6.5 高温破壊

6.5 高温破壊(high temperature destruction)

 

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0. 高温破壊とは

金属材料を、高温下で継続的に使用すると、その強度や耐久性が低下して、破壊に至ることがあります。この現象を「高温破壊」といいます。
高温破壊には、いくつかの原因がありますが、主なものは以下の通りです。
クリープ破壊
高温疲労破壊
高温酸化破壊

これらについて簡単に記述します。

1. クリープ破壊

金属材料は、常温では一定の荷重を受けるとひずみが生じ変形しますが、一定の所で停止します。しかし、金属材料が高温の状態で一定の荷重を受け続けると、時間の経過とともに徐々にひずみが大きくなり変形が増大して、遂には破壊にいたります。このようにひずみが大きくなる現象をクリープ現象といい、クリープ現象により破壊にいたることをクリープ破壊といいます。一般的には、金属材料の場合、絶対温度での融点(K)の約1/2以上の高温で発生するといわれています。
なお、一定温度の下で規定したクリープ速度を生じる応力を、クリープ強度(クリープ強さ)といいます。クリープ速度は、一般的に1000時間(約42日)経過時に1%、0.1%、0.01% のひずみを生じる速度をいいます。

横軸に経過時間、縦軸にひずみ量として、時間の経過とひずみとの関係をあらわしたものをクリープ曲線といいます(図6.5.1)。
クリープ曲線は、3段階に分けて考えることができます。

(1)一次クリープ
負荷された応力により発生するひずみを瞬間ひずみといいます。その後、継続してひずみが発生し、その後時間の経過とともにひずみの度合いが小さくなります。遷移クループとも呼ばれる領域です。
応力を付加すると、最初移動しやすい転位が移動して、その後次第に動きやすい転位が減少していくこと(枯渇現象)、変形により転位密度が増加してお互いに絡み合うことによる動けなくなる加工硬化とが合わさった効果によるもので、一定応力のもとでは次第に変形速度が小さくなります。

(2)二次クリープ
定常クリープともいいます。一次クリープよりひずみ速度が低下し、一定となる領域です。この領域は、加工硬化と過熱による回復がバランスして釣り合った状態と考えることができます。
一次クリープの終わりで、絡み合った転位が応力が付加されている状態で、次第にすべり面上を移動して正負の転位が相殺して焼失したり、空格子が作用して転位を消滅させる一方で、変形のために転位が増殖し、両者が釣り合った状態と考えられます。

(3)三次クリープ
加速クリープや破壊クリープともいいます。急速にひずみが進行し、短時間で破断にいたります。この段階は、主として材料の局部収縮とクリープの過程で何らかの破壊の原因となる要因が発生するためと考えられます。
高温または短時間クリープでは、局部収縮を始めると単位面積当たりの応力が急激に増加することが原因とされており、この場合通常、粒内延性破壊の形態をとります。
一方、長時間クリープの場合は、一般的にはほとんどくびれを生じない粒界脆性破壊の形態をとります。この場合、粒界に沿って小さな穴やクラックが並んだ破面になります。

クリープ破壊を防止するためには、クリープ変形を抑制する必要があります。クリープ変形を抑制するためには、以下の対策を行うことが必要です。
・できるだけ低温で使用すること。
・できるだけ低荷重で使用すること。
・クリープ強度の高い材料を使用すること。

図6.5.1クリープ曲線   ORIGINAL

 

2. 高温疲労破壊

高温疲労破壊とは、金属材料が温度が高い状態で、繰返し荷重を受けて強度が低下し、破壊にいたる現象です。疲労により金属材料の表面にき裂が発生・成長して対には破壊にいたります。
高温疲労破壊は、粒界移動と粒界滑りとが重要な役割を果たし、粒界破壊により発生します。高温における疲労強度は、温度以外に繰返し速度、応力波形、ひずみ速度などの時間要因の影響、酸化の影響、材料の組織変化の影響を強く受け、常温の疲労破壊と比較していろいろな要因により複雑になります。

 

3. 高温酸化破壊

酸化とは、金属材料が空気中の酸素と反応して酸化被膜を形成する現象をいいます。酸化被膜は、金属材料の表面を保護します。酸化被膜が厚くなりすぎると、金属材料の強度は低下し、破壊にいたることになります。原子力発電所やガスタービンなどの高温環境で使用される金属材料にとって重要な問題です。
高温酸化破壊の原因は、金属材料の種類、温度、酸素濃度などによって異なります。鉄やニッケルなどの鉄系金属は、高温で酸素と反応して酸化被膜を形成しますが、この酸化被膜は脆く、金属材料の表面に亀裂を生じさせやすくなります。また、酸素濃度が高くなると、酸化膜の形成が促進され、高温酸化破壊のリスクが高まります。

 

 

 

参考文献
金属破断面写真集  小寺澤良一  テクノアイ出版部
フラクトグラフィとその応用  小寺沢良一 日刊工業新聞社
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引用図表
図6.5.1クリープ曲線   ORIGINAL

ORG: 2023/08/11