1.1エロージョンとは何か

1.1エロージョンとは何か

エロージョン(erosion)は、元来は地政学上の自然現象である、氷河や風雨、河川、砂ぼこりなどによる、山や谷の岩石の侵食や、海岸の波浪による侵食現象を示す言葉でした。しかし現在では、工業上で発生する類似の現象を表す用語としても使用されるようになってきています。ここでは主に工業上で現れる現象について述べようと考えています。

すなわち、(1)液滴や液体、(2)減圧などにより液体内に発生する蒸気の泡、(3)液体中に含まれる固体粒子、などの機械的作用による材料の損傷現象をエロージョンと呼んでいます。

もう少し詳しく示します。
[定義]
エロージョンとは「流体が材料表面に繰返し衝突したり、衝撃を与えることにより、機械的な損傷を与えてその一部を脱落させていく現象」と定義されます。
エロージョンを他の損傷現象と区別する点は、流体の衝突作用により材料に損傷を与えることです。ここで作用する流体としては、(1)液体の流れ、(2)固体の流れ(サンドブラストなどの粉粒体の流れ、土石流など)、(3)混相流(気-液系、液-固系、気-液系)があります。この中で最も重要なのは、(3)の混相流です。
材料が受ける損傷は、エロージョンの種類や条件によっても異なりますが、一般的には圧縮による塑性変形、掘り起し、亀裂、切削状損傷、はく離などがあります。
エロージョンは、日本語では、壊食、侵食、潰食、摩食などといわれることもありますが、現在ではエロージョンとするのが一般的です。