7.2 タワーの実験

7.2 タワーの実験(Tower experiment)

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滑り軸受では、軸受荷重は軸と軸受との間の隙間がくさび状になって、その中にある流体がくさびの幅の狭い方に向かって撃ち込まれる流体により発生する圧力により支えられます。ペトロフの式では、軸受の負荷能力を求めることは出来ません。

滑り軸受に発生するくさび効果による流体潤滑理論は、英国人のタワー(Beauchamp Tower)による実験に始まります。タワーは図7.2.1に示す、当時の鉄道車両用の部分円弧すべり軸受を模した実験装置を製作して、油潤滑の滑り軸受の摩擦係数の挙動を研究していました(英国機械学会の要請により)。

図7.2.1 (a) タワーの実験装置

図7.2.2(b) タワーが用いた鉄道車両用軸受を模した試験部

当時普通に使われていたサイフォン式給油の給油口に栓をすると、栓が徐々に抜け出すことに気づきました。その穴に圧力計を取付けると、軸受圧力(荷重/軸受投影面積)が100lb/in2にもかかわらず、圧力計は200lb/in2を示しました。この結果からタワー氏は荷重に対して油に圧力が発生して、軸受は油膜の上に浮いているとの結論を得ました(1983年)。さらに研究を進め、部分円弧すべり軸受の油膜圧力分布をブルドン管圧力計により測定して、1885年に図7.2.2に示す結果を発表しました。

図7.2.2 タワーが測定したすべり軸受の圧力分布

このことことから、滑り軸受では、軸が回転すると油膜に圧力が発生して、二つの滑り面は金属接触しなくなって、流体潤滑状態になることがわかりました。この実験結果に基づいてレイノルズ(Osborne Reynolds)が、1886年にすべり軸受けの油膜中に発生する圧力が満たす方程式を理論的に導出しました。これが、すべり軸受の流体潤滑機構の理論です。

 

 

 

 

参考文献
トライボロジー入門  岡本純三他  幸書房
講座 滑り軸受(1)  林洋次  ターボ機械Vol.10. No.6 1982年6月
気体潤滑技術の源流から現在まで  矢部寛  KOYO Engineering Journal No.157 (2000)

引用図表
図7.2.1 (a) タワーの実験装置  気体潤滑技術の源流から現在まで
図7.2.2(b) タワーが用いた鉄道車両用軸受を模した試験部  トライボロジー入門
図7.2.2 タワーが測定したすべり軸受の圧力分布  トライボロジー入門

 

 

ORG:2019/7/8