1.2 エロージョンの種類

1.2 エロージョンの種類

エロージョン現象は次の3種類に大きく分類されます。
エロージョンの研究は1908年に行われた Worthington による液滴による衝撃実験といわれています。1950年代には、類似現象をまとめてエロージョンと呼ぶようになりました。
当初は、研究の中心は機械系技術者によるものでしたが、現在では材料や化学の研究者も研究をすすめており、広範囲に研究が進展しています。

1.液体、気-液系のエロージョン
(1)蒸気タービン翼のエロージョン
エロージョンが工業的な意味で、初めて問題となったのは蒸気タービン翼の損傷でした。
1925年に、イギリスの火力発電所で、問題の検討が始まりました。1938年になってタービン翼の損傷は蒸気と一緒にもたらされた凝縮液滴の衝突により発生することが示されました。

(2)飛行機のレイン・エロージョン
レイン・エロージョンとは、液体の衝撃によるエロージョンで、雨中を高速で動く物体に生じる現象です。第二次世界大戦直後、米空軍のB29爆撃機FRP製アンテナ設備で発見されました。その後のジェット機の発達によりエロージョン損傷が急激に増加するようになりました。そこで空軍を中心に研究が進みました。

2.液-気系のエロージョン(キャビテーション・エロージョン)
高速で流動する液体の静圧が、その温度における蒸気圧より低くなると液体中に上記の気泡が発生する現象をいいます。
この現象は、1873年にReynoldsにより観察されていましたが、20世紀になってFroudが”Cavitation”と名付けました。1917年にRayleighによって、キャビテーションによる材料のい損傷を理論的に検討し、この分野の研究が始まりました。1950年代にはキャビテーション・エロージョンという用語が定着しました。
この分野の研究は、船舶の高速化によるスクリューや、インデューサ等の高速水力機械の開発により、ますます進展しています。

3.気-固系、液-固系のエロージョン
(1)サンド・エロージョン
固体粒子を含む流体の衝突により生じる現象を、サンド・エロージョンといいます。狭義にエロージョンという場合は、サンド・エロージョンを意味することが多いです。自然界での砂による浸食現象がこれに相当します。特に液-固系のサンド・エロージョンをスラリー・エロージョンということもあります。
固体粒子の衝突により発生するこの現象に関する研究は、1931年にドイツで集塵の研究に関連して行われたのが最初といわれています。その後、タービン翼の汚れ、遠心ポンプのエロージョン、ダクトや油送管の損傷などが問題として浮かび上がりました。その後、技術の発達に伴い、関連分野が拡大し、大型の機械・設備などについて適用された研究報告が増えてきています。

(2)スラリー・エロージョン(液-固系のエロージョン)
鉱業や化学工業では、液体の流れの中に固体粒子を含むスラリーを取扱うことが多く、スラリー・エロージョンの問題は関係分野の研究者にとっては非常に大きい研究分野になっています。