3.2.4 水の混入とその影響

3.2.4 水の混入とその影響(Water contamination and its influence)

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作動油は、作動油自体(油性系)もしくは添加剤(水系)により防錆作用を付与されています。特に油性系の作動油では、水分が混入すると、潤滑能力が著しく低下したり、発錆により、作動が円滑に行われなかったり摩耗の原因になります。
高温で使用する場合、水分の蒸気圧によりキャビテーションを発生させる場合もあります。
また、水分は金属(特に銅及び銅合金)の触媒作用により、作動油の酸化を促進し、作動油の寿命を縮めます。

作動油自身、吸湿性があり、設置場所や季節(梅雨時)により、高湿度の環境では大気中の水蒸気が凝縮して作動油内に混入することもあり、メンテナンスには十分な注意が必要です。

 

1. 水分混入量と装置の使用限界

表3.2.4.1は、作動油の水分混入量による使用限界を示します。

表3.2.4.1 作動油の水分混入量による使用限界

油の銘柄によりますが、250ppmを超えると、わずかに白濁し始めます。

2.水分測定法

(1)現場的方法

回路中を流れている作動油を採取して、透明な容器に移して、水分の有無や白濁の有無を確認します。ここで混入が見られた場合には、ただちに定量的に調査する必要があります。

1項でも述べたように、もちろん銘柄にもよりますが、水分混入量が250ppmを超えると白濁が認められます。常時使用している油圧装置の場合は、作動油の白濁が認められる場合は、ただちに全量交換すべきです。

(2)分析による方法

作動油のような微量の水分量を問題とする場合は、化学的な方法として、カールフィシャー法が最適です。本来は冷凍機油や絶縁油など、極端に水分混入を嫌う要求に対して適用されてきましたが、現在では航空機用などの鉱油系作動油の測定にも広く使用されています。

余談ですが、筆者もたまたま別の用途に使用されていた、カールフィッシャー水分計を使用できる機会があったので、これを用いて何回か作動油の水分測定を行った記憶があります。

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図3.2.4.2 カールフィッシャー水分計

また、もう少し簡易的ではありますが、高分子式の静電容量式センサを用いて測定する方法があります。この方式はオンラインで常時監視ができるメリットがあり、原則屋外で使用される建設機械では、標準的に装備する主機もあります。

図3.2.4.3 (株)テクネ計測

3.空気の巻込みとの識別方法

回路中を流れている作動油の場合、油中に気泡を巻き込んだ状態と水分混入の状態とが、同様に観察される場合があります。

透明な容器に、問題となる作動油を採油して、常温もしくは若干湯煎を行い温めると、しばらく放置しておきます。すると、

(1)空気の巻込みの場合、空気の方が軽いので、比較的早く底部から清澄(透明)になり、気泡が上部にまとまります。

(2)水分混入の場合

長時間放置しても、白濁が解消しないか、上部から清澄になり底部に水分が分離し始めます。

 

4.水分混入時の注意点

水分混入については、ブリーダプラグ等を通して油タンク内に外部空気の湿気が取り込まれたり、場合によっては、オイルクーラーの伝熱管の腐食により、冷却水系の水に作動油が混入して環境汚染を引き起こす場合もあります。
この場合、冷却水を汚染することにもなり、環境への影響も考慮する必要があります。

 

 

参考資料
油圧教本  増補改訂版   日刊工業新聞社
実用油圧ポケットブック    ㈳日本フールドパワー工業会

 

引用図表
[表3.2.4.1] 作動油の水分混入量による使用限界  実用油圧ポケットブックより
[図3.2.4.2] カールフィッシャー水分計   京都電子工業(株)殿HP
[図3.2.4.3] 静電容量式水分計       (株)テクノ計測殿HP

 

ORG: 2018/3/13