6.1 無電解めっきの原理(Principle of Electroless plating)

6.1 無電解めっきの原理(Principle of Electroless plating)

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無電解めっきは、電気エネルギーを使わないで化学反応によりめっき皮膜を析出させる表面処理方法です。化学めっきともいわれます。無電解めっきは、大きく置換めっきと還元めっきとに分類されます。

1. 置換めっき(Displacement plating)

イオン化傾向の大きい金属(電位が卑な金属)を、イオン化傾向の小さい金属イオンを含む溶液に浸漬します。すると、イオン化傾向の大きい金属が、溶液中に溶解して金属イオンになり、電子を放出します。放出された電子は、イオン化傾向の小さい金属を還元して、メッキが析出します。これを置換めっきといいます。

例として、鉄板への銅めっきについて考えます(図6.1.1)。硫酸銅溶液中に鉄を浸漬すると、
(1)鉄が硫酸銅溶液中に溶解して鉄イオンになるときに、電子を放出します。
溶解: イオン化傾向大;鉄 → 鉄イオン+電子
Fe → Fe2+ + 2e

(2)すると、硫酸銅溶液の銅イオンが放出された電子を受け取って銅が鉄の表面に置換析出します。
めっき: イオン化傾向の小さい金属イオン+電子 → 金属(めっき)
Cu2+ + 2e → Cu

めっき処理品である鉄板は還元剤の役割をしているので、鉄板の表面が、銅でおおわれると反応は終了します。また、反応速度は、イオン化傾向の差が大きいほど早くなります。

[図6.1.1] 置換めっき

2. 還元めっき(Reduction plating)

溶液中の還元剤が、触媒の存在下で酸化されて電子を放出します。この放出された電子が溶液中の金属イオンを還元して析出めっきするので還元めっきと呼ばれます。還元析出した金属が、次々に触媒の働きをするために自己触媒めっきとも呼ばれます。

例としてニッケルめっきを考えます(図6.1.2)。ニッケルめっきでは、
(1)還元剤として次亜りん酸塩がが用いられます。この還元剤は、触媒となる金属(この場合は鉄)が存在すると、酸化されて亜りん酸になり、電子を放出します。
還元剤(+触媒) → 酸化生成物 + 電子
H2PO2 (ニッケル,鉄) → H2PO3 + e

(2)この放出された電子により溶液中のニッケルイオンが析出します。
Ni2+ + 2e → Ni

(3)この析出したニッケルイオンが、今度は次亜りん酸塩の酸化のための触媒となって、次々にニッケルが析出します。

触媒のない状態では、反応は起こらず、触媒の存在があって初めて析出反応が起こります。触媒となる金属は、還元剤により異なります。次亜りん酸塩の場合は、鉄やニッケル、パラジウム、亜鉛(ニッケル)などが触媒になります。

銅、黄銅などの銅合金は、触媒活性を示さないので、銅に対して次亜りん酸塩を還元剤とする場合は、初期に通電したり、電気めっきによりストライクニッケルめっきを行います。

 

[図6.1.2] 還元めっき

3. 銀鏡反応(silver mirror reaction)

硝子などの不動態に銀メッキをするのに実用的に使用されています。還元めっきの一種です。銀鏡反応は2.項の自己触媒めっきとは異なり、非触媒型に分類されます。薬品の還元能力によって、金属の析出が進行するため、めっき処理の対象品だけでなく、めっき層の内面や治具にもめっきされてしまいます。そのため、めっき液の劣化が早く、厚いめっきの生成は難しいです(図6.1.3)。

[図6.1.3] 銀鏡反応

 

 

 

参考文献
トコトンやさしいめっきの本     榎本英彦   日刊工業新聞社
金属表面処理の基礎知識4    仁平宣弘   イプロス

 

引用図表
[図6.1.1] 置換めっき    参考:トコトンやさしいめっきの本
[図6.1.2] 還元めっき    参考:トコトンやさしいめっきの本
[図6.1.3] 銀鏡反応     参考:金属表面処理の基礎知識4