2.4 金属材料の物理的性質

2.4 金属材料の物理的性質(Physical Properties of Metals )
スポンサーリンク
アフィリエイト広告を利用しています。
金属の物理的特性には、光沢や、色、密度、電気伝導率、熱伝導率、融点などが含まれます。 表2.4.1に、主な純金属および合金について、主要な物理的特性を示します。
以下に項目を挙げて概要を示します。
Contents
- 1. 密度(density)
- 2. 溶融点(Melting point)、凝固点(Freezing point)
- 3. 溶融熱(heat of fusion)
- 4. 沸点(boiling point)
- 5. 気化熱(heat of vaporization)
- 6. 比熱(specific heat)
- 7. 変態点(transformation point)
- 8. 磁気変態点(magnetic transformation)
- 9. 熱膨張係数(thermal expansion coefficient)
- 10. 熱伝導率(thermal conductivity)
- 11. 電気伝導率(electrical conductivity)
1. 密度(density)
密度は単位体積あたりの質量で定義されます。
定義は以下の式で表されます。
\( \rho = \displaystyle\frac{ m }{ V } \)
ここで、
\( \rho \):密度
\( m \):質量
\( V \):体積
単位は国際単位系(SI単位系)で、kg/m3 で表されます。
よく似た概念に比重があります
比重とは、ある物質の密度と基準となる標準物質の密度との比であり、無次元量になります。標準物質としては、通常の場合、固体及び液体については水、気体については同温度、同圧力での空気を基準とします
計量法における比重の定義は以下のとおりです。
比重 = 物質の質量 / 同一の体積を有する水の質量
ここで;
(1)計量法では、基準物質は水のみです。
(2)水の温度を指定するときと指定しないときがあります。
1)温度を指定しないときは4℃におけるものです。
2)温度を指定したときはその指定の温度を比重と共に示すことになります。
(3)水の体積は、101 325 Pa(標準気圧)の圧力下におけるものです。
(4)物質の密度と水の密度とを比較するのではなく、物質の体積と同一の体積の水の質量とを直接に比較します。
2. 溶融点(Melting point)、凝固点(Freezing point)
水銀以外の金属は、加熱すると溶融して液体に変化(相転移)します。この温度を凝固点といいます。
液体から、徐々に冷却して固体になる温度を、凝固点といいます。
3. 溶融熱(heat of fusion)
融解熱は、一定量の物質が、固体から液体に相転移するときに必要な熱量をいいます。単位は、J/g または J/mol になります。融解熱は潜熱の一種ですので、融解潜熱ともいいます。
熱の吸収および発散は、金属内部で行われます。加熱炉で、金属を溶融するときに加熱炉内温度と金属内部との温度とには差異があります。従って、金属が全部溶解または凝固するまでは、金属内部の熱変化は加熱炉内温度に比例せず、連続性を失います。
4. 沸点(boiling point)
沸点とは、液体の飽和蒸気圧が雰囲気の圧力と等しくなる温度で、この温度で気体になります。雰囲気圧力は、通常は1気圧(101.325 kPa)になります。通常は、気体を冷却すれば、同じ温度で凝縮して液体になります。
例えば、純鉄は加熱すると1 530℃ で溶融し、さらに2 450℃まで加熱を行うと、沸騰して気体になります。また、冷却すると同じ温度で凝縮して液体の鉄になります。
5. 気化熱(heat of vaporization)
気化熱とは、液体を気体に変化させるために必要な熱量をいいます。気化熱は潜熱の一種ですので、蒸発潜熱、気化潜熱ともいいます。期待が液体に変化するときに放出されるエネルギーを、凝縮熱といいます。同じ温度、同じ圧力の気化熱と等しいです。
6. 比熱(specific heat)
比熱(specific heat)とは、圧力または体積一定の条件で、単位質量の物質を単位温度上げるのに必要な熱量をいいます。比熱容量(specific heat capacity)ということも多いです。単位記号は J/(kg・K) が用いられます。SI文書では、JK-1kg-1 とされています。
気体の場合、温度変化によってエンタルピーの変化量や体積の変化量が大きく、比熱の状態量としては定圧比熱や低析比熱を考える必要がありますが、固体や液体では温度により極端に変化することはありません。
7. 変態点(transformation point)
金属(合金を含む)を加熱・冷却すると、ある温度で金属結晶の空間格子の原子配列が変化します。その温度を変態点といいます。変態温度ともいいます。
例えば、鋼の場合、室温では体心立方格子(B.C.C)ですが、加熱して910℃以上の温度では面心立方格子(F.C.C)に変化します。この910℃を変態点といいます。また、原子配列の変化無しに磁性が変化する磁気変態点(キュリー点)が存在します。
8. 磁気変態点(magnetic transformation)
鉄、ニッケルやコバルトは、常温では非常に磁化しやすい性質を持っています。これを、強磁性体といいます。加熱すると磁性を失います。これらの金属では、磁気変態点は、鉄;780℃、ニッケル;350℃、コバルト;1 150℃になります。
9. 熱膨張係数(thermal expansion coefficient)
金属材料は、温度変化により長さが変化します。温度が1℃変化するごとの長さの変化を熱膨張係数といいます。
10. 熱伝導率(thermal conductivity)
熱伝導率は、温度勾配に対する熱流密度の比と定義されます。すなわち、熱流密度を\( j \)、熱力学温度を\( T \)とすると、こう配\( grad \)により、
\( j = – \lambda \ grad \ T \)
ちなみに、この式は、フーリエの法則といわれます。
通常、熱伝導率は、温度に依存します。
11. 電気伝導率(electrical conductivity)
電気伝導率は、物質中における電気伝導のしやすさを現わす物理量です。導電率や電気伝導度とも呼ばれます。工学系では導電率と呼ばれる傾向があります。
長さ\( l \)、断面積\( A \)の一様な導体の両端の抵抗\( R \)は、
\( R = \rho \displaystyle\frac{ l }{ A } \)
この式で比例定数\( \rho \)を抵抗率あるいは比抵抗といいますが、
\( \sigma = \displaystyle\frac{ 1 }{ \rho } \)
この式に示されるように、\( \rho \)の逆数、\( \sigma \) を電気伝導率といいます。
表2.4.1 金属の物理的性質
参考文献
A Textbook of Machine Design R.S. Khurmi et al. EURASIA PUBLISHING HOUSE (PVT.) LTD. 2005
機械工学便覧 第6版 β02-11章
機械工作標準化マニュアル 佐々木賢市 技術評論社 1979年
引用図表
表2.4.1 金属の物理的性質 参考:機械工学便覧 第6版 β02-11章
REV:2024/08/06
ORG:2019/11/15