曲線当てはめのための数式

曲線当てはめのための数式(some equations for curve fitting)

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本コンテンツでは、実験などで得られたデータ群を曲線に当てはめるための曲線について説明を行います。一部の数式についてはエクセルの近似曲線のユーティリティで取り扱うことができます。

 

 

1.重回帰(multiple regression)

単回帰では、目標となる\( Y \)の値を求める\( X \)(これを説明変数と呼びます)が1個で定義できるモデルなのに対して、説明変数\( X \) が2個以上(\( X_{ 1 } , X_{ 2 } , \ldots \))により目標となる\( Y \)の値を定義するものが重回帰です。

重回帰分析とは、このように説明変数が2個以上存在する場合の回帰分析をいいます。

エクセルでは分析ツールの「回帰分析」により求められます。

 

[例題]発酵生成物の収量

微生物発酵による生成物の収量は、発酵槽内の温度(T)、二酸化炭素ガス(CO2)圧力(P)、及び発酵時間(t)の関数として表されます。

\( y = aT + bP + ct + d \)   (式1)

温度、圧力、時間の3つが異なる条件で、一連の発酵実験からデータを取得します。
重回帰分析の場合、近似曲線を示すことはできません。

重回帰分析を行う場合、説明変数によっては目標値の予測に役立たないにもかかわらず、それらの値が回帰曲線の算出結果に影響する場合があるので注意が必要です。

 

2.多項式回帰(polynomial regression)

多項式回帰は、説明変数Xは1個ですが、べき項を含む場合のモデルです。

\( y = a + bx + cx^2 + dx^3 + \cdots \)   (式2)

例えば、図1に次数3の多項式の曲線を表します。

エクセルでは、近似曲線の「多項式近似」で求められます。次数は6次まで近似できます。

図1 3次多項式  \( y = 5 – x – 5x^2 + x^3 \)

 

3.指数的減少(exponential decrease)

指数的減少は、式3 で示されます。

\( y = a e^{ bx } \)   (式3)

例えば図2に例を示します。

エクセルでは、近似曲線の「指数近似」で求められます。

図2 指数的減少  \( y = 0.1 e^{ -0.5x } \) 

式3は、

\( \ln y = bx + \ln a \)

とも表されます。

 

4.指数的増加(exponential growth)

指数的増加についても、式3 で示されます。

指数的増加曲線の例を図3に示します。

図3 指数的増加  \( y = 0.1 e^{ 0.5x } \) 

 

エクセルでは、近似曲線の「指数近似」で求められます。

 

5.切片を有する指数関数的な減少または増加(exponential decrease or increase between limits)

この曲線は、ゼロ以外の限界値まで指数関数的に減少するか、限界値まで指数関数的に上昇します。
曲線の式は、式4で示されます。

\( y = a e^{ bx } + c \)   (式4)

本曲線は、エクセルの近似曲線でのデータ処理はできません。

本項の曲線例を図4に示します。

図4 切片を有する指数関数的増加  \( y = – e^{ -0.5x } + 1 \)  

式4は、

\( \ln (y – c ) = bx + \ln a \)

とも表されます。

 

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6.ゼロへの二重指数関数的減衰(double exponential decay to zero)

本曲線の方程式は、式5で示されます。指数関数的に減少する項が2項合わさったものになり、典型的な例としては図5のようになります。

\( y = a e^{ -bt } + c e^{ -dt } \)   (式5)

図5 二重指数関数的減衰  \( y = e^{ -2x } + e^{ -0.2x } \)  

第2項が減算される場合は、曲線形状はさまざまに変化します。

 

図6 二重指数関数的減衰の例 \( y = e^{ -2x } – e^{ -0.2x } \)  

式5は、非線形で、線形形式には変換できません。

 

7.累乗(power)

本曲線の方程式は、式6で示されます。典型的な例として図7のようになります。

\( y = a x^b \)   (式6)

図7 累乗  \( y = -1.1 x^{ 0.5 } \)  

式6は、

\( \ln y = b \ln x + \ln a \)

とも表されます。

エクセルでは、近似曲線の「累乗近似」で求められます。

 

8.対数(logarithmic)

本曲線の方程式は、式7で示されます。典型的な例として図8のようになります。

\( y = a \ln x + b \)  (式7)

図8 対数  \( y = 2 \ln x + 1 \)  

エクセルでは、近似曲線の「対数近似」で求められます。

 

9.プラトー曲線(”Plateau” curve)

本曲線の方程式は、式8で示されます。典型的な例として図9のようになります。

\( y = \displaystyle \frac{ ax }{ b + x } \)  (式8)

図8 プラトー曲線  \( y = \displaystyle \frac{ x }{ 1 + x } \)  

 

10.二重逆数プロット(double-reciprocal plot)

9項のプラトー曲線は、各辺の逆数を取ると、式10に示す式になり、直線方程式になります。

\( 1/y = b/a \cdot 1/x + 1/a \)   (式10)

図9 二重逆数 \( 1/y = 1/x +1 \)      

 

11.ロジスティック関数(logistic function)

ロジスティック関数、あるいは用量反応曲線(dose-response curve)は、式11で示されます。典型的な例を図10に示します。一般にS字曲線を描きます。

\( y = \displaystyle \frac{ 1 }{ 1 + e^{ -ax }} \)  (式11)

図10 ロジスティック関数  \( y = 1/( 1 + e^{ -x} \)  

 

12.可変勾配のロジスティック曲線(logistic curve with variable slope)

式11の係数\( a \)は曲線の立ち上がり部分の勾配を決定します。\( a \)は勾配係数、もしくはヒルスロープ(Hill slope)と呼ばれます。ヒルスロープは特に生化学の分野で用いられます。図11に勾配係数を変化させた場合の影響を示しています。中点での勾配は\( a/4 \) になります。

図11 可変勾配ロジスティック関数 \( y = 1/( 1 + e^{ -ax} ) \)     \( a = 0.5, 1, 2 \)

 

13. 付加パラメータを持つロジスティック曲線(logistic curve with additional parameters)

本曲線の方程式は、式12で示されます。この式はプラトーの高さ\( (b/c) \)(b/c)と\( x=0 \)x=0からの中点のオフセットを決定する付加パラメータを持つロジスティック曲線です。典型的な例として図12のようになります。

\( y = \displaystyle \frac{ b }{ c + e^{ -ax }} \)  (式12)

図12 付加パラメータを持つロジスティック関数  \( y = 0.5/(5 + e^{ -x }) \) 

 

14.y軸にオフセットのあるロジスティック曲線(logistic curve with offset on the y-axis)

本曲線の方程式は、式13で示されます。この式は、プラトーの最大値と最小値(それぞれ、係数aとd)、x軸のオフセット、およびヒルスロープを考慮に入れたロジスティック曲線です。典型的な例として図13のようになります。

\( y = \displaystyle \frac{ a }{ 1 + e^{ b+cx }} + d \)  (式12)

図13 y軸にオフセットのあるロジスティック関数 \( y = 1/(1 + e^{ -2-x }) -0.2 \)  

 

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15.ガウス曲線(gaussian curve)

本曲線の方程式は、式14で示されます。この式は(、ガウス曲線もしくは正規誤差曲線といいます。

\( f(x) = \displaystyle \frac{ 1 }{ \sqrt{ 2 \pi } \sigma } exp \left \{ – \frac{ ( x- \mu )^2}{ 2 \sigma^2 } \right \} \)  (式14) 

 

図14にガウス関数の例を示します。

図14 ガウス曲線  \( \mu = 0, \sigma = 1 \)

 

16.対数対逆数(log vs. reciprocal)

本曲線の方程式は、式15で示されます。

\( y = \displaystyle exp \left( a – \frac{ b }{ x } \right) \)  (式15)

この式は、温度と物性との関係によく見られます。

式16は線形化すると、

\( \ln y = -b/x + a \)

と表されます。

例えば、クラジウス-クライペロンの式(Clausius-Clapeyron equation)は式17で表されます。

\( \ln P = \displaystyle \frac{ – \Delta H_{ vap }}{ RT } + C \)  (式17)

この式は。純粋な物質の蒸気圧と温度との関係を示します。

また、アレニウスの式(Arrhenius equation)(式18)は、化学反応の速度\( k \)温度\( T \)との関係を記述します。

\( \ln k = \displaystyle \frac{ -E_{ a }}{ RT } + \ln A \)  (式18)

 

 

17.三角関数(trigonometric functions)

エクセルの三角関数の角度の単位はラジアンです。従って、\( \theta \) が度単位の場合は、\( \pi \theta / 180 \) でラジアンに変換されます。

典型的な式は次式(式19)で示されます。

\( y = a \sin (bx + c) + d \)  (式19)

\( \sin \) は、位相が\( \pi /4 \) ずれた\( \cos \) の場合もあります。ここで\( d \) はx軸からの偏りを示します。

例として、うなり振動数(beat frequency)の式を示します(式20)。本式によるグラフを図15に示します。

\( y = \sin ax + \sin bx \)  (式20)

図14 三角関数 \( y = \sin x + \sin 0.95x \) 

また、三角関数の式の一般形を式21に示します。

\( y = a \sin (bx+c) + d \sin (ex+f) + g \)  (式21)

 

 

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参考文献
Excel for Scientists and Engineers – Numerical Methods[Wiley](2007)

 

REV:2q024/02/22
ORG:2021/01/24