1.6 粉粒体の性質

powder

1.6 粉粒体の性質(properties of granular materials)

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粉粒体とは、粉体と粒体との総称です。粉状の物質と粒状の物質とをあわせていいます。一般的には、粉粒体とは、異なる大きさの分布を持つ多くの固体粒子からなり、個々の粒子間に相互作用が働いているものと定義できます。

粉粒体の性質の内、材料の腐食やエロージョンに影響する物性としては、粒度や粒形、硬さなどがあります。

本コンテンツでは、粉粒体の性質のうち粒度、粒形、硬さの3つの物性について考えましょう。

 

1.粒度

(1)粒径・粒度の定義

粉粒体は、固体粒子の集合体という物理的な特性であるので、いろいろな材質のものが該当します。身近なものでいえば土、砂利、石も粉粒体ですし、米、小麦粉、砂糖なども粉粒体です。このように、粉粒体はいろいろな大きさが有りますが、それを定量的にあらわしたものが粒度(particle size)です。

粒度と同じような定義として、粒径(particle diameter)があります。粒度は粉粒体の集合体としての平均的な大きさを示します。一方、粒径は1個の粒子の大きさをいいます。

粉粒体の形状が球や立方体などのように、直径や辺の長さなどでその大きさが決定できるものであればよいが、通常は、図1.6.1に示すように、不規則な形状の粒子が多く、一定の基準を決めて定義する必要があります。

図1.6.1 粉粒体不規則形状粒子の例   Wikimedia

 

表1.6.2 に顕微鏡法による粒径のいろいろな定義を示します。これらの内よく用いられるのは、2軸径や等価面積径です.また、各種粒径要素の求め方を図1.6.3 に示します。

表1.6.2 粉粒体粒径の各種の定義

図1.6.3 顕微鏡法による各種粒径要素の求め方

 

また、これらの粒径から、平均粒径を計算する計算式を表1.6.4 に示します。

表1.6.4 平均粒径の計算式

 

また、粒度の測定方法、測定範囲を表1.6.5 に示します。摩耗・エロージョンに影響する粒径は、10μmのオーダー以上です。粒径の定義は、いろいろありますので、各測定方法により粒径値は異なります。従って粒度を表示するときには測定方法も明記する必要があります。

表1.6.5 粉粒体の粒度測定方法と粒径範囲

 

 

(2)摩耗に対する粒度の影響

材料の摩耗に対する粒度の影響を定性的に示したものが、図1.6.6のようになります。摩耗量は粒径とともにあるA点まで、ほぼ直線的に増加します。A点に達した後の摩耗量の推移は3方向に分かれます。ほとんどはA点より後は摩耗量が一定になります。このA点に相当する粒径を臨界粒径といい、50µm~200µmの間の値になります。

図1.6.6 材料の摩耗に対する粒度の影響

 

2.粒形

粉粒体は、粒度のところで見たように色々な形状をしています。例えばガラスビーズはほぼ真球形ですし、砥粒は角張った形状をしています。粉粒体の形状については、表1.6.7 のように定性的な形状の表現が用いられることがあります。

表1.6.7 粉粒体形状の定性的表現

 

この形状の違いは、エロージョンや摩耗の程度に対して大きな要因となります。角張った粉粒体ほど、材料の損傷量が大きくなります。形状については、定性的には丸形、角形、丸角形など色々な表現がありますが、定量的には先端角法(尖った角を測定)、2軸法(長軸と短軸の比)、フーリエ解析法(ひずみ楕円に近似)などがあります。先端角法と2軸法とは、ほぼ比例関係にあります。

図1.6.8 に、2軸法による粒形係数と摩耗率の関係を示します。粉粒体の形状が細長くなるほど摩耗させやすい性質があることがわかります。

図1.6.8 2軸法による形状係数と摩耗率との関係

 

3.硬さ

硬さの測り方については色々あります。鉱物などの硬さを示すには、モース硬さが良く使用されますが、数値の間隔が不均一で、あくまでも定性的な指標で、硬さの比較を行うにはあいまいで、粉粒体の特性を比較するためには不適切です。

粉粒体のような小さい物体の硬さを定量的に測る方法として、マイクロビッカース硬さやヌープ硬さが使用されます。マイクロビッカース硬さは押付け負荷を出来た凹みの表面積で割った値で求められます。ヌープ硬さは押付け負荷を出来た凹みの投影面積で割った値で求められます。マイクロビッカース硬さ、ヌープ硬さとも、同じ計測器を使用します。また両者の硬さ値に大きな差異はありません。

表1.6.9 に色々な粉粒体の硬さを示します。

表1.6.9 粉粒体の定量的硬さ

 

図1.6.10 に粉粒体とエロージョンを受ける材料との硬さ比と摩耗量との関係を示します。グラフより摩耗量を\( W \)、粉粒体の硬さを\( H_{ p } \)、材料の硬さを\( H_{ m } \)とすると、それぞれ区間によって次式が得られます。

図1.6.10 硬さ比と摩耗量との関係

\( H_{ m } < 0.8 H_{ p } \) の範囲では \( W \propto \displaystyle ( \frac{ H_{ p } }{ H_{ m } } )^ { -1 } \)

\( 0.8 H_{ p } < H_{ m } < 1.25 H_{ p } \) の範囲では \( W \propto \displaystyle ( \frac{ H_{ p } }{ H_{ m } } )^ { -3.5 } \)

\( 1.25 H_{ p } < H_{ m } \) の範囲では \( W \propto \displaystyle ( \frac{ H_{ p } }{ H_{ m } } )^ { -7.5 } \)

 

\( H_{ p } / H_{ m } \)が小さいほど摩耗は少なくなるが、\( H_{ p } \)の方が軟らかくても材料を摩耗することは興味があります。この理由としては、次のようなことが考えられます。

(1)材料のマトリックス中には、硬さに差異が有り、粉粒体より軟らかい相がある。
(2)粉粒体中に材料より硬い不純物が混入している。
(3)既に、材料が腐食により劣化しており、表面がもろくなっている。
(4)硬さの低い粉粒体でも、その尖った角が材料に当たると、瞬間的に大きい応力が発生して、材料を変形させる。

 

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参考文献
エロージョンとコロージョン  (公社)日本防食学会(旧(社)腐食防食協会 1987年  裳華房
粒度測定入門  荒川正文 粉体工学会誌 Vol.17 No.6  1980年

 

引用図表
図1.6.1 粉粒体腹側経常粒子の例   Wikimedia
表1.6.2 粉粒体粒径の各種の定義   粒度測定入門
図1.6.3 顕微鏡法による各種粒径要素の求め方    エロージョンとコロージョン
表1.6.4 平均粒径の計算式   粒度測定入門
表1.6.5 粉粒体の粒度測定方法と粒径範囲   粒度測定入門
図1.6.6 材料の摩耗に対する粒度の影響   エロージョンとコロージョン
表1.6.7 粉粒体形状の定性的表現  エロージョンとコロージョン
図1.6.8 2軸法による形状係数と摩耗率との関係  エロージョンとコロージョン
表1.6.9 粉粒体の定量的硬さ  エロージョンとコロージョン
図1.6.10 硬さ比と摩耗量との関係   エロージョンとコロージョン

 

ORG:2020/11/22