2.2 金属表面層の構造と特性

2.2 金属表面層の構造と特性(structure and properties of metal surface layer)

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機械加工され空気中に置かれた金属材料の表面層は、大きく分類して外部表面層と内部表面層とよりなっています(図2.2.1)。

図2.2.1 金属表面層の構成   トライボロジー入門改

 

1.外部表面層

外部表面層は、金属表面から汚れの層、吸着分子膜層、酸化膜層より成り立っています。いずれも界面の相手側物質(雰囲気ほか)からの影響を受けています。

もう少し詳しく示すと、空気中に置かれた金属表面は、空気中の酸素と化合して極めて薄い酸化皮膜を形成します。その上層に雰囲気中の気体(酸素や窒素、二酸化炭素、水蒸気など9が吸着された、吸着分子膜層が形成されます。さらにほとんどの場合に汚れの膜が認められます。

汚れの膜については、有機溶剤などで洗浄することにより除去可能ですし、吸着分子膜も一時的には除去できますが、酸化膜は除去できません。また、洗浄剤が除去されて乾燥すれば、気体の吸着膜の形成が起こります。

完全な清浄表面は、超高真空中で洗浄操作を行わない限り作成できません。

 

2.内部表面層

材料が単結晶の場合は、表面あるいは表面層の原子配列は母材と差異がありません。しかし、我々が通常、業者などから入手可能な工学的金属材料と呼ばれるものは、内部の基質は結晶粒の集合体で、マクロ的に見れば等方的ですが、表面は切削や研削、ポリッシングなどの機械加工を受けた結果として、塑性流動を生じています。

そのため加工表面層付近は表面に近づくにつれて結晶粒が微細化していきます。研削加工やポリシング加工では、表面層は微細化された結晶で構成される、厚みが1~10nm程度のベイルビー層(Bailby layer)とその直下に不均一な分布で形成されている塑性変形層が存在します。これらの表面層を、加工変質層といいます。加工変質層は表面に向かうにつれて硬さが増す傾向にあり、塑性変形層には残留応力が存在します。

内部表面層は、このようにして発生した加工変質層と金属基質より成り立っています。

 

こちらも参照してください。極力かぶらないようにとは思っていますが。

1.1 金属表面の構造  表面処理入門

1.5 金属表面の性質  エロージョン・コロージョン

 

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参考文献
トライボロジー入門   岡本順三他   幸書房

引用図表
図2.2.1 金属表面層の構成   トライボロジー入門改

ORG:2021/03/03