7.4 一般レイノルズ方程式

7.4 一般レイノルズ方程式(General Reynolds equation)

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実際の軸受は、xy 面に垂直なz方向にも有限ですので、z方向にも圧力変化があります。それを考慮した三次元基礎方程式は一般レイノルズ方程式といいます。
7.3項で示した6個の仮定に加えて、3つの仮定を追加します。

 

1.仮定

図7.4.1に、三次元系での座標と運動状態とを示します。7.3の1.に示した仮定に加えて以下の仮定を追加します。

(7)隙間は二次元的な形状を有する。

(8)相対する両面とも速度を持っている。

(9)二面は常に相対的に固定した位置関係を保持せず、接近速度を有する。

図7.4.1潤滑膜内の圧力とせん断力との釣合い(三次元)

 

 

2.レイノルズの一般基礎方程式

図7.4.1で、運動面と固定面との間にある潤滑剤の微小要素(横dxdz ,縦dy ,単位長さ)を考えます。この微小要素が潤滑剤内で釣合い状態にあるとします。任意の位置での隙間(油膜厚さ)をhとするとhxz との関数となります。
力の釣合いはx 方向、z 方向それぞれに対して微小要素の釣合いとニュートンの粘性の法則とから次式が成り立ちます。

    (式7.4.1)

    (式7.4.2)

 

境界条件((式7.4.3),(式7.4.4))の条件で、(式7.4.1)、(式7.4.2)を積分して、更に(式7.4.5)の境界条件の下、流量保存則(式7.4.6)に代入して、整理すると(式7.4.7)が得られます。

   (式7.4.3)

   (式7.4.4)

   (式7.4.5)

 

質量保存則

    (式7.4.6)

従って、

   (式7.4.7)

(式7.4.7)が、一般レイノルズ方程式(レイノルズの一般基礎方程式)になります。

ここで、
p :圧力
η :粘度
h :潤滑剤の膜厚さ

u :各位置におけるx軸方向への流速
v :各位置におけるy軸方向への流速
w :各位置におけるz軸方向への流速

U1 :下側の面のx軸方向の速度
U2 :上側の面のx軸方向の速度
V :上側の面のy軸方向の速度
W1 :下側の面のz軸方向の速度(=0)
W2 :上側の面のz軸方向の速度(=0)

 

3.一般レイノルズ式の物理的な意味

(式7.4.7)の物理的意味を考えましょう。これは滑り軸受が圧力の発生の要因を表します。

 

(1)左辺
左辺は、第1項がx 方向、第2項がz 方向に生じる圧力の発生状態を表します。

 

(2)右辺
右辺の3つの項は圧力発生の原因となる作用を示しています。圧力が発生するためには、右辺の項は負の値をとる必要があります。

第1項は、「くさび膜作用項」と呼ばれるもので、隙間の傾斜により圧力が発生する機構を表します。
今、U1 =U (一定)、U2 =0V =0  として、潤滑剤膜が図7.4.2(a)に示すように先に行くほど狭くなると、潤滑剤は上面の速度Uにより常に押し込まれているので圧力が発生します。この発生した圧力により図7.4.2(b)に示す圧力の基づく流れが生じて、その結果、図7.4.2(c)に示す流れになり圧力発生が継続します。

図7.4.2 くさび膜作用項

 

第2項は、「伸縮膜作用項」と呼ばれるもので、壁面内における移動速度の変化によって圧力が発生する機構を表します。
例えば、U2 =0 とすると図7.4.3に示すように、二面が平行でU1x 方向に減少していくものとすると、図7.4.3(a)に示すように、後から来る潤滑剤の粒子の速度が速いため、隙間に押し込まれて圧力を発生します。その結果、図7.4.3(b)に示すようなポテンシャル流れが生じ、その結果、図7.4.3(c)のような流れと圧力になります。

図7.4.3 伸縮膜作用項

 

第3項は、「絞り膜作用項」と呼ばれるもので、壁面が接近運動することにより圧力が発生する機構を表します。
図7.4.4のように、二面が速度 -V0 で接近すると、両面から潤滑剤が絞り出されて、その時の流出抵抗により圧力が発生します。

図7.4.4 絞り膜作用項

 

 

 

 

参考文献
トライボロジー入門  岡本純三他  幸書房
滑り軸受(1)  林洋次  ターボ機械 Vol10 No6 1982年6月
固液界面とトライボロジー  平山朋子  日本流体力学会 2016年

 

引用図表
図7.4.1潤滑膜内の圧力とせん断力との釣合い(三次元)  トライボロジー入門
図7.4.2 くさび膜作用項  トライボロジー入門
図7.4.3 伸縮膜作用項  トライボロジー入門
図7.4.4 絞り膜作用項  トライボロジー入門

 

ORG:2019/7/16