6.2 無電解ニッケルめっき(Electroless nickel plating)

6.2 無電解ニッケルめっき(Electroless nickel plating)

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無電解ニッケルめっきは、年率5%以上の伸びで、年々増加の傾向があります。

1. 無電解ニッケルめっきが使用される理由

無電解ニッケルめっきが多用されるようになった主な理由は以下の通りです。

(1) 電気めっきと異なり、電流分布の影響がありません。そのため、複雑な形状の部品に均一にめっきできます。このような特性から、精密機械部品や精密金型、ねじなどに適用されています。

(2) プラスチックやセラミックスなどの非導電性の素材から、各種の金属素材まで、幅広い素材にめっきできます。素材の特性とめっきする金属の特性をうまく利用して応用範囲を広めています。

(3) めっき皮膜中に、還元剤に起因するリンやホウ素などが共析して、非晶質構造になります。その結果、耐食性が向上したり、磁性が無くなったりします。これらの機能を目的とする皮膜を得ることができます。

2. 無電解ニッケルめっきの用途

無電解ニッケルめっきの特性である、耐摩耗性や、耐食性などの特性から、自動車産業をはじめ電子工業や化学工業などいろいろな分野の部品に適用されています(表6.2.1)。

[表6.2.1] 無電解めっきの産業分野での用途

3. 電子部品への適用

無電解ニッケルめっきのリンの含有量は、2~15mass%の範囲で含まれます、リンの含有量が、3%以下は低リン、6~8%は中リン、10%以上は高リンと呼ばれています。一般的な皮膜の場合、リンの含有量は8~10%になります。めっき液のpHや錯化剤(クエン酸、リンゴ酸)、その他の添加剤の種類によって変化することもあります。

リンの含有量によって、めっき皮膜の電気抵抗が異なるので、セラミックス上にめっきして抵抗部品として使用されます。無電解ニッケルめっきは、電子部品に多く使用されています。プリンと基板の配線で独立回路(接点が取れない回路)に無電解ニッケルめっきが行われ、さらにその上に無電解金メッキを行います。

無電解銅めっきと無電解ニッケルめっきは、それぞれ電波と磁気とを防止するために電磁波シールドの目的で、パソコンや、スマートフォン、デジタル家電の筐体に使用されています

4. 無電解ニッケルめっきのベーキング

無電解ニッケルめっきは、熱処理を行うと皮膜の硬さは著しく硬くなり、耐摩耗性が増加します。図6.2.2に示すように、400℃で熱処理を行うと、未処理状態でHv530程度の皮膜硬さがHV1030程度まで上昇します。

[図6.2.2] 無電解ニッケルめっき皮膜の硬さと耐摩耗性との関係

 

 

参考文献
トコトンやさしいめっきの本     榎本英彦   日刊工業新聞社
金属表面処理の基礎知識4    仁平宣弘   イプロス

 

引用図表
[表6.2.1] 無電解めっきの産業分野での用途    トコトンやさしいめっきの本
[図6.2.2] 無電解ニッケルめっき皮膜の硬さと耐摩耗性との関係  トコトンやさしいめっきの本