5.軟らかいものを測る

5.軟らかいものを測る

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ものづくりの現場で、硬さ試験を行う対象になるのは、硬化処理された金属材料からクッション材のような発泡材料まで広い範囲にわたっています。

金属材料では、機械特性と硬さとの間にある程度の相関関係があるので、JISで各種硬さの測定方法が決められています。

軟質材料では、ゴムやプラスチック材料には、デュロメータががよく使用されます。
スポンジやシートクッションなどについては、発注者と生産者との間で、それぞれ独自の測定方法を定めていることが多いです。

本項では、測定方法が比較的明確に定められている、ゴム材料、プラスチック材料の硬さの測定について考えます。

1.ゴム、プラスチック材料の硬さの測り方

ゴム・、ラスチック材料の硬さ測定は、被測定物の表面に圧子(押し針とかインデンタとか呼ばれる)を規定の押込み荷重で押込み、被測定物を変形させて、その変形量(押込み深さ)を測定、数値化する方法を採っています。

押込み荷重を得る方法としては、スプリングを用いた「デュロメータ硬さ」と、分銅等により一定の静荷重を負荷するようにした「国際ゴム硬さ(IRHD;International Rubber Hardness Degree)」が一般的です。

これらの試験機では何れも、圧子の形状・サイズ、押込み荷重を変えることで広い範囲の硬さをカバーしています。この2つの硬さ試験のうちでもデュロメータは、ハンディタイプの簡便な硬さ計ですので、非常に普及しています。

2.デュロメータ(Durometer)

デュロメータという名称は、最初にこのタイプの硬さ計を製造した、米国のショア(Shore)社の商品名だったといわれています。それが一般名称化した結果、現在では例えば、ISOでも”Type A durometer” と、デュロメータという名前が使用されています。

デュロメータによる硬さの測定については、いろいろな規格があります。同一の測定対象でも準拠する規格によって数値が異なりますので、必ずどの計器で測定したかを、明確にしておく必要があります。

(1)JIS K 6253-2012/ISO 7619-1(2010)に準拠したデュロメータ

JIS K 6253-2012は、ゴムの硬さ試験に関する規格ですが、測定対象の硬さに応じて使い分けるために、3種類のデュロメータ(タイプA,D,E)が規定されています。

この3種類のうち、中硬さ(一般ゴムなど)用のタイプA(先端押し針形状;円錐台形)と、高硬さ用のタイプD(先端押し針形状;円錐形)は、国際規格であるISO 7619の規定と整合しています。
低硬さ用のタイプE(先端押し針形状;半球形)は、当初はJIS規格独自に規定されたものですが、ISO7619が2004年にISO 7619-1と、ISDO 7619-2とに分割された際、ISO 7619-1に規定されました。一方、JIS規格も、ISO7619-1の2010年の改訂を受けて、JIS K6253-2012として、新たに規定されました。

(2)旧JIS K 6301のスプリング式硬さ試験機

過去に、ゴム試験の総合規格として、旧JIS K 6301がありました。この規格のスプリング式硬さ試験機のA形は、測定対象の硬さとしては前項のタイプAデュロメータと共通ですが、スプリング荷重と押し針の高さ寸法が若干異なります。測定値も僅かながら差がありました。

過去において、ショア社のデュロメータを見本にJIS規格の硬さ試験機を制定するに当たって、スプリング荷重値をインチ・ポンド系からCGS単位系に換算した後、数値の丸めを行なったことおよび、当初、ショア社のデュロメータをそのまま規格化した米国規格ASTM D 2240の内容が、国際化の流れに沿って改訂されたことが、この差異の要因と考えられます。

類似した2種類の硬さ計のある状態が、長期にわたって問題となっていましたが、国際規格ISOと整合したゴムの硬さ試験規格として、前項のJIS K 6253-1997が新たに制定され、その後JIS K 6301は1998年に廃止されました。公的な規格の上では明確にISOに準拠した硬さ計に統一されました。

しかし、この旧JIS K 6301のスプリング式硬さ試験機は、日本国内で過去に多数生産されて使用されていました。おそらく現在でも、国内に存在する硬さ計として、このタイプの硬さ計が残っていますので、注意が必要です。

同じJIS規格のスプリング式硬さ試験機でC形は、硬質ゴム、エボナイトの硬さ測定用として規格化されていたものです。これも、A形以上にJIS規格独自のものでした。現在でも、特定の用途で便利な硬さ計として使用
されています。

(3)SRIS 0101のスプリング式硬さ試験機

SRIS 0101は日本ゴム協会標準規格の一つで発泡ゴム(スポンジなど)の試験方法に関する規格です。
この硬さ計は、タイプAデュロメータでは、測れない(測りにくい)軟質材料の硬さ測定用で、SRISに規格化される前から、アスカーC型硬度計として広く使用されてきたものです。

測定対象としてはスポンジ、ウレタンフォームなどの発泡材料、軟質ゴムなどのほかに、繊維の巻糸(チーズ、コーン)の巻張力やプラスチックのフィルムロールの巻張力の代替値としての硬さ測定用に用いられています。

JIS K 6253-2012のタイプEデュロメータは、低硬さ用の硬さ計として、このスプリング式硬さ試験機を基本にし、スプリング荷重をタイプAデュロメータと共通にするなどの修正を加えて規格化されたものです。ISO 7619-1 では、Type AO durometer という名称になっています。

(4)ASTM D 2240の各デュロメータ

ASTM D 2240には、タイプA、タイプDのほかに5種類のデュロメータが規定されています。それらの概略は次の通りです。

1)タイプB、タイプCおよびタイプDO
これらは、いずれも測定対象の硬さとしては、タイプAとタイプDの中間に位置するものです。このうち、タイプCは旧JIS K 6301のスプリング式硬さ試験機C形と類似しています。

2)タイプOおよびタイプOO
この2タイプは、タイプAより軟らかい材料を測定対象とし、タイプOOは、より軟らかい範囲をカバーしています。測定対象としては、JIS K 6253のタイプEと類似していますが、得られる測定値は、かなり異なります。

(5)その他のデュロメータ

これらのデュロメータの他にも、公的規格には規定されていないものでの、各硬さ計メーカが自社のオリジナルとして開発したものや、ユーザーの特定用途に使いやすいように製作されたものがあります。
これらはいずれも基本的には、押し針(圧子)の寸法形状とスプリング荷重を様々に変更して、使用目的に合わせたものです。

 

 

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ORG: 2016/11/23