1.2 油圧の利用

1.2 油圧の利用(Use of hydraulics)

 

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油圧装置とは 油圧装置の基本は、電動機またはエンジンに接続したポンプが、タンクから吸い上げた油を、いろいろな種類のバルブを経由してモータやシリンダといったアクチュエータに送り込み動きに変換するものです。
油圧装置の多くは、一定回転の電動機とポンプとを組合わせますが、ポンプを可変制御したり、バルブを比例制御したり、サーボ機構を付加することにより、油圧装置として省エネルギー化やアクチュエータの制御性を向上させ ています。
最近では、ポンプの回転数そのものを電動機をインバータ制御することにより、さらに大きな省エネ効果を実現させたり、高速応答の電動サーボモータによりポンプ回転数を制御することで、回路が必要とする流量や圧力を、適正に制御する油圧装置も増えてきており、油圧装置の概念は、油圧機器の進歩も含め、大きく進化しています。
本項では、具体的な油圧の適用分野について概観したいと考えます。

 

(1)農業機械

農業機械の代表的な例としては以下のようなものがあります。
 ・耕耘(うん)整地用機械(トラクタなど)
 ・栽培管理用機械(田植機など)
 ・収穫用機械(コンバインなど)
 ・乾燥・調整用機械
 ・穀物加工用機械
これらの農業機械は、油圧シリンダや油圧バルブなどの多くの油圧機器が用いられています。特に田植え機やトラクタ、コンバインなど走行する農業機械については、走行装置として、油圧変速装置が用いられています。
一般的には、HST(Hydro-static Transmission)と言われています。

(2)特装車

特装車というのは、トラックの荷台部分にいろいろな設備を搭載している自動車です。街中でよく見かけるのは、コンクリートミキサー車です。コンクリートは製造直後は柔らかくて流動性があります。この柔らかい状態のコンクリートを「生コンクリート(生コン)」と呼びます。
生コンは時間経過とともに、性状が変化して最終的には固化します。なるべく製造直後の状態を保つために、内部にコンクリートを撹拌するためのブレードを取付けたドラムと呼ばれる容器を低速で回転しながら、製造工場から使用現場まで運搬します。
生コンは比重が大きく、高粘性で砂利等を含んだスラリー様のものですので、ドラムの回転のために非常に大きなトルクを必要とします。また車載機器のため質量や大きさに制限があり、油圧機器が適用されます。
ドラムの回転が停止すると、生コンの固化が急激に進みます。従って生コンが入った状態でのポンプ・モータが故障するとドラムが使用できなくなってしまいます。そのため、非常に信頼性の高い油圧機器が要求されます。

(3)荷役・運搬機械

重量物のハンドリングの目的とする、クレーンやフォークリフトがこの分野の代表的な機械です。
例えば、フォークリフトに装着されている油圧機器は、フォークの上下、マストの傾斜、パワーステアリングなどに用いられています。

(4)土木・建設機械

土木・建設機械では、開回路、閉回路何れの油圧機器も用いられています。管理人が在籍していた企業は、開回路の油圧機器の製造がメインでしたが、この分野の特に足回りの油圧機器のシェアが大きかったです。

(5)自動車・二輪車

自動車では油圧パワーステアリング、二輪車ではサスペンション、ステアリングダンパなどに油圧機器が適用されています。

(6)鉄道

有名なものとして、新幹線にセミアクティブ振動制御装置が搭載されています。

(7)航空機

プロペラの可変ピッチ気候や、主翼・尾翼などのフラップ制御などに適用されます。また、ジェットエンジンの燃料システムは、航空機用燃料を作動油とした精密な油圧機器になります。

(8)船舶

舵の操作やサイドスラスタなどに、油圧システムが用いられます。

(9)工作機械

MC主軸クランプや、自動工具交換装置などの駆動源として油圧機器が適用されます。

(10)半導体製造機器

例えば、パスモ、イコカなどのICチップ入りのカードを製作する際、フィルムと基板を圧縮・圧着させるための真空加圧式ラミネータや真空ホットプレス機などに用いられます。

(11)風力発電

地球温暖化の最大要因は化石燃料から排出される二酸化炭素であり、これを減少させるためには、いわゆる再生可能エネルギーが求められます。代表的なものとして、太陽光発電、風力発電があげられます。日本では、太陽光発電が主流でしたが、経済御安全保障の面から日本独自もしくは自由主義諸国の技術で建設される風力発電に注目が集まっています。
風力発電へに油圧の適用は、大きく3つあります。一つ目は、発電機に回転を伝達する「動力伝達系」、二つ目は、ブレード(羽)の角度を変える「ピッチ系」、三つ目は、風が吹いている方向にナセルの向きを変える「ヨー系」です。

(12)ロボット

ロボットの開発初期には、油圧駆動のロボットが多くありましたが、液漏れ等の問題や電気制御の精度向上なので、一般のロボットは電気式に置き換わりました。
ただ、災害時にロボットが適用されることも多いです。地震の際に、油圧レスキューロボットが活躍しました。

 

参考文献
油圧の利用   日本フルードパワーシステム学会刊行物

ORG:2023/12/19