1.4 摩耗とエロージョン

1.4 摩耗とエロージョン(wear and erosion)

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1.摩耗(wear)とエロージョン(erosion)との違い

図1.4.1 摩耗とエロージョンとの違い

図1.4.1 摩耗とエロージョンとの違い

摩耗とエロージョンとは、どちらも材料表面の機械的な除去を伴う現象ですが、その成り立ちは全く異なります。
摩耗とエロージョンとの違いを比較を示します(図1.4.1)。

(1)摩耗は、基本的に2つの固体間に生ずる損傷現象であるのに対して、エロージョンは固体と流体(流体中に固体を含む場合を含む)間に生ずる損傷現象である。

(2)摩耗は、滑りや転がりによる個体間の摩擦により生ずる現象であり個体間の相互作用は角度を持たない(α=0)のに対して、エロージョンは流体が固体に対してある角度α(衝突角度といいます)で衝突する(基本的に繰返し)ことによって生ずる現象です。この衝突角度は、0°<α≦90°の範囲にあります。

(3)摩耗を生じさせる要因は荷重(力)と滑り速度であるのに対して、エロージョンは運動エネルギー(質量と衝突速度)の大小によります。

2. 摩耗の種類

摩耗の種類については、色々な分類が考えられますが、以下に主な摩耗を示します。実際の摩耗では単独でなく複合的な組合せで発生することが多いです。

2.1 凝着摩耗(adhesive wear)

最も基本となる摩耗の種類です。2つの固体間の摩擦(滑りや転がりの相対運動)により、真実接触部で凝着した金属が破断・分離して、相対する金属面に移行するか、または脱落して摩耗粉になる摩耗のタイプです。
摩耗の様式を図1.4.2に、2つの固体間の接触状態と相対運動の例を図1.4.3に示します。

図1.4.2 凝着摩耗

図1.4.2 凝着摩耗

図1.4.3 凝着摩耗の要因

図1.4.3 凝着摩耗の要因

図1.4.4 アブレッシブ摩耗

図1.4.4 アブレッシブ摩耗

 

 

 

 

 

2.2 アブレシブ摩耗(abrasive wear)

研削摩耗、粉体摩耗、ざらつき摩耗などの表現もあります。この摩耗は本来は2つの相対運動する固体間に硬い粒子が存在する場合や、硬い面の突起で固体面を研削/研摩する場合の摩耗(例えばサンドペーパによる固体表面の研摩)をいいます。さらには、「材料と粉体が接触することにより生ずる摩耗」も含まれます(図1.4.4)。
この定義からは、エロージョン現象もアブレシブ摩耗に含まれることになります。この意味でエローシブ摩耗(erosive wear)という用語が使用されます。

2.3 腐食摩耗(corrosive wear)

摩耗を生じている金属面で腐食性環境(大気や水分、潤滑油など)と化学反応(腐食)を伴うもので、生じた反応生成物は物体の相対運動により除去されるので、常に新しい金属面が腐食されます。摩耗面は比較的高温ですので、大気中や酸素を溶存している液体中では酸化を伴う酸化摩耗を生じます。一般的に腐食摩耗は酸化摩耗を指します。

2.4 疲労摩耗(fatigue wear)

疲労摩耗は、転がり軸受の転動面や歯車の歯面のように、滑り摩擦に比較して転がり摩擦が支配的な場合に発生します。金属部品同士が接触する表面には、繰返し応力が作用して、表面は加工硬化により次第に硬化して、時間の経過と共に微視的な割れが発生して、これが亀裂に進展して、ついには表面のはく離が発生します(図1.4.5)。この亀裂を発生させるせん断応力は、表面から少し内部に入ったところで最大になり、ここを起点にうろこ状にはく離するフレーキング(転がり軸受)現象や、歯車の歯面に現れるピッチングやスポーリングも同様の現象です。

図1.4.5 疲労摩耗

図1.4.5 疲労摩耗

 

 

 

 

 

参考文献
エロージョン・コロージョン    (社)腐食防食協会    裳華房

 

引用図表
[図1.4.1] 摩耗とエロージョンとの違い   エロージョン・コロージョン
[図1.4.2] 凝着摩耗                         
[図1.4.3] 凝着摩耗の要因         エロージョン・コロージョン
[図1.4.4] アブレッシブ摩耗        エロージョン・コロージョン
[図1.4.5] アブレッシブ摩耗        エロージョン・コロージョン

 

Add:2020/11/21: 文言追加
REV2017/8/23: 参考文献明示