金属の熱膨張係数  ものづくり、ひとづくり

金属の熱膨張係数 (Thermal expansion coefficient of metal)

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1. 概要

金属の熱膨張係数についてまとめます。
材料の種類について追加しました。

 

2. 線膨張係数

金属の線膨張係数\( \alpha \)は、単位長さあたりの、温度による長さの変化率として定義されるます。
物体の長さを\( l \) 、セルシウス温度を\( t \)(℃)とすると、次式であらわされます。

\( \alpha = \displaystyle\frac{ 1 }{ l } \displaystyle\frac{ dl }{ dt } \)

 

金属の線膨張係数はごく小さく、通常の計算では温度によらずほぼ一定とみなしてもよいので、\( t \) ℃における物体の長さ\( l \)  は次のようにあらわせます。

\( l = l_{ 0 } ( l + \alpha t ) \)

 

ここで

  \( l_{ 0 } \)は基準温度(通常機械系の材料の場合は20℃が多い)における物体の長さを示します。

 

3. 体膨張係数

金属の体積膨張率\( \beta \)  は、物体の体積\( V \)  を用いて次のように定義することができます。

\( \beta = \displaystyle\frac{ 1 }{ V } \displaystyle\frac{ dV }{ dt } \)

 

ここで\( V \)  は\( l \)  を用いて

\( V = l^3 \)

 

と表されるので、 

\( \beta = \displaystyle\frac{ 1 }{ V } \displaystyle\frac{ dV }{ dt } = \displaystyle\frac{ 1 }{ l^3 } \displaystyle\frac{ dV }{ dl } \displaystyle\frac{ dl }{ dt }=  \displaystyle\frac{ 1 }{ l^3 } \cdot 3 l^2 \displaystyle\frac{ dl }{ dt } = 3 \alpha \)

 

となります。
従って、\( t \) ℃における固体の体積\( V \) は次のようにあらわせます。

\( V = V_{ 0 } ( 1 + \beta t ) = V_{ 0 } ( 1 + 3 \alpha t ) \)

 

ここで \( V_{ 0 } \)は基準温度(通常機械系の材料の場合は20℃が多い)における物体の体積を示します。

 

4. 色々な材料の線膨張係数

付録に金属材料の線膨張係数の値を示します。基準温度は何れも20℃です。
どちらも、JIS規格の「圧力容器の構造」の付録に記載されています。管理人は古い人間なので、JIS B8243の方がなじみがあるのですが、新しいJIS B8265 の方が、より詳しくなっているようです。
御使いになる皆さんの使い勝手の良い方を選べば良いのでは、と思います。

 

5. 計算例

常温(20℃)で長さ1mのSCM435製の軸材があります。100℃のときの軸の長さはいくらか見積もります。
[解]
線膨張の式  \( l = l_{ 0 } ( l + \alpha t ) \)  

を使用します。 付録1の表より低Cr鋼の100℃での線膨張係数は、11.53×10-6 mm/mm℃。また温度上昇は80℃(=100-20)なので、

\( L = 1000 \times ( 1 + 11.53 \times 10^{ -6 } \times 80 ) \)
\(  = 1000.9224 mm \)

約\( 1mm \)伸びます。

 

以上//

 

金属材料の熱膨張係数

付表1 JIS B8243

付表2-01 JIS B8265

付表2-02 JIS B8265

付表2-03 JIS B8265

付表2-04 JIS B8265

 

 

参考文献
JIS B8243、JIS B8265

 

REV:2024/09/27
ORG:2015/06/07