各種配合剤と種類

原料ゴムはかつては天然ゴム(natural rubber)のみでしたが、現在は多くの品種の合成ゴム(synthetic rubber)が開発されています。化学構造と架橋構造によりゴムの物理的、化学的性質が大きく異なり、汎用ゴム(general purpose rubber)とそれ以外の特殊ゴム(special purpose rubber)に大別されます。

汎用ゴムは、強度と加工性に優れ生産量が多く安価な、天然ゴム(NR)、シスポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)を指し、タイヤを中心として使用されます。

特殊ゴムは、汎用ゴム以外の原料ゴムの総称で、耐油性に優れたニトリルゴム(NBR)、耐候性、耐オゾン性に優れたクロロプレンゴム(CR)のように、汎用ゴムにない性質を重視する目的で使用されます。この他アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(MQ)、フッ素ゴム(FKM)等があります。なお、ブチルゴム(IIR )と エチレンプロピレンゴム(EPDM)については、は特殊ゴムに分類されることがあります。これらの汎用ゴム、特殊ゴムの特性について表2.37.5に示します。

ゴム製品は、原料ゴムをブレンドしたり、添加剤を選択することにより、より優れた特性を発揮させることが可能です。材料設計に当たり、用途に適した組合せを考えることが必要です。

補強材として、カーボンブラックなどの粉体粒子(フィラーといいます)や短繊維、長繊維をゴムに添加した強化ゴムについては、別項目で詳細を示すようにします。

ご参考に: ゴムの種類

 

3. セラミックス

ここで解説したいと考えている、セラミックスは従来の陶器を指すのではなく、電気・電子的機能や、機械的(力学的)機能、光学的機能、熱的機能,生化学的機能などの機能を持つ、いわゆるファインセラミックスと呼ばれるものです。ファインセラミックスという用語は、 ISO/TC206としても規格化されています。

本項では、ファインセラミックスの内、特に機械材料としてのセラミックスについて記述したいと思います。

セラミックスが、金属材料と比較して優れている点は、
(1)耐熱性
(2)耐食性
(3)耐摩耗性

が挙げられる一方、機械材料としては、致命的な欠点としてもろいということがあります。従って、低応力で静的な力しか加わらない環境下での使用が多かったのですが、セラミックスが優れている耐熱性、耐食性、耐摩耗性を追求するために研究されてきたセラミックスを、特にエンジニアリングセラミックス(engineering ceramics)と呼びます。

主なエンジニアリングセラミックスを、表2.37.5に示します。
エンジニアリングセラミックスは、酸化物セラミックス非酸化物セラミックスの2種類に大別されます。

表2.37.5 エンジニアリングセラミックスの種類と機能

表2.37.5 エンジニアリングセラミックスの種類と機能

酸化物セラミックスは、非酸化物セラミックスと比較して、製造しやすく、大気中で安定な物質です。そのため、古くから色々な分野に応用されてきました。例えば、セメントやガラス、耐火物などの酸化物セラミックスは、現在でも工業材料として重要な役割を果たしています。
エンジニアリングセラミックスとしては、アルミナ(Al2O3)や、ジルコニア(ZrO2)、とコーディエライト(Mg2Al4Si5O18あるいは 2MgO・2Al2O3・5SiO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)などが挙げられます。

エンジニアリングセラミックスとしての特性を注目されているのは、耐熱性に優れ、化学的に安定なアルミナ(Al2O3)、高じん性、イオン導電性を持つジルコニア(ZrO2)、高温で高い強度が期待されるムライト(3Al2O3・2SiO2)などがあります。

非酸化物セラミックスは、単体としては炭素があり、具体的には工具用の用途としてダイヤモンドや耐熱・耐食材料、電気材料として黒鉛が古くから使用されています。この他炭素繊維も複合材料用に、飛行機など軽量かつ強度を必要とする用途に使われています。
また、最近では、ニューカーボンと呼ばれるフラーレン(C60)やカーボンナノチューブも新しい用途が開発されつつあります。

化合物としては、窒化ケイ素(Si3N4)と炭化ケイ素(SiC)が、エンジニアリングセラミックスとして最も重要な材料として位置づけられます。優れた耐熱性と耐食性、高い機械強度が特徴です。

化合物としては、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、ホウ化チタン(TiB2)などの遷移元素の炭化物、窒化物、ホウ化物などがあります。これらの化合物は、非化学量論物質呼ばれ、硬くて融点が高く、特殊な条件下では耐食性に優れる性質があります。これらの性質から切削工具用に欠かせない材料です。

この他、窒化ホウ素(BN)は炭素とよく似ています。黒鉛とよく似た六方晶系窒化ホウ素は、耐熱・耐食材料、潤滑材料として利用されたり、ダイヤモンドと類似の構造の立方晶系窒化ホウ素は、硬質材料として利用されています。

4.木材

工業用材料としての木材は、木材細胞の二次壁を使用します。二次壁の主な成分は、セルロース及び、ヘミセルロース、リグニンです。

木材の物理的性質、機械的性質には、樹木の細胞の形態及び、細胞壁の構造、細胞配列、細胞壁の化学成分が大きく影響します。

木材に含まれる水分は、細胞の中に含まれる自由水と、細胞壁の非晶質の部分で化学結合している結合水とに分けられます。結合水が飽和状態(含水率:約28%)以下になると、細胞壁が収縮し始めます。

セルロースの結晶構造を持つ微細な繊維状構造物は、多くが細胞の長軸及び樹軸とほぼ平行に配向していますので、木材の繊維方向の強度やヤング率は一般に高く、収縮率も一般的には繊維方向は無視できるほど小さな値です。一般的には、木材の密度が高いほど、強度が高く、収縮率が大きくなります。

4.1 木材の物理的性質

木材の物理的性質を、表2.37.6に示します。

表2.37.6 木材の物理的性質

表2.37.6 木材の物理的性質

・含有水分
木材は、通常の状態でも多少の水分を含んでいます。通常の大気中に置かれて、水分が平衡した状態を気乾状態といいます。日本では10 ~ 18%程度の幅があり、標準含水率として15%に取っています。実際は、地域や季節、部屋の状態などでかなりの変動幅を持ちます。ちなみに欧米では12%を取っています。

・密度
空げきを含まない木材細胞壁だけの値である、真密度は約1.50gr/cm3です。
実用的に用いる密度としては、含水状態によって全乾密度、気乾密度、生材密度などが使用されます。
また、測定が容易で実用的にも使いやすい容積密度も用いられます。

・木材の収縮、膨潤
木材の含水率が繊維飽和点以下であると、含水率の多少により、寸法変化(収縮または膨潤)が発生します。その値は方向によって異なります。一般的に、収縮率は、接線方向>半径方向>繊維方向の順になり、その比は約10:5:1~0.5です。

・熱に対する性質
木材の熱による線膨張率の値は接線方向と半径方向で大きく、繊維方向で小さくなります。
例として、全乾密度が 0.40gr/cm3のホワイトファーでは、繊維方向が3.34×10-6/℃、接線方向が3.26×10-5/℃ です。

比熱は,樹種や密度による違いはほとんどありません。乾燥状態で0 ~ 100℃の温度範囲における平均比熱は、0.324cal/(g・℃)になります。熱伝導率は、接線方向と半径方向とではあまり差がなく、繊維方向の熱伝導率は,繊維と直角方向の 2~2.5倍程度です。

・電気に対する性質
木材の電気抵抗は、含水率が増加するとともに、急激に低下します。
一般に、木材は乾燥状態では優れた絶縁体ですが、繊維飽和点以上の含水率では絶縁体と考えることはできません。温度と周波数が一定なら、木材の誘電率は含水率とともに増加します。

4.2 木材の機械的性質

木材の機械的性質を、表2.37.7に示します。ただし、機械的性質は、樹種や生育地、樹体中の部位などによって異なります。また密度、年輪幅、晩材率、きずの有無および程度、含水率、荷重方向、温度など種々の因子が影響します。さらに、試験体の形状,寸法,荷重速度などの試験方法によっても異なった値を示します。各種試験は、JIS Z 2101:1994の木材試験方法によらなければなりません。

表2.37.1 木材の機械的性質

表2.37.1 木材の機械的性質

 

 

 

 

参考文献

機械工学便覧第6版

 

 

引用元

表2.37.1 エンジニアリングプラスチックの特性   機械工学便覧第6版

図2.37.2 結晶性プラスチックの結晶構造(折りたたみ構造)  https://www.campus.ouj.ac.jp/~hamada/TextLib/rm/chap9/Text/Cr990904.html

表2.37.3 各種材料のヤング率、引張強さ、ポアソン比  機械工学便覧第6版

表2.37.4 ゴムへの各種配合剤と機能   機械工学便覧第6版

表2.37.5 エンジニアリングプラスチックの材料と機能     機械工学便覧第6版

表2.37.6 木材の物理的性質     機械工学便覧第6版

表2.37.7 木材の機械的性質     機械工学便覧第6版