係数法による油の清浄度の表し方

係数法による油の清浄度の表し方(cleanliness of particle count method)

 

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1. はじめに

油圧作動油の清浄度の表し方にはいろいろありますが、一番よく知られているのが、粒子の大きさごとに、何個あるかを数える係数法です。係数法は、液体中の異物の含有状態を評価する他、空気などに含まれる粒子の評価にも使われます(規格は別です)。

本項では、一般的には油圧作動油の清浄度の評価として使用されることが多いですが、工業製品に使用される油系の液体(潤滑油、油圧作動油、燃料油等)の清浄度についても同じように表されますので、油系液体の清浄度についてのいろいろな規格について見ていきましょう。

 

2. 汚染の基礎

油系液体の清浄度をあらわすもモノとしては、本コンテンツに示す固体粒子の数の他、水分の含有率も含まれることが多いです。水分については、本編になかで詳しく示したと考えます。

液体中に含まれる固体汚染物質は、大きさや形状、材質、含有量等、様々なものが有ります。どのような汚染物質が有害かは、その液体を使用している機器の主に隙間の大きさによりますが、例えば、油圧システムでは、機器に最も悪い影響を与える汚染物質のサイズは、6~14μmといわれています。これば、人の裸眼では確認できない大きさです。人は裸眼では、40μm程度が視認できる限界といわれています。

 

3, 係数法による清浄度の評価方法

係数法による清浄度の評価方法にはいろいろありますが、参考資料に記載するものを中心に記述します。

3.1 ISO4406-1999

ISO4406-1999は、作動液100ml中に含まれる固体粒子を数えることにより、液体中の汚染物質の分布状況を示すものです。現在では油圧作動油の清浄度を評価するのに最もよく用いられています。

実際に数えた数をそのまま用いると、表示する数値の範囲がとても大きくなりますので、2の対数を使用したISOコード番号に変換して、汚染の程度を表します。

このコードは、油圧システムの摩耗や損傷に影響を与える代表的な粒子径でくくって示されます。ISO4406-1999の場合は、4µm(c)、6µm(c)、14µm(c)の3つのくくりで考えます。それぞれ、4µm(c)以上の粒子数、6µm(c)以上の粒子数、14µm(c)以上の粒子数のカウント値に基づいてコードが計算されます。

ここで、µm(c)の(c)の意味は、粒子径の大きさのカウントの仕方を示しています。この場合は、粒子の投影面積を、等価円に換算したときの、等価円の直径を粒子の大きさとしたものです。この粒子の大きさの表し方を”ISO MTD”と表記することがあります。

例えば、4µm(c)を超える粒子の数が700,000カウントの場合は、下の表からISO 20のコードが対応します。同様に、6µm(c)を超える粒子の数が140,000カウントの場合は、ISO 18、14µm(c)を超える粒子が7,000カウントの場合は、ISO 13が対応します。

この場合の、作動液の清浄度は、ISO 20/18/13と表されます。

表1作動液清浄度:ISO4406:1999

 

3.2 ISOコード(燃料汚染度評価)

ISO4406-1999は、液圧システム以外にも燃料の汚染度の評価にも使用されます。但し違いは、粒子のカウントが1mlあたりになることです。従って、元のカウント数は、液圧システムの作動液の清浄度評価の場合の概ね100分の1になります。

表2 燃料油清浄度

 

3.3 NAS1638-1963

一般的には、NAS等級といわれているもので、日本では現在でも液圧システムの清浄度評価に使用されています。ただ世界的には、液圧システムについては、2.1項で示した、ISO 4406:1999 が、幅広く採用されています。

NAS等級の大元は、米国で航空宇宙コンポーネントの清浄度評価の基準として決められたものです。一時期は、世界中で最も広く使われた規格です。ただ、1963年の制定から、一度も改訂されず、粒度分布測定は光学顕微鏡による測定(投影形状の最大長さを粒子の大きさとする)を基礎とし、現在行われている自動粒子計測器による投影面積等価直径((c))の基づく粒径分布には適合していません。

表3はNAS等級にはNAS等級の粒度を等価直径で示した場合の粒径も示しています。

数値は、ISO4406と同様に2の対数を使用して、実際の粒子カウント数を等級(class)に変換します。NAS等級は、あらかじめ5種類の粒径サイズの範囲を決めて、その範囲にある粒子数をそれぞれカウントして、最も等級が大きくなったものをNAS等級として示します。

今後はできる限り、ISO4406に移行することが望ましいです。

表3 NAS等級

 

3.4 SAE A4059 rev E テーブル

粒子サイズのカウントは6種類の粒子径を下限値として粒子数をカウントします。ISO4406と同様に、ほとんどの場合に2の対数を使用して、実際の粒子カウント数をサイズコードに変換します。

表4 SAE A4059 revE

 

3.5 GOST 17216-2001

GOST基準は、ロシア政府により導入された標準化技術委員会TK184G 「 Ensuring Industrial Cleanliness 」によって開発されたものです。

計測および認証の標準化政府間委員会( 2001 年 5 月 24 日付プロトコル. No.19 )によって採択されています。

表5 GOST 17216

 
3.6 NAVAIR 01-1A-17

米国の海軍軍用機の油圧システムの作動液に対する海軍規格です。Aviation Hydraulics Manual (01-1A-17:2006)のTable 1 “Navy Standard for Particulate Cleanliness”に定義されています。

表6 NAVAIR 01-1A-17

 

4. MTDとACFTD

これらは、粒子のカウントの際に、粒径をどのように評価するかを定めたものです。
MTD:ISO11171(校正または光学顕微鏡カウント-投影面積等価直径に基づく粒径)
ACFTD:ISO4402(校正または光学顕微鏡カウント-最長寸法に基づく粒径)
で、粒径の取り方に差異が有ります。具体的には下の図を参照してください。
旧のJIS規格(JIS B9932:2003)までは、MTD、ACFTDが並立していましたが、JIS B9932:2010では、ISO11171にのみ準拠するようになりました。

図7 MTDとACFTD

 

5. コンタミナントの大きさ

一般的な小寸法の物質のサイズを示します。

図8 コンタミナントの大きさ

 

 

 

参考文献
Parker Hanifin Corporation 汚染基準についての資料 2011

 

引用図表
表1作動液清浄度:ISO4406:1999
表2 燃料油清浄度
表3 NAS等級
表4 SAE A4059 revE
表5 GOST 17216
表6 NAVAIR 01-1A-17
図7 MTDとACFTD
図8 コンタミナントの大きさ

ORG:2023/01/11