鍛接

鍛接(forge welding)

 

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1. 鍛接(forge welding)とは

鍛接は、金属部品を高温で加熱して、圧力を加えて接合する溶接方法で、圧接の一種です。鍛接は、古くから使用されており、主に鍛冶屋によって行われてきました。
金属が再結晶温度に達するまで加熱され、表面が柔らかくなった状態で加圧することにより、分子間の結合が形成されます。この方法は、特に鋼や鉄の接合に効果的であり、現代の製造業においても重要な技術として認識されています。

鍛接の最大の長所は、異なる種類の金属を接合できる点です。また、他の溶接方法に比べて接合部が非常に強固になるため、機械的な強度が要求される部品に適しています。しかし、鍛接は高い技術と経験が必要とされ、適切な温度管理と圧力の調整が重要です。これらの要素が適切に制御されないと、接合部に欠陥が生じる可能性があります。

 

2. 鍛接の歴史

鍛接は、一番最初に始まった鉄に対する溶接プロセスになります。

鍛接の起源は、古代にさかのぼります。おそらくBC1800年頃のアナトリア(トルコ)ではじまりました。古代人は未だ鉄を完全に溶融可能な高温を創り出すことができませんでした。そのため、鉄の精錬では少量のスラグと不純物とが一緒に焼結された鉄粒の塊が生成されました。生成された鉄の塊は、多孔性であることよりスポンジ鉄と呼ばれていました。このプロセスは、ブルームリープロセス(bloomery process)と呼ばれ、パドル法と呼ばれる錬鉄の製造方法が発明されるまでは、鉄を得るための一般的な製造方法でした。
この手法で得られたスポンジ鉄は、溶融温度まで加熱されてハンマーなどで叩かれることにより、空気のポケット、溶融スラグや、不純物が押し出されて、鉄の粒子が密着して、ビレット(billet)と呼ばれる固体のブロックが形成されます。これは錬鉄(wrought iron)と呼ばれました.

初期の鍛冶屋は、この技術を使って武器や工具を製造していました。変形には強いがもろい高炭素鋼と、破損には強いが変形しやすい低炭素鋼とを接合して、単一の鋼より、じん性と強度に優れた鋼が製造されるようになりました。この接合法は、英語ではパターン溶接(pattern welding)と呼ばれ、BC700年頃に初めて登場し、主に刀などの武器を製作するために用いられました。日本においても、刀鍛冶がこの鍛接技術により、日本刀を製作しました。

近代に入り、産業革命が起こると、電気溶接やガス溶接が発明されたので、手作業での鍛接はこれらに置き換えられましたが、一方蒸気機関や鉄道の発展に伴い、大型の構造物や機械部品の製造に鍛接は、一般的なプロセスになり、現代の工業においても重要な役割を果たしています。

 

3. 鍛接のプロセス

鍛接のプロセスは、大きく分けて以下のステップに分けられます。まず、接合する金属部品を加熱します。加熱は、金属が再結晶温度に達するまで行われ、この温度は金属の種類によって異なります。次に、加熱された部品を鍛造機にセットし、圧力を加え一体化させます。この圧力は、通常、ハンマーやプレス機によって加えられます。

圧力を加えることで、金属の表面が互いに密着し、分子間の結合が形成されます。この際、酸化膜や不純物が除去されることが重要であり、これらが残ると接合強度が低下する可能性があります。最後に、接合部を冷却し、必要に応じて追加の熱処理を行います。このプロセスにより、強固で信頼性の高い接合部が得られます。
接合部を除去して活性化するために、ホウ砂などを鍛接材として塗布するなどして、酸化被膜を除去するととともに新たな酸化被膜の発生を防止することが重要です。

 

4. 鍛接の応用

鍛接には、多くの手法が考案されています。

鍛接として、もっとも一般的でもっとも古い鍛接法は、手打ちハンマー法です。手打ちハンマー法は、接合金属を適切な温度に加熱して、フラックスを塗布して、溶接面を重ね合わせて手持ちハンマーで接合部を繰返して叩くことにより行われます。

産業革命前後から、最初は水力、産業革命時期の蒸気、続いて電気、ガスエンジンなどの動力を利用する、機械式ハンマーの開発により効率が著しく改善されました。

この他、金型を利用して、金属片慣性形状に保持し接合する方法、加熱した金属を重ねて高圧のローラーに通して溶接するロール溶接法などが発達しました。

鍛接を包含する圧接方法として、フラッシュ溶接や、スポット溶接、シーム溶接、プロジェクション溶接、アプセット溶接などがあります。

 

ここでは、代表的な鍛接の応用例として、鍛接鋼管、包丁の応用例を示します。

(1)鍛接鋼管

鍛接鋼管の製造法は、素材の帯状の鋼材(帯鋼)の全体を加熱して丸めて管状に巻き、純酸素ガスを合せ面の接合すべき⾯に吹付けることによって、酸化スケールを吹き⾶ばします。それと同時に、酸素と鋼の反応熱による温度上昇を利⽤して圧接する⽅法です。この製造⽅法は、圧接部の盛上がりが少なく、切削加⼯が不要なため、⾼い⽣産性と低コスト化がはかれます。接合部の組織は、⺟材部とほとんど差異がなく、良好な接合性を⽰しますが、熱間加⼯であるため、⼨法精度、表⾯品質は電縫鋼管と⽐較すると若干劣ります。

図1に鍛接鋼管の製造工程を示します。

図1鍛接鋼管の製造工程   出典: https://www.jfe-steel.co.jp/products/koukan/img/pdf/seizoukoutei_03.pdf 文言追加ふ

 

(2)包丁

包丁は鋼(刃金)を軟鉄(地金)に鍛接することにより製作されます。接合面にはホウ砂を用います。ちなみに日本刀も、基本的な工程は同様な作り方をします。日本刀の場合、ホウ砂では無くわら灰と泥とをつけるそうです。

 

 

 

参考文献
A Textbook of Machine Design   R.S. Khurmi, J.K. Gupta   Eurasia Publishing House (PVT.) LTD. 2005年
接合・溶接技術Q&A/ Q08-06-10  熱間圧接法(鍛接, 熱間圧延)の原理と用途について 溶接技術センター
    https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0080060100
鍛接鋼管   JFEスチール(株)  https://www.jfe-steel.co.jp/products/koukan/img/pdf/seizoukoutei_03.pdf

 

引用図表
図1鍛接鋼管の製造工程   出典: https://www.jfe-steel.co.jp/products/koukan/img/pdf/seizoukoutei_03.pdf 文言追加ふ

 

ORG:2024/06/10