ビーチマークとストライエーション

ビーチマーク(beach mark)とストライエーション(striation)

 

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機械構造物では、繰返し荷重が付加されると、材料は疲労して徐々に亀裂が進展して、ついには破壊にいたる現象を疲労破壊といいます。

疲労破壊した材料は、マクロ的な外観からは伸びやネッキングなどの変形が認められない、ぜい性破面を示しますが、電子顕微鏡でミクロ的観察すると、著しい塑性変形を伴なっています。

疲労破壊の破面を特徴づけるのが、ビーチマークとストライエーションです。

 

パワーポイントによる説明を用意しました。ご興味がありましたらご覧ください(少し、本コンテンツの内容は異なりますが)。

 

1. ビーチマーク(beach mark)

ビーチマークは、マクロ的フラクトグラフィの様相として観察されます(図1)。繰返し荷重により生成される疲労破面に酸素が作用して生成される酸化物による着色の度合いが、作用する応力の強弱に伴って濃淡差であらわれることで縞模様として観察されます。

この縞模様を波が海岸に押し寄せる様子からビーチマークと言ったり、貝殻に見られる模様にしていることから貝殻模様(clamshell mark)とも言われます。破面は平坦で凹凸があまり観察されません。

き裂の進展方向は、ビーチマークに対して垂直ですので、その方向をたどることに より、破壊の開始位置を特定することができます。

図1ビーチマーク  出典: Fatigue Cracking and Fractography

 

2. ストライエーション(striation)

ストライエーションは、電子顕微鏡などにより観察されるミクロ的フラクトグラフィの様相として観察されます。図2 に疲労破壊でき裂発生から破断に至る過程の模式図を示します。

図2き裂発生から破断に至る過程の模式図
  出典:最近のフラクトグラフィとその応用 1. 疲労破壊   森要、中村春夫 材料Vol.47 No.6 1998年6月

 

ストライエーションの内、通常観察されるのは、延性ストライエーション(ductile striation)と呼ばれるものです(図3)。

図3 延性ストライエーション
  出典:フラクトグラフィ(1)(破面解析)  小寺沢良一  材料Vol.23 No.248 S49年5月

 

繰返し負荷応力の引張側応力を受けるとき、き裂の先端が塑性変形して鈍化あるいは開口することによりき裂が進展し、続いて起こる圧縮工程で再鋭化することにより、1山分のストライエーションが生じます(図4)。このことから、1サイクルごとの間隔により、亀裂進展速度が求められます。

図4 ストライエーションの形成機構
  出典:金属破断面写真集   監修 小寺澤良一  テクノアイ  S60

 

疲労破面は、マクロ的にはぜい性破面ですが、延性ス トライエ ーシ ョンの場合は、かなりの凹凸と、蛇行すべりなどと本質的に同じものと考えられるすべり模様が観察されて、微視的には著 しい塑性変形を受けた ことを示 しています。

ストライエーションは、き裂の伝搬方向に凸のゆるい曲線になっていることが多いため、き裂伝ぱ方 向がわかります。

また、ストライエーションの生成には、大気中の酸素が関与するといわれており、真空中ではストライエーションは形成されません。

 

また、高力アルミニウム合金などの硬い材料が、腐食性ふん囲気中で繰返し応力を受ける場合などでは、ぜい性ストライエ ーション(brittle striation)が認められることがあります。この場合の破面は、へき開面に沿ってお り、平坦で塑性変形をあまり伴っていません。ストライエーションは円弧状で、これに直角に放射状にリバーパターン(river pattern)が出現します(図5)。

ぜい性ストライエーションの形成機構は、延性ストライエーションと似 ていますが、ぜい性ストライエーションでは、応力が小さい間は、き裂はへき開面に沿ってぜい性的に進展し、応力が大きくなると多少の塑性変形が起こり、き裂先端が鈍化、進展が停止し、ストライエーションが形成されることになります(図4)。

図5 ぜい性ストライエーション
  出典:フラクトグラフィ(1)(破面解析)  小寺沢良一  材料Vol.23 No.248 S49年5月

 

なお、ストライエーションは、アルミニウム合金や、銅合金などの面心立方金属では発生しやすいですが、鉄系合金などの体心立方金属では発生しにくいといわれています。

 

 



まとめ

・ビーチマークもストライエーションも、疲労破面に特徴的にあらわれます。

・ビーチマークは、肉眼などでマクロ的に、ストライエーションは電子顕微鏡などでミクロ的に観察されます。

・ストライエーションについてのもう少し詳しい説明は、以下の項目をご参照ください。

      金属破断面の見方 5.3 粒内破壊

 

 

 

参考文献
金属破断面写真集   監修 小寺澤良一  テクノアイ  S60年
フラクトグラフィ(1)(破面解析)  小寺沢良一  材料Vol.23 No.248 S49年5月
ASM HANDBOOK Vol.11 Failure Analysis and Prevention 2002年

 

引用図表
図1 ビーチマーク  出典: Fatigue Cracking and Fractography
図2き裂発生から破断に至る過程の模式図
  出典:最近のフラクトグラフィとその応用 1. 疲労破壊   森要、中村春夫 材料Vol.47 No.6 1998年6月
図3 延性ストライエーション
  出典:フラクトグラフィ(1)(破面解析)  小寺沢良一  材料Vol.23 No.248 S49年5月
図4 ストライエーションの形成機構
  出典:金属破断面写真集   監修 小寺澤良一  テクノアイ  S60
図5 ぜい性ストライエーション
  出典:フラクトグラフィ(1)(破面解析)  小寺沢良一  材料Vol.23 No.248 S49年5月
アイキャッチ画像
 /ビーチマーク  出典:金属破断面の見方  吉田亨  に追加
 /ストライエーション:  出典:Deformation and Fracture Mechanics of Engineering Materials

 

MOD:2023/10/24
Add: 2021/05/07
Add: 2017/8/11
ORG: 2016/11/20