8.1 ボール盤の種類

8.1 ボール盤の種類(Types of drilling machines)

 

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ボール盤は、穴あけ、タップ加工、リーマ加工、小径のボーリング加工などに使用されます。

ボール盤の代表的なものは、主軸が定位置にある直立ボール盤( upright drilling machine )と、主塾の位置を任意の位置に移動でき、より大きなワークに対応できるラジアルボール盤( radial drilling machine )、2 ~ 6 個の直立ドリルをインライン配置で接続して構成される多頭ボール盤( ギャングボール盤;gang type drilling machine )があります。何れも、人により操作されるので、多量生産向けよりも中少量生産向けで用いられることが多いです。

この他に、複数のドリルヘッドを放射状にタレットに取り付けられた、多軸数値制御ボール盤も含まれます。これについては、プログラムに従って加工を進めますので、比較的多量生産にも適用されます。

 

(1)直立ボール盤( upright drilling machine )

最も一般的な機械は、直立ボール盤です。主要な構造を、図8.1.1 に示します。

図8.1.1直立ボール盤  出典:Manufacturing Process Selection Handbook, Manufacturing Processes

 

電動機より変速装置として多段プーリーを組合わせた段車を経て、主軸( main spindle )に動力を与えます。ドリルの送り機構は、自動送りと手送りの両方が適用できます。

テーブル( table )は、コラム( column )に沿って上下するテーブルアーム( table atm )に取付けられて、小物ワークについてはテーブルの直接取り付けて工作します。大物ワークについてはテーブルを横にずらせて、ワークを直接ベース上に載せて工作します。通常、テーブル、ベースにはワークを取付けるためのT溝が設けられています。

主軸は、スリーブ内の軸受で支持されていますが、推力が大きくなるためスラスト軸受を装着しているものが多いです。主軸端は、モールステーパの穴を持ち、ここにドリルあるいはドリルチャックを取付けて工作を行います。

 

直立ボール盤の小型のものとして卓上ボール盤( bench drilling machine )があります。これは、手加減で加工を行いますが、主軸の回転数は高く10 000 rpmぐらいのものもあります。特に1mm以下の穴をあけるのに用いられるものを、高速ボール盤( high speed drilling machine )といい、圧縮空気により主軸に設けられた羽根車を回転させるタービン駆動や、Vベルトで駆動するものがあります。この種の機械では主軸回転数は、2 ~ 30 000 rpmに達します。(高速ボール盤については、現役時代(35年くらい前)に、化繊紡織用のノズルを作る会社を訪問させてもらったときに見せてもらった記憶があります。0.1mm程度の穴をあけておられたように記憶しています。結構、タービンの音がしていたように記憶しています。)

 

 

(2)ラジアルボール盤( radial drilling machine )

ワークが大きくなると、ワークを移動させてボール盤の主軸の真下に穴加工位置を持ってくるよりも、ボール盤主軸の位置を移動させる方が、作業が容易になります。そのために、主軸の位置を、コラムのまわりの回転と、アーム上の上下移動によって、所定の位置に主軸ヘッドが来るようにした機会が、ラジアルボール盤です。主要な構造を 図8.1.2 に示します。

図8.1.2ラジアルボール盤   出典:小川鉄工株式会社カタログ, Manufacturing Processes

 

ベースの端にあるコラムから、水平にカンチレバー状にアームが出ており、アーム上に主軸ヘッドが搭載されています。加工の際は、アームのコラム側に設置された電動機により、アームをコラム上での上下移動と回転を、および主軸ヘッドのアーム上の水平移動を行います。主軸ヘッドを穴加工位置に持ってきた後、穴加工を行います。

通常は油圧装置と組み合わせて、コラム、アームのクランプ、及び主軸ヘッドの早送りが行われます。

主軸ヘッドには、主軸駆動装置があり、主軸の変速、正逆回転、自動送り・早送り・早戻し、手送りが簡単な操作で行えるようになっています。

ラジアルボール盤は、主軸がコラムに対して片持ちはりであるアームによって支えられています。加工精度を高めるためには、コラムやアーム、およびベースなどの剛性が重要です。

 

 

(3)多頭ボール盤( gang type drilling machine )

多軸ボール盤は、一つの主軸を持つ複数の主軸ヘッドを備えたボール盤です(図8.1.3)。複数の主軸ヘッドで共通のテーブルを使用し、一つの工作物を各主軸頭の直下に順次移動して加工していくことで、穴明けやタッピング、座ぐり加工など、複数種類の加工を順番に実行できるようにしています。

図8.1.3多頭ボール盤   出典:Fatema Trade HP ( Bangkadesh )

 

 

(4)多軸数値制御ボール盤( multi-axis computer numerical control turret drilling machine )

工作機械の進歩により、多頭ボール盤は数値制御タレットボール盤( 図8.1.4 )に代替されています。これは、タレットに複数の主軸スピンドルを取付けて、ワークは所定の位置に固定後、タレットを回転させて、複数種類の加工を順次実行できる機械です。

図8.1.4 多軸数値制御ボール盤  出典:Manufacturing, engineering and technology  6th edition

 

 

参考文献
新編 機械製作 下巻  機械製作法研究会  養賢堂  1968年
Manufacturing-Process-Selection-Handbook   Elsevier Ltd. 2013年
Manufacturing Engineering and Technology 6th ed. Serope Kalpakjian, Steven R. Schmid  Prentice Hall  2009年
Manufacturing Processes 2nd   h. N. Gupta et al.  New Age International (P) Limited, Publishers  2009年

 

引用図表
図8.1.1直立ボール盤  出典:Manufacturing Process Selection Handbook, Manufacturing Processes
図8.1.2ラジアルボール盤   出典:小川鉄工株式会社カタログ, Manufacturing Processes
図8.1.3多頭ボール盤   出典:Fatema Trade HP ( Bangkadesh )
図8.1.4 多軸数値制御ボール盤  出典:Manufacturing, engineering and technology  6th edition

 

ORG:2023/09/24