水素の同位体
水素の同位体(Isotopes of hydrogen)
スポンサーリンク
アフィリエイト広告を利用しています。
水素には、同位体が現在のところ8種類あります。同位体というのは、同一の元素で中性子の数が異なり、質量数が異なる原子のことを言います。同位体は質量は異なりますが、元素の化学的性質は、通常はほとんど異なりませんが、水素の場合質量数が大きく異なるので、化学反応速度などに影響が出て来ます。これを同位体効果といいます。
水素の同位体のうち、自然界に存在する安定的同位体は、軽い方から3つの同位体です。順番に見ていきましょう。
Contents
(1)水素1(軽水素)
1Hは、自然界に最も多く存在する水素の同位体で、その存在比は99.9885%を占めます。質量数は1で、安定同位体です。
この同位体は、質量数が大きい重水素や三重水素などと比較して、しばしば軽水素と呼ばれます。
(2)水素2(重水素)
2Hは水素のもう1つの安定同位体で、重水素(デューテリウム;deuterium)とも呼ばれます。重水素の原子核は1つの陽子と1つの中性子からなります。質量数は2で、水素の存在比は0.0115%を占めます。
重水素には、放射性はありません。ただ猛毒ではないですが、水として多量に摂取すると代謝に不具合を生じます。分子中に重水素を多量に含む水は重水と呼ばれます。重水素とその化合物は、非放射性の同位体標識として化学実験に用いられる以外に、1H-NMR分析(核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析)の溶媒にも用いられます。また、重水は中性子の減速材や原子炉の冷却水として用いられます。重水素は、核融合の燃料としても期待されています。
(3)水素3(三重水素)
3Hは三重水素(トリチウム;tritium)と呼ばれます。原子核中に1つの陽子と2つの中性子があります。三重水素は、放射性同位体であり、半減期12.32年でベータ崩壊を起こしヘリウム3(3He)を生成します。
自然界にも少量の三重水素が存在します。主に宇宙線と大気の反応によるものです。地球全体での生成量は、年間約72PBq(7.2京ベクレル)程度です。この他、アメリカ、ロシア、中国菜緒で行われた核実験により環境中に大量に放出されたものがあり、原子力発電所などの原子炉関連施設からも大気中や海洋に計画的に放出されたものが主たる起源です。
高純度のトリチウムは、核融合反応の燃料として重水素と共に期待されています。また、水素爆弾の原料の一つとしても利用されます。
三重水素は、地球環境においては、酸素と結びついたトリチウム水(HTO)として水に混在しており、水圏中に気相、液相、固相の形態で広く拡散分布しています。大気中においては、トリチウム水蒸気(HTO)、トリチウム水素(HT)および炭化トリチウム(CH3T)の3つの化学形で、それぞれ水蒸気、水素、炭化水素と混在しています。
(4)水素4(四重水素)
4Hは非常に不安定な水素の放射性同位体です。核は1つの陽子と3つの中性子からなります。四重水素は、三重水素に高速の重陽子を衝突させることで合成されます。四重水素は、半減期 (1.39 ± 0.10) × 10−22秒で、中性子放出によって崩壊します。
(5)水素5(五重水素)
5Hは非常に不安定な水素の放射性同位体です。核は1つの陽子と4つの中性子からなります。五重水素は、2001年にロシア、日本、フランスの科学者のチームによって理化学研究所のRIビーム科学研究室で最初に合成されました。ついで2002年に、別のチームが三重水素に三重水素を衝突させる方法でも合成に成功しています。
五重水素は、少なくとも半減期9.1 × 10−22秒で2個の中性子放出を起こし崩壊します。
(6)水素6(六重水素)
6Hは、半減期3×10−22秒で3個の中性子放出を起こし崩壊し、三重水素になります。六重水素の原子核は、1つの陽子と5つの中性子からなり、三重水素同士を多重に衝突させて生成されました。
(7)水素7(七重水素)
7H の核は1つの陽子と6つの中性子からなります。七重水素は、2003年にロシア、日本、フランスの科学者チームによって理化学研究所のRIビーム科学研究室で最初に合成されました。合成は1Hのターゲットに高速の8Heを衝突させることで行われた。
七重水素の崩壊モードの詳細はまだ完全には解明されていませんが、おそらく、2個の中性子を放出する中性子放出で崩壊して、五重水素に変化すると考えられています。五重水素もやはり9.1×10−22 秒という短い半減期を経過して2個の中性子放出で、三重水素(3H)に変化し、さらに12.32年の半減期でベータ崩壊して、3Heになります。
(8)水素8(八重水素)
8Hの核は1つの陽子と7つの中性子からなります。現在のところ、これ以降の重水素は合成されていません。現在、アメリカや日本、ヨーロッパなどで合成が試みられています。
参考文献
元素 富永裕久 ナツメ社 2005年
Wikipedia
ORG:2023/09/26