6.1 エロージョン・コロージョンとは

6.1 エロージョン・コロージョンとは

6.1.1 言葉の定義

キャビテーションやエロージョンの現象については、比較的研究者により定義が大きく異なることは無いのに比べて、エロージョン・コロージョン現象は、物理と化学との両方の領域に関与する現象ですので、具体的なメカニズムを理解することが困難で、色々な条件の下で発生する、エロージョン・コロージョン現象により、様々に定義されています。

文献を読む際は、その点に考慮する必要があります。 このサイトは、機械技術者向けの観点から作成していますので、ここではASTM(アメリカ材料試験協会)のエロージョン委員会(G40)の規格に基づいて、エロージョン・コロージョンを定義付けしたいと考えます。

すなわち、 エロージョン:固体表面と流体、多成分流体、もしくは液体の衝突や固体粒子との機械的相互作用による固体表面からの材料の進行性の喪失 エロージョン・コロージョン:腐食と腐食性物質の存在の元での潰食とが同時に作用する損傷形態 また、エロージョン現象の原因となる現象については、エロージョンの前につけて示されます。例えば、キャビテーション・エロージョンで、エロージョンの原因現象がキャビテーションであることを示しています。

 

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6.1.2 エロージョン・コロージョンの定式化

エロージョン・コロージョンによる損傷に対する対策として、耐エロージョン・コロージョン性の材料の開発や、機械設備に使用される材料の寿命推定方法の確立などが考えられます。

そのためには、エロージョン・コロージョンの強度を推定するばかりではなく、エロージョン・コロージョンによる攻撃を受けた場合に材料がどのような挙動をするかを知る必要があります。
材料の挙動、を知るということは、すなわちエロージョン・コロージョンの発生・進行の機構を解明することにほかなりません。

エロージョン・コロージョンの機構を説明するため概念を定式化してみましょう。
この概念をあらわす式は、非常に簡単で次式であらわされます。

daum_equation_1470568022130               (6.1.1)

ここで、 Wt は全侵食量 W’はエロージョン・コロージョン条件下のエロージョン量 F’は同じくエロージョン・コロージョン条件下のコロージョン量です。 この式の意味は、エロージョンとコロージョンとが同時に起きる場合は、その浸食量は、エロージョンとして物理的に、材料の表面から金属の塊として離脱する量W’ と、イオンとして離脱する量F’の和になることを示しています。

また、それらの量が区別できるものとしています。

スラリーエロージョン・コロージョンの場合について、この式の意味を考えてみましょう。
図6.1.2にスラリーエロージョン・コロージョンに当てはめた概念図を示します。

erosion-corosion

スラリーエロージョンが単独で発生するときは、金属の表面から物理的に金属が離脱します。この量をWとします。
一方、コロージョン(電気化学的な腐食)が単独で作用するときは、金属がイオンとして離脱します。この量をFとします。

エロージョンとコロージョンとが同時に起きている状態では、お互いに影響しあって、WはW’に、FはF’に変化します。
すなわち、コロージョンの影響により金属表面の状態が変化して、エロージョン量が単独でのエロージョン量から変化します。
同様にエロージョンの影響により金属表面が活性化するため、コロージョン量も単独に作用する場合から変化します。

もちろん、エロージョン速度もコロージョン速度も、、金属表面の部分部分では異なります。
しかし全体として見れば、金属塊として離脱した全量 W’とイオンとして溶出した全量 F’との和は、金属材料の全浸食量Wtに等しくなると考えられます。

従って、この概念式(6.1.1)は、次のように展開することができます。

daum_equation_1470568141244   (6.1.3)

つまり、

daum_equation_1470568245030    (6.1.4)

もちろん、これらの概念式は、エロージョン、コロージョンが単独で作用するときのそれぞれの離脱量と、重畳丁した場合の離脱量とを比較するための便宜上示される式です。