パリス則(Paris’ law)

パリス則(Paris’ law)

 

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1. 応⼒拡⼤係数範囲とき裂進展速度の関係

金属材料の疲労とは、繰返し負荷が加わることにより、強度が低下してき裂の発生して破壊に至る現象です。通常は1回の引張負荷では破壊を⽣じない応⼒でも、これが繰返し負荷されることにより材料にき裂が発⽣し、進展して破壊に⾄る現象を疲労といいます.

疲労寿命は、き裂が発⽣するまでに要した繰返し数と、き裂が進展して材料が破壊するか、あるいは任意のき裂⻑さにまで進展するのに要する繰返し数の和で定義されます。

疲労特性を評価するためには、以下に示す2種類の試験法が⽤いられます。

一つ目は、き裂(あるいは、き裂状の切⽋き)を含まない平滑試験⽚に、応⼒あるいはひずみ振幅を負荷して、繰返し変形を与えて、試験⽚が破断するまでの繰返し数を求めるもので、⼀般に疲労試験といわれるものです。この試験により、S-N曲線(S:応⼒振幅、N:破断までの繰返し数)が得られます。疲労試験によって得られる寿命は、疲労き裂の発⽣と進展の両⽅の過程を含みます。通常、き裂発⽣までの繰返し数は、全寿命の90%近くを占めますので、この試験は疲労き裂発⽣に重きを置いた⾒⽅になります。なお、ひずみ制御で⾏う、破断までの繰返し数が少ない試験を低サイクル疲労試験、応⼒制御で⾏う、破断までの繰り返し数が多い試験を⾼サイクル疲労試験と呼んで区別することもあります。

S-N曲線の例を図1 に示します。縦軸は繰返し応力またはひずみの振幅を、横軸を繰返し数で表され、通常の鉄鋼材料では、繰り返し数が少ない間は右下がりで低下しますが、105 ~ 10回程度の繰返し数で疲労限度があらわれ、途中で横軸に平行になります(図の(a))。アルミニウムなどの材料では平衡状態になるポイントがありません(図の(b))。

図1 S-N曲線  出典:機械設計TEXT  西山卯二郎

 

二つ目は、材料は、微小なき裂などの⽋陥を含んでいるものとし、その進展を破壊⼒学的に解析することによって材料の寿命を取り扱う試験です。これを疲労き裂進展試験といいます。本試験では、⾮破壊検査等で検出可能な⽋陥⼨法を基準として初期き裂⻑さを規定し、このき裂が破壊靱性値等を基準として決まる、ある臨界⻑さまで進展するの 必要な繰返し数を、疲労寿命として定義します。

疲労き裂進展特性は、一般には図2の様に表されます。\( a \)をき裂進展量とすると、縦軸は疲労き裂進展速度\( (da/dN) \)、横軸は応力拡大係数範囲(\( \Delta K = K_{ max } - K_{ min} \))を、両軸とも対数で表示されます。図2は3つの領域に分けられます。

第Ⅰ領域は、進展速度が非常に遅く、ある\( \Delta K \)以下では、実用上はき裂が進展しないと考えることができます。このときの\( \Delta K \)を下限界応力拡大係数範囲と呼び、\( \Delta K_{ th } \)と表します。多くの鋼材では、\( 3 ~ 8MPa\sqrt m \) 程度の値になります。

第Ⅱ領域は、き裂が安定成長する領域で、\( log(da/dN) \)と\( log(ΔK) \) との間には、直線関係が成り立ちます。

第Ⅲ領域は、へき開破壊や不安定延性破壊によりき裂進展速度が急激に大きくなる領域です。\( \Delta K \)が\( K_{ c } \)を超えると一気にき裂が進行して、不安定破壊と呼ばれる現象が起こります。\( K_{ c } \)はき裂を有する部材の破壊強度を表し、破壊じん性値と呼ばれます。

図2疲労き裂進呈特性  出典:”Suranaree University of Technology” TEXT 2007年  元文献不明

 

 

2. パリス則

疲労き裂進展特性は、3つの領域に分けられますが、き裂が安定成長する第Ⅱ領域について、\( log(da/dN) \)と\( log(ΔK) \) との間には、直線関係が成り立つことを、パリス(Paul C. Paris)とアードガン(F. Erdogan)が明らかにしました(1963年)。これは、パリスの疲労き裂進展則と呼ばれるようになりました。一般的には、パリス則(Paris’ law)といいます。

すなわち、

\( \displaystyle\frac{ da }{ dN } = C \cdot ( \Delta K )^m \)

ここで、
\( \displaystyle\frac{ da }{ dN } \):き裂進展速度
\( \Delta K \):応力拡大係数範囲
\( C \):材料定数;材料のき裂進展速度の初期値
\( m \):材料定数;応力拡大係数の指数

こう配を示すmについては、金属材料ではm = 2 ~ 7と言われています(図3)。パリス則を提案したパリスの論文ではm=2 ~ 4とされているそうです。

図3パリス則のパラメータmの範囲  出典:Journal of the Mechanics and Physics of Solids 9 September 2008

 

 

参考文献
疲労およびクリープき裂進展とき裂長さ計測技術   コベルコ技法?
6.パリス則/有効応⼒拡⼤係数によるき裂伝播寿命評価  日本財団 図書館
機械設計   西山卯二郎
”Suranaree University of Technology” TEXT 2007年  元文献不明
One, no one, and one hundred thousand crack propagation laws: A generalized Barenblatt and Botvina dimensional analysis approach to fatigue crack growth     Michele Ciavarella, Marco Paggi, Alberto Carpinteri    Journal of the Mechanics and Physics of Solids 9 September 2008

 

引用図表
図1 S-N曲線  出典:機械設計TEXT  西山卯二郎
図2疲労き裂進呈特性  出典:”Suranaree University of Technology” TEXT 2007年  元文献不明
図3パリス則のパラメータmの範囲  出典:Journal of the Mechanics and Physics of Solids 9 September 2008

 

 

ORG:2023/11/18