8.2 陽極酸化被膜の利用

8.2  陽極酸化被膜の利用(Utilization of anodic oxide film)

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陽極酸化被膜は、不動態皮膜や、絶縁性皮膜、防食皮膜などとして利用されます。

 

(1)不動態皮膜としての利用

電気化学の実験でPtが不溶性陽極として用いられるのは、不動態の利用です。これは、Ptが極めて不動態になりやすく、その不動態は極めて安定です。

FeやNiは、陽極電流を切るとすぐ不動態を失います。FeやNiは強い酸化作用が作用する環境でなければ、不動態は維持されないので、不動態皮膜を厚く発達させて他の環境に対する防食に利用する試みは、一般に困難です。

Feのような場合、不動態を利用するためには、合金組成を設計して空気中のような弱い酸化環境でもでも酸化するようにします。ステンレス鋼がこれにあたります。

 

(2)絶縁性皮膜としての利用

絶縁性皮膜では、皮膜中のイオンの移動で皮膜が成長します。皮膜の成長は、皮膜中の電位勾配が6×10-12V/m 程度より小さくなると、イオンの移動ができなくなり皮膜の成長が停止します。

印加電圧の大部分が皮膜部に付加されるため、イオン電流が流れなくなったときに皮膜の成長は停止すると考えられるので、その時の皮膜厚さはその時の印加電圧に比例すると考えられます。得られる皮膜の厚さは、Alでは1.45×10-9m/V、Taでは1.60×10-9m/Vになります。

しかも、絶縁性皮膜の場合σeが極度に小さいことから、皮膜が機械的に完全な場合非常に薄い陵絶縁性皮膜が得られます。この皮膜をバリア層(barrier layer)と呼び、電解コンデンサの誘導体として利用されます。

 

(3)防食皮膜としての利用

陽極酸化被膜は、皮膜物質の絶縁性が高いほど薄膜になります(前項)。そのため、防食を目的とする場合皮膜厚さが厚くなければなならない場合、皮膜の形状を膜中に直径数十μm以下の微細な円筒状の空孔(ポア)を持つ形状にすることにより比較的厚い酸化被膜を作ることが出来ます。そのためには、シュウ酸や硫酸などの少し侵食性のある電解液を用いて、多孔性の皮膜を形成して厚み方向に成長させて、見かけ上厚くします。

この分野で有名なアルミニウムの陽極酸化処理やそれにより得られる酸化被膜を総称して、アルマイト(Alumite)とよびます。アルマイトは日本の理化学研究所によりアルミニウムに対するシュウ酸水溶液中での陽極酸化処理法の研究が行われ、1931年にアルミニウムの陽極酸化被膜を応用して製作された色々な製品につける総称として商標登録されたものです。

図8.2.1 陽極酸化被膜(ポーラス皮膜)

 

 

参考文献
表面処理   日本金属学会

引用図表
図8.2.1 陽極酸化被膜(ポーラス皮膜) アルマイトとは  東栄電化工業HP http://toeidenka.co.jp/alumite.html

 

ORG:2019/2/10