コストダウンのためのIE手法

コストダウンのためのIE手法(IE method for cost reduction)

 

 

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インダストリアルエンジニアリングの目的として重要な分野は、コストダウンです。本稿では、コストダウンのためにどのようなIE手法が適用されるかを記述します。

1. 標準時間の設定

製品原価は、製品を製造するために必要な費用を合計したものです。製品原価を構成する要素は、大きく分けて材料費、人件費、製造経費の3つがあげられます。
これらの3要素のうち、特に人件費、製造経費に影響を与える重要な要素として「標準時間」があげられます。標準時間は、製品原価を計算するために重要な要素の一つであり、製品原価に以下のような影響を与えます。

1.1 人件費

人件費は、製品を製造するために必要な労働時間に、時間当たり賃率を乗じて計算されます。標準時間が短ければ短いほど、人件費は低くなります。
(1)作業時間の短縮
  ・ 作業手順の改善、作業者の熟練度向上、自動化・ロボット化などの取組みによって、作業時間を短縮することができます。
  ・作業時間の短縮は、人件費の削減につながります。
(2)時間当たり賃率
  ・ 時間当たり賃率は、地域、業種、職種によって異なります。
  ・ 人材育成や能力開発によって、作業者のスキルアップを図り、時間当たり賃率の向上を目指すことができます。

1.2 製造経費

製造経費には、設備費、工具費、エネルギー費、消耗品費など、人件費と材料費以外の製造に必要な費用が含まれます。これらの費用は、製造時間と関連しているものが多いため、標準時間が短ければ短いほど、製造経費も低くなります。
(1)設備稼働率の向上
  ・ 設備の稼働率を高めることで、設備費を効率的に活用することができます。
  ・ 設備のメンテナンスや修理を適切に行い、稼働率を維持することが重要です。
(2)エネルギー使用量の削減
  ・ 省エネルギー設備の導入や作業効率の改善によって、エネルギー使用量を削減することができます。
  ・ エネルギー使用量の削減は、エネルギー費の削減につながります。

 

2. 標準時間の設定方法

標準時間は、製品の作業方法・手順に基づいて設定するとともに、実際の測定や過去データに基づいて得た作業時間に、稼働分析などにより余裕率を決定して算出されます。

作業時間の設定方法には、以下の3つが考えられます。
(1)タイムスタディ
  ・ 作業者を実際に観察し、作業時間を計測する方法です。
  ・ 最も精度の高い作業時間を設定することができますが、時間と労力がかかります。
(2)過去の実績に基づく方法
  ・ 過去の作業実績に基づいて、作業時間を設定する方法です。
  ・ 比較的簡単に設定することができますが、精度はタイムスタディに比べて低くなります。
(3)標準データに基づく方法
  ・ 業界標準や専門機関が提供する標準データに基づいて、作業時間を設定する方法です。
  ・ 比較的簡単に設定することができますが、製品や企業の特性に合っていない場合があります。

標準時間は作業時間と余裕時間の和で得られ、以下のような算出式で示されます。

標準時間 = 主体作業時間 + 作業余裕時間 + 職場余裕時間 + 用途余裕時間 + 疲労余裕時間

余裕時間については、以下のようなものがあります。
 ・作業余裕:設備調整、注油、図面解読などの作業を行うことにより、時々発生する時間
 ・職場余裕:帳票記入のような管理のための時間や、手待ちなどの管理が悪いと発生する時間
 ・用途余裕:トイレ、喫煙、飲料などに要する時間
 ・疲労余裕:疲労回復のための時間

 

3. コストダウンは実際のものづくりを基本に

標準時間が設定されたら、賃率や設備のチャージ(円/時間)を乗じて直接原価を算出します。さらに、原価管理、購買管理、工程管理、在庫管理、外注管理、設備管理、設計管理、生産技術管理、品質管理、販売管理、人事管理などの管理に要する間接原価と、材料費および外注費を加えて個別原価を算出します。
以上のようにわかるように、管理コストは比較的大きな割合を占めており、管理の巧拙によりコストは上下しますが、作業現場で製作したものに管理費用などの間接原価が上乗せされることにより、売上になります。基本は、ものづくりのレベルでの原価を低減することが基本です。

作業方法・手順、設備、およびレイアウトのどれか一つが欠けても原価が高くなります。また、必要以上の余裕時間は作業効率を下げて、原価に影響します。
さらに、作業速度が速くても段取り回数が多かったり、一回当たりの段取り時間が長くなるとやはり全体効率が低下します。
これらの何れについても、効率の良い作業方法・手順を追究して、標準時間を設定する必要があります。

これらの観点に、IE(インダストリアルエンジニアリング)はコストダウンに必要な手法です。

 

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4. 標準時間の設定による影響

標準時間を設定することにより、以下の点に影響を与えることができます。
(1)労働コストの計算:
標準時間に基づいて、製品1ユニットあたりに要する労働時間を見積もり、その結果をもとに労働コストを計算します。標準時間が短縮されると、それに伴い労働コストも低下して、製品原価を削減することが可能になります。
(2)生産性の向上:
標準時間を設定することで、作業の効率化や改善の余地が明確になります。生産性が向上すると、同じ時間内により多くの製品を生産できるようになり、結果として製品原価を低下させることが可能になります。
(3)品質管理:
標準時間内に製品を生産することは、品質の一貫性を保つ上で重要です。作業時間が標準時間よりもかかる場合、品質に問題がある可能性がある可能性もあります。品質が安定すると、不良品コストや手直し作業の必要性が減少し、製品原価の削減につながります。
(4)生産計画とスケジューリング:
標準時間を適用することで、生産計画やスケジューリングが容易になります。これにより、無駄な時間やリソースの浪費を避け、全体的なコスト効率を向上させることができます。

 

5. 標準時間の活用

標準時間は、製品原価の計算以外にも、以下のような用途に活用することができます。
 ・ 生産計画の策定
 ・ 作業効率の改善
 ・ コスト削減
 ・ スケジュール管理
 ・ 人材育成

標準時間を有効活用することで、企業は生産性を向上させ、競争力を強化することができます。

 

6. 標準時間に関する注意点

標準時間は、あくまでも目安であり、実際の作業時間は標準時間と異なる場合があります。標準時間を設定する際には、以下の点に注意する必要があります。
 ・ 標準時間は、作業者の作業速度や作業効率、設備の稼働率、作業環境などの影響を受けます。
 ・ 標準時間は、定期的に見直しを行い、必要に応じて修正する必要があります。

標準時間を適切に設定し、活用することで、企業は製品原価を削減し、収益性を向上させることができます。

 

 

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参考文献
コストダウンのためのIE入門   岩坪友義  日経文庫720 日本経済新聞社 1995年

ORG:2024/02/06