6.2.1 被覆アーク溶接の原理

6.2.1 被覆アーク溶接の原理(principle of shielded arc welding)

 

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被覆アーク溶接は、被覆金属アーク溶接ともいいます。アーク溶接法の中で最も一般的に行われている方法です。

心線と呼ばれる金属線に被覆剤(フラックス)を塗布した被覆アーク溶接棒(coated electrode)と溶接対象の母材との間に交流または直流(日本では交流が多いです)の電圧をかけて、アークを発生させます(図6.2.1.1)。溶接棒はアークによる発生する高熱(約5000~6000℃)により、溶融して液滴状になって、溶融プールに移行します。

同時に、母材の一部もアーク熱によって溶融し、溶接棒と母材の一部からなる溶融金属は、接合すべき母材の隙間(開先、グルーブといいます)に入り込み、アークが移動するにつれて、冷却が起こり溶接金属として充填されます。

図6.2.1.1被覆アーク溶接

 

雰囲気中の酸素や窒素は、溶接金属のじん性を低下させたり、ブローホール(気孔)の発生など、溶接部に悪影響を及ぼします。被覆剤は、アーク熱により分解して、アークを安定化させると同時に、ガスやスラグを生成して溶融・凝固中の溶接金属を大気から遮断して、大気からの酸素や窒素の侵入を防ぐ役割を果たしています。

別項で既述するように、被覆剤の組成を変えることにより、様々な特性を持たすことができます。最適な溶接棒を選択することにより、いろいろな姿勢で溶接が可能となります(図6.2.1.2)。

図6.2.1.2 主な溶接姿勢

 

また溶接機などの関連設備も、他の溶接法と比較して安価で、継手としても十分な強度が得られるので、作業能率向上や省力化のために溶接の自働化が進展している現在でも、もっとも一般的に使用されています。

 

被覆アーク溶接は、作業者が溶接棒を手で運棒することにより溶接を行いますが、長尺の溶接棒と簡易治具とを組み合わせて、より能率的に溶接を行う方法も用いられています。図6.2.1.3に、昔造船所で用いられたグラビティ溶接の例を示します。

図6.2.1.3グラビティ溶接

 

 

 

 

参考文献
溶接技術の基礎   溶接学会  産報出版株式会社 1986年
図でわかる溶接作業に実技(第2版)   小林一清  オーム社 平成28年
アーク溶接技術発展の系統化調査   三田常夫  国立技術博物館産業技術史資料情報センター

 

引用図表
図6.2.1.1被覆アーク溶接   溶接技術の基礎+図でわかる溶接作業に実技(第2版)
図6.2.1.2 主な溶接姿勢   溶接技術の基礎
図6.2.1.3グラビティ溶接   国立技術博物館産業技術史資料情報センター

 

ORG:2023/01/28