1.3塑性加工製品の精度

1.3塑性加工製品の精度(accuracy of plastic working products)

 

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1.塑性加工法の高精度への取組

多くの塑性加工で、最終製品の形状に近いもの(ニアネットシェイプ;near net shape)が得られます。さらに、冷間鍛造品や板金プレス加工品では、最終製品形状のもの(ネットシェイプ;net shape)が得られており、後加工無しで使用されるものが多くあります。

後工程が省略可能な高精度化の技術が確立されれば、生産性が高まり、生産コストを大幅に低下させることが期待できます。そのため、塑性加工を含む多くの成形加工で、よりネットシェイプ化や高精度化するための技術開発がすすめられています。

例えば、閉そく鍛造や、温間鍛造、冷間鍛造、板金プレス成形でしごき加工や精密打抜きが、高精度化への取組がされています。

 

 

2.塑性加工製品の寸法公差

各種加工法により達成可能な寸法公差の比較を、表1.3.1 に示します。

・冷間型鍛造、サイジング(コイニング)、しごき、精密せん断は、旋削加工なみの加工精度が得られます。
・塑性加工品の精度は、加工機械の動的精度と金型の精度により決まります。
・通常、塑性加工は加工力が大きいので、加工機械、金型の弾性変形が大きく、切削加工や研削加工ほどの高い加工精度は期待できません。
・冷間プレス加工品については、電子部品を中心として高い製品精度が要求されることや、金型加工技術の向上により、加工品精度が著しく向上しています。特に、薄板の打ち抜き品や曲げ加工品は切削加工程度の精度が期待できます。

表1.3.1 各種塑性加工法で達成可能な寸法公差   機械工学便覧 6th ed.  β03-04章他

 

3.JIS規格に規定される寸法許容差

JIS規格では、プレス加工品及び、板せん断加工品、自由鍛造品について寸法公差の規定があります。

JIS B0408:金属プレス加工品の普通寸法公差
JIS B0410:金属板せん断加工品の普通公差
JIS B0418:自由鍛造品の取り代

 

(1)プレス加工品

プレス加工品については、打抜きと曲げ及び絞りについて、普通寸法許容差が決められています。
それぞれ、A級、B級、C級の3等級が決められています。
参考にJISに記載されている表を示します。

表1.3.2 プレス加工品_打抜きの普通寸法許容差   JIS B0408 表1

表1.3.3 プレス加工品_曲げ及び絞りの普通寸法許容差   JIS B0408 表2

 

(2)板せん断加工品

板のせん断加工品は、切断幅については普通寸法許容差及び、真直度、直角度については普通公差が決められています。
それぞれ、A級、B級の2等級が決められています。
参考にJISに記載されている表を示します。

表1.3.4 板せん断加工品_切断幅の普通寸法許容差   JIS B0410 表1

表1.3.5 板せん断加工品_真直度の普通公差   JIS B0410 表2

表1.3.6 板せん断加工品_直角度の普通公差   JIS B0410 表3

 

(3)自由鍛造品

自由鍛造品は、鍛造時の黒皮寸法と機械加工後の寸法との差:取り代に対する許容差を%で規定しています。これを黒皮寸法の許容差として規定しています。

表1.3.7 自由鍛造品黒皮寸法の許容差   JIS B0418 表1

 

 

4.実用的な精度基準

表1.3.8に、プレス加工品についての実用上の精度基準と加工限界を示します。実際の受注・発注の際は、おおむねこの表の値を参考にして取引が行われています。

表1.3.8 プレス加工品の実用的な精度基準と加工限界   機械工学便覧 6th ed.  β03-04章

 


 

まとめ

・塑性加工法の多くは、ニアネットシェイプ品の製作が可能です。

さらに、冷間鍛造品や板金プレス加工品では、最終製品形状のもの(ネットシェイプ;net shape)品が得られており、後加工無しで使用されるものが多くあります。

・後工程を省略可能にする、高精度化技術の確立が求められています。
 例えば、閉そく鍛造や、温間鍛造、冷間鍛造、板金プレス成形でしごき加工や精密打抜きが、高精度化への取組がされています。

・JIS規格では、プレス加工品及び、板せん断加工品、自由鍛造品について寸法公差の規定があります。

・プレス加工品について、実際の取引に使用される精度基準と加工限界を示します。

 

 

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参考文献
機械工学便覧 6th ed β03-04章
Handbook of Metal Forming   Kurt Lange et.al.   Society of Manufacturing Engineers  1985

 

引用図表
表1.3.1 各種塑性加工法で達成可能な寸法公差   参考:機械工学便覧 6th ed.  β03-04章
表1.3.2 プレス加工品_打抜きの普通寸法許容差   JIS B0408 表1
表1.3.3 プレス加工品_曲げ及び絞りの普通寸法許容差   JIS B0408 表2
表1.3.4 板せん断加工品_切断幅の普通寸法許容差   JIS B0410 表1
表1.3.5 板せん断加工品_真直度の普通公差   JIS B0410 表2
表1.3.6 板せん断加工品_直角度の普通公差   JIS B0410 表3
表1.3.7 自由鍛造品黒皮寸法の許容差   JIS B0418 表1
表1.3.8 プレス加工品の実用的な精度基準と加工限界   機械工学便覧 6th ed.  β03-04章

 

ORG:2021/08/28